第10話 旅の始まり
前書き。
文章量くっそ短いのは書こうと思ってる内容をそのまま書こうとしたら6000文字いっちゃうんじゃないかと思ったので思案の末分割。
ただし連日で投稿するとは限らない。ただ間隔が空くとも限らない。全ては明日の俺の頭の冴えようと気持ち次第。
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「……ん?」
遠くで、セミの声が聞こえたような気がする。
……そうか、もう7月か。はえーなー。
そんなことを考えながら、軽快に進ませていたマウンテンバイクを一旦道路の脇に止め、スマホの地図アプリで今の自分の位置を確認する。
「半分……はまだか」
顔を顰めながら小さく呟く。
その間にも、7月の容赦のない太陽の光はコンクリートを反射して、俺の身体を熱で蝕む。ただ、それ以上に半袖の俺の腕を直接照らす方が遥かに熱く、俺は止まっている状態での日向の元での停止は危険と判断し、道路から一度ズレて、脇に植えられている大きな木の元に休憩がてら腰を下ろした。
「はぁ……、奏音ちゃんが新しく手に入れた氷系統のスキルが心底羨ましく感じる」
櫂の彼女自慢は今に始まった話じゃないが、色々な意味でその自慢が今の俺には一番効いた。
櫂の境遇に大きくため息をつき、身体の中の熱い空気を吐き出したのち、代わりにペットボトルに入った水を身体に取り込み火照った胴体を少しでも冷やそうとする。
「……ふぅ。……出発してもう一ヶ月か。やっぱり出発した季節間違えたよなぁ。この夏の暑さ然り、少し前は梅雨でひでぇ目に遭ったし。何やってんだか」
一ヶ月前、俺はあの日得た称号やら何かと変動していたステータスを家で確認したのち、実験や考察は一旦置いといて取り敢えず出発した。
それを始めてしまうとまだ長くなってしまい、出発が遅れるのではと思ったのが一番の要因だが、今となってはその考察はしておいたほうが良かったんじゃないかと思い始めている。
いやだって―――
「明らかにこのステータス反映されてないだろうしなぁ」
俺のこの中でも最も突出したものとなった、この
ただここで疑問なのが、この指輪を付けた状態でも以前と同じように普通に怪我するということだ。
そのことに疑問に思い、多分ダンジョン攻略報酬とかで折角手に入れたまだステータスポイントはまだアジリティーに割り振っていない。さっさと解決してほしいものである。
「(果たしてこの謎もレベルアップしたか解消されるものなのだろうか)」
……そう、まだなのだ。
まだ俺はレベル1なのだ。最早作為的なまでに経験値が溜まりづらいこの現状。と言ってもモンスター自体に出会わないわけではない。寧ろ、普通に出会う頻度も多いしその度に自前のサバイバルナイフで経験値と変化させてきた。出会った数に関しては三桁に届くと思う。
パッと、『ステータス』と念じて現れたいつものウィンドウに浮かんでいる、俺の名前の横の横にあった《99.903%》の小数第三位の新天地は、櫂の長年の恋が実った時くらいの衝撃を俺にもたらした。
「(なんかもう……ここまで来たら怒るとかの感情も湧いてこないわな)」
誰に向けて、という訳でもないが俺は嘲笑の表情を浮かべる。
強いて言うなら、俺のこの《
職業欄を覗いてみたところ、外そうと思えばこの職は簡単に外せる。だからもっと適当な職に変えてさっさとレベルを上げるのが人生の選択肢としては吉なのだろうが……やっぱさっきの意地の言葉は訂正。
これは浪漫だ。意地三割浪漫七割の選択。
だって見てみたくない?この職の初回レベルアップ時のスキル特典。
もう男の浪漫よ。こんな強力かつレベルアップを妨げるようなデメリットの獲得したスキルなんてさぞ強かろう。
ただ、そんな浪漫の代償は時間。普通のゲームならこんなものはスタートダッシュが遅れてしまうだけの致命的な行為でしかないのだろうが、ここはゲームじゃなくただの現実だ。
後々……段々と強くなっていくよりも、レベルが幼いうちに強いスキルを持っていたほうが選択肢としては強いのではないのかと思っている。
燦々と照りつける忌まわしいほどに輝いた太陽を木の葉ごしに見つめながら、未来の自分を思い浮かべる。
果たして、俺のこのレベルが上がるのは一体いつになることやら……。
とか思っていたら。
「よっしゃ!レベル上がった!!」
あんなこと思ってた翌日にレベル上がったわ。やったぜ!
丁度目の前にレアっぽいモンスター現れたからサクッとやっただけだけど。
ただそれ以上の大問題があるとするなら―――
「なんだこの強烈な眠気は……!」
超眠い。
こうやって思考が安直になるくらいにはめちゃめちゃに眠い。
ここで眠るわけには……!なんて思っていると、
【警告:ステータスと身体との齟齬が確認されました。ただいまより肉体の改竄を行います。ただちに安全な場所まで移動してください】
という声とも音ともなんとも言えない感覚が脳の中に響いた。
これが例のアナウンスというやつなのだろう。あの時寝ていた俺からしたら、今この瞬間が初めましてなのだが……
「無理っだろっ……!そんな唐突に言われても。あ、やば―――」
とうとう迫りくる睡魔に耐えられず、脳が強制ブラックアウトを起こす。
その刹那に思い浮かんだのは、眠りこけた俺がどこからか現れた数匹のゴブリンに木の棒に手足を縛り付けられ、ゴブリンの村までヨイショヨイショされていき、キャンプファイヤーみたいに火を囲んだゴブリン達によって火炙りにされて―――
そこで俺の意識は完全に落ちた。
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