第14話 著しく上がっていた好感度

(前書き)※絶対に読んでください


すまんどうしても書きたい内容が中途半端すぎたので一個前の話の最後に付け足し修正入れます。

見てない人はそこを確認してからこの話を読んでくださいお願いします。


画面の向こうの書いてる人が土下寝してる想像をしてもろうて。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


雲陰るこの梅雨の時期。

雨は今は降りそうにないが、一歩間違えればポツリポツリと雨粒が落ちてきそうなこの曇天の空の元、俺は一人単身で道路の上を歩いていた。


ザッザッ、と使い慣れた靴を引きずるようにして歩いてわざと自分の存在を辺りに示す。


「(……来たな)」


前回からレベルも上がらず、何度か魔物を倒してはいるが、現状三十パーセント近くで停滞している俺だが、この世界で生きてきて気配を読むことが中々にうまくなってきた。レベルが上がってようやく俺の身体がこの世界に馴染んできたからか、こういった人並み外れたことが容易にできるようになってはきたが…………


「流石にアレを倒すのはまだ無理だな」


そう呟きながら、苦笑いを浮かべてソイツを視界に捉える。

森の中でヒットアンドアウェイのゲリラ戦法を続けまくったら倒せるだろうが、俺にはを短時間で倒すなんてのはまだ出来ない。


グオオオォォォオッ!!!


と、低く無差別に撒き散らすように叫び声を高らかに鳴らす。


こんな鳴き声が聞こえるもんだから、一見この前みたいな熊モドキくらいの魔物なんじゃないかと想像するが、実際には全くの別物だ。

バカみたいにデカいトカゲである。

いや、あのサイズ感だったら「デカいコモドドラゴン」という表現のほうが正しいか?まぁ今はそんなのどうでもいいか。


「ただ一つ言わせてもらうと……爬虫類はこの季節外に出ないんじゃなかったっけ?」


まぁ異形の魔物にそんな常識説いても無駄か。

俺のつぶやきを皮切りに、トカゲとは思えないほどの鈍重な動きでこちらに迫ってくる。


「やっぱコモドドラゴンだな」


距離が段々と縮まっていく。

近づいてくるとそのフォルムがよく分かるが、身体には皮だけでなく魚の鱗のようなものが全身にびっしりと埋め尽くしていた。

正直言って鱗一個一個がちっちゃいからまじまじと見ると結構気持ち悪い。


なんて思っていると、俺とそのコモドドラゴン(?)との距離は手を伸ばせば触れられるほどまでに肉薄していき―――


「ま、ヘイトは十分こっちに向いたぞ。さっさとやってくれ」

「分かってる」


そして、コモドドラゴンの身体から力が抜ける。

そしてその一瞬の間に《予測補助》を起動させて…………俺はそのまま慣性に従って突っ込んできたコモドドラゴンの頭を片手で抑えて、こちらに突撃するのを防ぐ。

そして……


いつの間にか上から落ちてきた彼女が着地した瞬間、コモドドラゴンの首が音もなく地面に落下した。


まるで最初から胴と頭が繋がっていなかったのではと思えるほどのその切断面は綺麗で、恐らく痛みを感じるほどの時間も与えられなかったコモドドラゴンの顔は、格下を当たり前のように食らう捕食者の表情で止まっていた。


それを見て、俺は一言。


「なぁ、もうちょっと早めに倒してくれないかな……みお。俺もうちょいで食われるとこだったんだけど」

「フン、守ってもらう存在の異議は認めない」

「世知辛れぇ世の中になっちまったもんだ」


扱いに関しては酷いものだが、ただ、こうやって軽口に応じてもらえるほどには好感度は上がっているのだから、やっぱり彼女は冷たいだけじゃないようだ。


あの日、俺らが出会った時から一ヶ月ほどが経過した。

最初の数日は俺のことを突き放すような言動を続けていたものの、幾度とないアプローチを続けているうちに諸々を教えてもらった。


彼女の名前は『小暮こぐれ みお』というらしく、なんと年は俺と同じの18歳。絶讃受験期中の女子高校生をしていたらしい。

彼女は俺に復讐のために強くなっているのだと言った。

正直聞く必要のないものまで聞いてしまった感は否めないが、それでも俺を信用してくれての告白というのならそれはきっと喜ぶべきことだろう。

やっぱり雑用の力は偉大だ。


「それじゃあ、俺はさっさとコイツを解体するからどっかで暇でも潰しといてくれ」

「いや、いい。ここで見てる」

「……そっか」


ただ微妙に口数が少ないのと、仏頂面が相まってどんなこと考えてるのかがたまによく分からなくなる。

彼女は復讐のために力を付けているのだと言った。だとしたらその力は復讐以外に一体なんのためにある?

果たしてその復讐が終わったら、彼女の本来の表情は戻るのだろうか?


「(っと、俺が気にすることじゃないな。今はコイツの解体に注視しよう)」


あまり赤の他人が首突っ込んで良い話題でもないしな。


……さて、閑話休題それはそれとして。コイツの解体についてだ。

まずこの全長5メートルはあるであろう巨体からして、血抜きはまず無理。ささっと解体するぞ。


そうして俺は腰にあったホルダーからサバイバルナイフを抜き取り、まるでかのような迷いのない動作で部分部分で切り分けていく。


「……ねぇ」

「お?どうした」


背中から声が聞こえてきたが、俺は手を止めること無く返事だけをする。


「どうしてそんなに早いの?」

「と言いますと?」

「……その解体。あなた、初めてその生き物を見たはずでしょ?でもあなたの動きには一切の迷いもない」


自分の中にある疑問を、包み隠すことなくぶつけてくる。

う〜ん。流石にこう何度も目の前でこんな神業見せたら違和感くらいは持つよな。

そこで俺は少し頭を悩ませたのち、ある一つの条件をつけて、嘘偽り無く正直に話すことにした。

一度解体の手を止め、澪のいる方向へと振り向く。


「誰にもバラさないってんならこの仕組みを全部、正直に話してもいいぞ」

「大丈夫、話すような友達もいないから」

「それを聞いて安心と心配の両方の感情を俺は抱いたよ」


仮にも花の女子高生が友達がいないて。

なんとも言えない気持ちになるが、これ以上この話題を続けないよう小さく咳払いをして話を戻す。


「ま、簡単に言えば職業の固有の力だな。観測者オブザーバー……説明欄見る?」


聞いたこともない職名に、神妙な面持ちで俺の提案に頷く。

そこで俺は自分のステータスのウィンドウを開き、何度か画面をポチポチしてから自分の視界に観測者の説明欄を映し出す。

そしてそれを他の人にも見ることのできるように念じると……あら不思議、


「これ見えるか?」

「ん」


なんと普段は見えない己のステータス画面を他の人に見せることができるのだ。

実はこれは櫂含めた最前線を行っている人たちも最近知った仕組みらしく、見せようと思えば能力値が書かれているウィンドウまでもが見せられるのだそう。


書かれている方のウィンドウを澪に見せようと、反対方向に向くように念じようとしたところで……澪が横から身体を寄せてくる。


「…………」

「…………」


どうもおそらく俺の見えている観測者の説明欄を見るためなのだろうが……流石にピッタリと身体をくっつける意味はないと思うな。


「……うわ」

「いやうわって言うなよ」


ただ澪の方は全くもってそんなことを気にしている様子はない。

だから俺も気にしてないフリをしなきゃいけない。

あーでも一年近く女子との接点のない生活してたから嫌でも気にしちゃうのがこの年齢なんだよな。


「……どうしたの?」


そしてそんな動揺が伝わったのか、上目遣いで俺の目と合わせてくる。特段心配している様子ではなさそうだけど、こんな至近距離でその上目遣いは……っ!!


ヤバっ、秘めたるナニカが理性の蓋をこじ開けそう。

こ、こういう時こその《予測補助》っ!!


「…………いやなんでも?」

「そう?」


一気に膨大な情報が脳の中に飛び込んできて目の前の事象の対応を困難にする。本来の使い方と真逆の方法だが、自分を取り戻すためのこのスキルは案外悪くない。


そうして読み終えた澪は俺から離れる。表情は、俺の職業について考えているからか、いつもの仏頂面に、機嫌悪そうな感じが追加されたが、今の俺はそれどころじゃない。

頭痛を感じる前にさっさと《予測補助》を解除する。


「……好感度上げすぎたかな」


俺は曇天の空の元、どデカい肉の塊を背に決して澪には聞こえないほどの声量で、そう小さく息を吐くようにして言った。





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