第22話 彼女の心の友。
前以上に彼女のことは気にならなくなった。
彼氏の肩書きに甘んじて、クラス移動の時だけ横にいる。
それだけで彼女は満足そうで、心の友女は勝ち誇った顔で俺を見ていた。
だが通学だけはもうしていない。
わざわざ30分も早く家を出る必要はない。
それでも言われるがまま、よってこられた時だけ彼氏の役割を果たせば、彼女と心の友女はご満悦だった。だがそれは甘んじている訳ではなく、俺には港さくらが居てくれるからできる事だった。
休日にこっそりと港さくらの為にプレゼントを買う時は心躍った。
クリスマスシーズンだったので、クリスマスプレゼントと併せて何かを買おうかと思ったが、万一港さくらがクリスマスのプレゼントも用意してくれていたら申し訳ないので二つ用意した。
一応こうなると心苦しい部分もあって、彼女にも使えそうな手袋を用意しておいた。どうせこの冬も休みになれば会うことはないだろうという気持ちで、前もって渡すと不服そうに「貰ってくれた」と言う言葉が似合う態度で受け取っていた。
それとは裏腹に、港さくらは彼氏とは24日に会い、彼氏に会わない25日に俺と会ってくれて、プレゼントを受け取って喜んでくれた。
意趣返しではないものの、やはり自分の送ったアクセサリーを身につけて貰えたらと思い、ブレスレットを渡すと顔を真っ赤にして喜んでくれて、その場で身につけてくれて俺は嬉しかった。
そして誕生日ということで、流行りの本を渡すとこれもまた喜んでくれた。
港さくらからのプレゼントも忘れられないものだった。
ボロボロの財布を見ていたので財布をプレゼントしてくれた後で、「…こんな言い方は良くないけど」と言ってから俺にキスをしてきた。
驚く俺に「初めてのキスは、あの家に呼び出された日に取られちゃったからごめんね。でも2回目を目黒君に貰ってもらいたかったの」と言われて、俺は感謝と共にもう一度、今度は俺からしたいと言ってキスをした。
港さくらも俺も、合わない相手との恋愛を補っていたと思う。
港さくらは俺とするようなデートで満足だし、俺も彼女とは味わえないデートに満足をしていた。
俺達は冬休み中も会った。
彼女からは連絡がないし、港さくらの方も彼氏は忘年会や飲み会に偽装した合コンに忙しくて放置されている。
俺の方はそれが良くなかった。
連絡がないからと完全に放置をしたら、彼女が癇癪を起こし、あの心の友女が俺のことを調べ始めていた。
そんな事をつゆも知らない俺は、迂闊にも人の多いショッピングセンターで堂々と港さくらといる所を見られていた。
相手もタチが悪いのは、見かけても言わずに黙っている事だ。
密かに噂になってしまっていた。
だがそれは俺も港さくらも知らない事だった。
新学期、男友達は冗談混じりに、「彼女とクリスマス?」、「彼女と初詣?」、「もしかして姫始め?」なんて話題を振ってきて、「今回も既読無視。年内に一度送って既読無視で懲りた」「新年は送ったけど今日まで既読無視」、「1日も会ってない」と返すと憐れまれたが、俺には港さくらと数日過ごした経験があるから痛くも痒くもない。
周りが「マジで!?」と盛り上がる中、お節介な心の友女が俺の前まで来ると仁王立ちで「ちょっと?」と声をかけてきた。
横で「おお!?修羅場か!?」、「新年早々かよ!」、「目黒ファイッ!」と冷やかしの声が飛んできて心の友女に睨まれていた。
「なに?」
「こっち来なさいよ!」
「やだよ」
これだけで顔を真っ赤にした心の友女は、ギャォォォンと聞こえてきそうな怒り顔で、「ここで話す気?アンタが不利になるのよ!」と怒鳴りつけてくる。
知らんがな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます