第3話 ファーストエンカウントはスライムでした……が?

初見さん、これが俺の投稿頻度です。

人気によってこの間隔が短縮されるということよ。


―――――――――――――――――――――――――


あぁ、クソッ!やっぱりだ。悪い予想がものの見事に的中した。


「ぜんっぜんレベルが上がらん!!流石にスライム殺すの飽きてきたぞ!てか多すぎだろなんだよこれはァッ!!」


渾身の叫びがどれにも吸収されることなく遠くへと通り過ぎてゆく。

そしてそんな怒りを八つ当たりするかのように、目の前の非現実的極まりない生物へと鉈という武器を用いてベッチョベッチョと叩き切る。


家の蔵に適当な武器を探しに行った時に見つけたこの鉈だが、まさかコイツもスライム潰すために生まれてきたとは夢にも思うまい。

というか某冒険RPGでもスライム十匹でレベル一つは上がるぞ!

なんてのを心の中と口の両方から悪態をつきながらも、振り回している腕は止めない。


「クソ喰らえ!」


ベチョ。


「こんちくしょう!」


ベチョベチョ。


「なんなんだこのは!!」


ベチョ。


…………ガキィン!!


「は?」


なんだ?やたらめったらに鉈振り回しすぎてどこかの石にぶつけたか?

……いや違う。


「明らかに違う見た目に違う材質。おまけに一回り以上姿が大きいときた。もはや一周回ってスライムらしくないお前はこの穴のボスと呼んでいいかな?」


目の前のスライムはもうスライムと呼んで良いのか分からないような見た目をしていた。金属質なボディにメタリックカラーのそれは一切の歪みのないほどの『球』だった。


「(鉈はさっきぶつかった感じ多分だけど一切効いていない……だろうな。ただそれイコール俺からの攻撃手段皆無というわけなんだが……)」


さっきまで駆け出しの冒険者が狩りをするようなレベル1のモンスターだらけの場所に唐突にレベル50くらいの化け物が現れた現実に苦笑いしかでない。


目の前のスライムのような特徴が一切ないような理不尽個体を前に、俺はだらりと腕の力を抜く。


「(……反応はなしか。相手の状態を見て油断じゃないのか、それともそれを判断するよどの知能はないのか)」


この場合だったらどちらかと言えば前者の方がこちらとしては助かる。

なぜならば、俺のこれから取る行動は……!


「逃げ一択……!」


そう誰にも聞こえないほどの声でそう呟いた俺は、まず脱力した鉈を持っていたほうの腕だけを一瞬だけ力ませて……


あのデカスライムに投擲!!


真ん中を狙ったつもりだったが、水平に外から内に振った腕から放たれた鉈は微妙な軌道を描きなが球の側面を掠るようにして当たり、そして微妙に進む先が変更された鉈は近くにいたスライム一匹にダイレクトヒット。


あのスライムに仲間を労る崇高な気持ちがアレがその偶然も好機となるのだが……。


「ダメだ。全く気にする素振りがない。さっさと逃げよ」


そのための素早さ全振りである。

……まぁまだステータスポイント手に入りすらしていないのだが。

そんなことを思いながら俺は森の中を疾走するのだった。



















遡ること数時間前。


「さて、現状確認も済んだことだし、そろそろゲームらしくモンスターの討伐でも行きますかね」


ただここで一つ懸念点。

再度確認するが、俺が住んでいるこの場所は長野のどこかの緑あふれる山々に囲まれた土地である。そして櫂が住んでいる場所は埼玉県南部のそこそこ大きな一軒家。

この時点で既に環境という生物が生きる上での最重要要素が違っているのだ。


というかそもそもあのモンスター自体がどこから発生しているのかも分からないし、もしかしたら都市部にしか発生しておらず、この辺の僻地にはまだ訪れていないということも否定できない。


「まぁそんな可能性があってもずっとこの場に留まり続けるってことはないよな。そのためには……」


そこで言葉を切り、さっきからずっと付いていたテレビをようやく切って部屋を出る。そこから玄関まで移動して、そのまま外へと向かう。


「……こうやって見た感じはそれほど違いは感じないな」


いつもの、木があって山があって畑があっての何の変哲もない田舎の風景に、今までの情報が全てデマなんじゃないかと思うほどだ。


「ま、それほどここが田舎だってことだよなぁ……」


こうやって外で大きめの独り言を呟いていても誰も気にしない。だってそもそも気にする「人」自体がいないんだから。そう考えたら人がいないんだからモンスターも居るわけ無いよな。


見慣れた風景を視界から外し、我が家の敷地内へと目を向ける。

そして見えるはザ・蔵という感じの二階建ての一軒家ほどの高さを持った壮観すぎる蔵だ。


ここにはちょくちょく出入りしているので、大きな鉄の扉が錆びて開かないなんてこともなくすんなり開く。


「あ、やべ。懐中電灯忘れちった。……と、いう時のための入口近くの木箱に入れてある二本目の懐中電灯。さて、目的のものは……」


そうして、蔵の中へと足を踏み入れる。

高さが相当あることもあり、奥行きも横幅も侮れないくらいにはある。そのため基本的に中が暗いこの蔵の中では入り口を開けておいても少し迷ってしまうことが多々あり、しかも基本的に暗いせいで無造作に刃物とかが放置してあるこの中では光がないと簡単に怪我をしてしまう。


探しものを見つけるのにそれほど時間はかからなかった。


「お、あったあった。ヒノキの棒よりも十分に優れる農家兼業冒険者さんたちのための救済武器……鉈」


鉈である。

長さ約50センチのそこそこ大ぶりなやつで丁寧にカバーがかけられているそれは何回か使われているものであろう。……勿論俺がこれから使うようにモンスターをひっぱだくための用途では絶対に無いのだろうが。


片手で持ってどんな感じかを一度確認してから、覆われていた皮のカバーを静かに取り外す。


「おぉ。……これはとんでもないな。なんかあのアニメ思い出してきた」


少しその姿を想像して、途中からこれからやろうとしていることは対象が違うだけでそれほど変わらないのでは?と思い始めてきたので、その姿の想像を中止。


「せめてちゃんと経験値になることに感謝しながらバッサバッサといくか。いや、でもそれはそれで……」


そこから先はもう考えるのをやめた。

この道具を手に持って生物らしき存在を切ろうとしている時点でどうしてもあのアニメが頭をよぎってしまう。


「(早急に別の武器見つけよう)」


浩哉は誰もいない暗い蔵の中で、一人そう決意した。



















そうして、ちゃんとした(?)武器も手に入れた俺は動きやすい服に着替えて森の中へと足を踏み入れる。


そこで目にしたものとは……!


「なんか……これ、は……?……スライ、ム?……いやなんか……こういう感じもあるっていう想像はしてたけど……なんか想像以上だわ……」


思ってた以上にネチョってた形グッズグズのベチョベチョの液体と個体の中間の身体を持ったスライム(?)だった。





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