マクドで別れ話

シリウス=サイレンス

エッセイ。実際にあった話を表現しました。1話完結です。

古びたビル。

その中に美術の絵の塾がある。

夕方の教室。

白い机の上に、リンゴが置かれている。

シュン、そのリンゴを模写している。

シュン「ふぅ、やっと終わった」

模写を終えて体を伸ばす。

ユウカがやってきて、

ユウカ「おつかれ」

シュン「おつかれ。俺らも帰ろっか」

ユウカ「うん」

二人、荷物をまとめて教室を出て、鍵を閉める。

エレベーターのボタンを押して、来るのを待つ。

シュン「……」

ユウカ「……」

気まずい空気が流れる。

ユウカ、目を伏せてシュンと目を合わせないようにしている。

シュン「……マクドでも食べていく?」

ユウカ、こくりと頷く。


―――――――――――――――――


マクドナルドにシュンとユウカが入っていく。

二人、席を取る。

シュン「何か頼まないの?」

ユウカ「……いい」

シュン「そっか」

テーブルに置かれたシュンのバーガーセット。

シュン、無言でユウカの要素を伺いながらハンバーガーを食べる。

ユウカ、シュンと目を合わせないように顔を伏せたり、横を向いたりしている。

シュン、空気を察して言おうとしたことを飲み込む。

ハンバーガーを食べ終わる。

シュン「行くか」

ユウカ、頷く。

シュン、立ち上がりトレイを持ってゴミを処分しに行く。


―――――――――――――――――


駅構内。改札前。

無言で歩いていく二人。

目線は合わない。

シュン「……もう別れるか俺ら」

シュン、立ち止まる。

ユウカ、立ち止まり、シュンの方を向く。

ユウカ「……うん」

シュン、最後に言う言葉を目線を斜めに向けて考えている。

シュン「……何か言いたいことある?」

ユウカ「……特にない」

シュン「そう」

ユウカの表情は俯いているせいで見えない。

シュン「俺はある」

ユウカ「何?」

シュン「あんまり俺のこととか、ベラベラ他の人に喋るの好きじゃなかったかも」

ユウカ、顔を上げて驚いたような表情をしている。

初めて二人の目線が合う。

シュン「なんで驚いてるの?」

怪訝そうな顔で尋ねる。

ユウカ「いや、あんまりそういうこと言うと思ってなかったから……」

シュン「そっか。ごめん……色々」

ユウカ「ううん。別に驚いただけ」

再びユウカが目線を外す。もう二度と目線が合うことはない。

シュン、うんざりしたような残念そうな顔をする。

シュン「じゃあ、さよなら」

ユウカ「……うん」

シュン、ユウカに背を向けて改札の方へそうそうに歩いていく。

ユウカ、それを見送ることなく違う方向へ歩いていく。

二人、振り返ることもなく人混みに紛れて見えなくなる。

シュン「……なんだよ、マジで」

吐き捨てるように呟いた言葉すら人混みに紛れて消えていった。  おわり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

マクドで別れ話 シリウス=サイレンス @Sirius_Silence

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ