第25話 終わりと始まり。
2年になっても港さくらとの関係は続いていた。言い換えれば終わる理由がない。あの彼女と俺は終わっている。そもそも始まっていないと思っているが、なぜか今も続いているらしい。
春はお花見に、少し遠出をして有名な公園に行ったし、ゴールデンウィークも会った。
2人でベンチに腰掛けて、飲み物を飲んで桜を見ただけなのにとても満たされた。
キスから先は無いが、キスの時に背中に手を回しても怒られなかったので、抱き寄せながらキスをしたりするようになった。
俺は理系を選択して、クラス替えで彼女とは見事にわかれた。
担任の所には、彼女の親から頭のおかしいクレームも入ったらしいが、担任は俺を守ってくれて、「こんな言い方は良く無いが、守ったんだから頑張ってくれよ」と言った。
驚いたのは豊島一樹が理系を選んでいて、教師陣は同じクラスにしてくれた。
だが豊島一樹の動機は「文系苦手だから理系」だったので、理系ではややお荷物で面倒を見ている。
彼女とオカンは危険視されて分けられてしまう。
コレもあって学校にクレームが入った。
ゴールデンウィーク明け、話は盛大に動いた。
年明けから平穏だった港さくらは、5月中頃にあった修学旅行中に、彼氏から突然別れを告げられた。相手は突然「俺たち終わりにしよう。さくらも別れたがっていたよな」と電話してきたらしい。
流石に別れたくても、こんな終わり方はない。
慌てる港さくらに「もう俺は話を聞けないが、修学旅行中だから周りは友達だろ?そいつらと話して、後は受け入れろよ」と言って、一方的に電話を切った後は着信拒否までしたらしい。
まあ港さくらには俺がいるので俺に電話をかけてきて話をしてくれた。
「何があったんだろうな?」
「合コンで彼女が出来たのかも」
「成程な」
「普通なら落ち込むけど、智也君が居てくれるから平気。ありがとう」
「当たり前の事だよ」
俺はこのタイミングで、キチンとした1番目同士になりたかった。
だが彼女はいまだに彼女だと言い張るし、その話を聞いていた港さくらは、「大丈夫だよ。智也君の想いは貰っているから大丈夫」と言ってくれた。
ここで終わればよかったのに。
俺と港さくらは文字通りだった。
修学旅行から帰った港さくらのバイト先に、港さくらの居場所は無かった。
港さくらの元カレに出来た新彼女は、この春からフリーターになった女で、「門限なし」、「飲み会の同伴OK」、「性的接触お待ちしております」という女だった。
そして周りからの情報を統合すると、年末から彼氏が大人しかったのは、全部このフリーター女と浮気をしていたからで、最終的に彼氏を略奪したくなったフリーター女は、「私が嫌われ者でいいから。港さんとキチンと話すから乗り換えて」と迫って、彼氏の奴はノーダメージで港さくらからその女に乗り換えられるならとなったらしい。
バイト上がりに、フリーター女から「ちょっといい?」と声をかけられた港さくらは、「気にしない」、「わかった」と言っても、決まった原稿でもあったのか、フリーター女から彼氏を寂しがらせ不安にさせていた約一年に関して、一通り説教をされていた。
俺は夜でも関係なく港さくらに会って話を聞いた。
「智也君が居てくれたから、泣かずに頑張れたよ」と言う港さくらを抱き寄せて話を聞き、俺は彼女との関係を終わらせなければと強く意識した。
港さくらはすぐにバイトを辞めた。
事情を知りながらも、人員確保の面で引き留める店長は悪魔だと思った。
そして港さくらがバイトを辞めたタイミングで、俺は彼女に別れを告げた。
彼女は慌てたが、「そもそも始まってないだろ?手も繋げない。メッセージに返信もない。誕生日もない。おかしいよ」と言って一方的に終わらせて、港さくらに「別れを告げたよ」と送ると、「大丈夫?無理してない?」と心配してくれた後で、「嬉しいよ。堂々とデートできるね」とメッセージが来て嬉しかった。
実際に水族館に行ってデートした時は、今までの反動もあったが幸せしかなかった。
だが上手くいったのは1ヶ月だけだった。
七月になり、夏休み前に豊島一樹から「なあ、向原の奴、七月になってから学校来てないってよ」と話しかけられて、「はぁ?」と聞き返してしまった。
「智也に振られて、オカンに捨てられて、学校に居場所がなかったみたいだぜ」
俺はまさかの事に言葉を失ったが、横にいた女友達が「豊島、その言い方間違ってるって。目黒君が悪いなんて誰も思ってないよ。東の方は東が悪いけど、目黒君は間違ってないよ」と言ってくれた。
話を統合するとなんとも言えない話だった。
俺に振られた事はなんとなく空気感でわかるだろう。体育の時とかフラフラと横に来て、彼女面して横に座ったりしていたのが無くなった。
だがハッキリと振られたとバレたのは、向原小巻を捨てて新しい友達を作ったオカンが、友達相手にベラベラと話をしてしまったからだ。
クラス分けで孤立した向原小巻は、遠いクラスの俺とオカンを心の支えにしたが、俺からは振られて、オカンは孤立した状況を覆す為に、新たな友達を作って居場所を作る事に成功していた。
オカンはあだ名の通り面倒見がいいので、友達もできるだろう。
だが向原小巻は、急にオカンに捨てられて迷子の子供みたいになった。
そしてオカンはそれでも面倒見がいい。
俺の事を向原小巻から聞いて、自分の属するコミュニティの中に向原小巻を迎え入れようとした。
ただ漠然と迎え入れればいいのに、「小巻、彼氏に振られて可哀想だから」と余計な前置きをしてから話してしまい、あの気位の高い向原小巻が受け入れられるわけもなく拒絶をした。
彼氏に振られた噂だけがばら撒かれる形で孤立した向原小巻に居場所はなかった。
オカンは、「私は手を尽くした」、「でも小巻が選ばなかった」、「私は悪くない」らしく、ヘイトはオカンに向かったが、本人は変な所で鈍感なのかノーダメージだった。
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