第11話
夜更けになると、超越的次元にいる何者か――逆らおうとすれば運命の烙印を押してくる絶対者――が、
リクの吠える声が聞こえたかと思い、そっと台所の方へ行くと、すやすやと寝息をたてている。
何者かは言う。「夢を諦めれば、少しは楽になるぞ」――と。
暗闇を外にも内にも感じベッドの上で眼を
わたしは、世紀末の不安に抗えなかった或る作家のことを思い出し、彼はきっと、彼自身の家族というものを、猫の喧嘩のように見ていたのだろうと、ぼんやりと考えた。
わたしは、どこか心地よい気分になっていた。それはきっと、抗うつ剤の力によるものではない。爽やかな朝のせせらぎに、胸がときめいているからでも決してない。
昨晩遅くに、「先生」のホームページの活動日誌が更新されていた。その軽快な文章には、絵を描くことへの情熱と喜びが満面に踊っている。来月にも、発表できる仕事があると予告されている。
わたしは、「先生」のイラストを偶然見つけたことで、人生が一変した。そして、「先生」の活動を追っていくうちに、その創作への真摯な姿勢と熱情に感化され、勝手に「師匠」として自分のこころの中に位置づけていった。
わたしは……なにを迷っているのだ? どうせ、その野望を抱くことに羞恥のようなものを覚えていたのだろう?――身の程しらずである、と。
わたしには才能がなければ、才能を
絶え間のない苦しみと、血のにじむような努力とが、力強く織りなしていく軌跡のうちに形作られる夢というものを、抱くことは恥ずかしくない。夢を掲げておいて、なんの努力もせずに、「
「わたしは、先生と一緒に仕事がしたい」――そう、大声で宣言すればいいじゃないか。
朝陽は光の色を強めていき、鴉に代わり
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