乗り過ごした電車のなかで

らる

乗り過ごした電車のなかで

電車の窓の外には美しい海が広がっている


青い海

透き通っている


青い空

雲ひとつない


降りるはずの駅を通り過ぎて、ぼーっと外を眺めている

こんなことをしてはいけないのはわかっている

きっと電話がかかってくるはずのスマホの電源は切っておこう

そうすれば電話にでなきゃいけないとか、でなかったときの罪悪感、着信を切れない自分の不甲斐なさ、そんなことを考えずに済むから。

今はこの景色だけを見ていたい

見たくないものからは目を背けて

今はこの時間だけを楽しもう

自分だけの時間を


この時間のこの電車は、

3駅ほど前でほとんど人が降りて、

その後に乗ってくる人もほとんどいない

辺りを見渡しても、

この車両には他に2人しか乗っていない

隣の車両も同じくらいだろう

といっても2両編成の電車だ。


ゆったりと時間が流れる

これから何をしようか

特に何も目的はないけれど

とりあえず今は、この綺麗な景色のことだけ

それだけでいい

終点に着いたら考えよう

そんな行き当たりばったりの現実逃避

そんな日があったっていいじゃないか

人間、完璧じゃないんだから

誰にだってそんな日くらいあるでしょ

私のそんな日がたまたま今日だったってだけ

気まぐれだけど

気まぐれでいいじゃない

そんなことだってあるさ

生きていれば


綺麗だなぁ

外を眺めながら、ぼーっとしている

すーっと私の頬を涙が伝う

何も考えられない

ただただ景色だけを見ている。

マスク生活のおかげで、私の涙に気づく人はいない

よかった

存分に泣ける

声にならない叫びが、涙として私の頬を伝う




電車のなかの私の世界

自分だけの時間

海を眺めながら、現実逃避を続ける

終点までは。

私だけの世界に浸っておこう


美しい綺麗な

青い海と

青い空

そんな世界に1人

私だけの時間を生きている



















今だけは私だけの世界で

いまを生きている


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乗り過ごした電車のなかで らる @calmraru

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