第14話

 あっという間の時間で、アメリカのロサンゼルス空港に到着する。自分も正直な何言ってるかわからない。おおよそ、核融合を用いた戦争、第四次世界対戦後で全ては焼却したと言われていたのに、アメリカはあまり変化がないことに驚いた。

 フォートル様の車に乗り、ついに同じような車がいくつも通る。道も整備されてるし、イフンフラも良いのか全く悪臭を感じない。時代がここだけ全く違う領域になっている。

 どのビルも何の変哲もないため、これといって特徴が見受けられないが、目的地に到着したらしい。ビルの1階のシャッターが開き、車を入れる。

 車から降りて、階段で地下に案内され、部屋に入る。

 中は少し暗くて、スーパーコンピューターが並んでいた。

 目の前には画面があり、画面越しで誰かが話している。

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 「何故に私の頼んだことをやらないのです」

 画面を見ながら話している女性は金切り声を上げている。

 「私が毎日ここの管理をしているというのに給料ももらえない、感謝もない、ただ『やれ』だの『さっさと仕事しろ』だの何なんですか本当に!」

 画面越しの彼女の怒声は全く止まらない。

 「私にとってあなたなんて必要ないです。死んでください。そうすれば私が必要な世の中になるんです」

 どんどんどんエスカレートしていく彼女。画面からは何も音沙汰がしない。

 「あぁ、あんなこと言っちゃって」

 フォートル様はその様子を見て、私に動かないように制止する。

 「そもそも、なんで私は人間としての普通の生活をしているのに、あなたは何もできないの。本当に唯生きてるだけじゃない。あんたが生きている意味なんてないんだからさっさと・・・」

 次の瞬間、文句を言い続けていた女性はだんだんに老化が始まっていく。

 「あなた、自分がなんのために生まれたかわかってないの。生命という素晴らしいものを得させていただいただけで幸せなのに」

 画面からついに声が漏れる。そして、

 「あぁぁぁぁ」

 女性は廊下を繰り返し、やがて乾燥して朽ちた。その後、機械人形が現れて、さっさと乾燥したそれをほうきで掃いて、ちりとりで回収し、背中に背負っているゴミ箱に入れて立ち去る。私はただただ黙ってみているしかなかった。

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 「もうマザー、また資源の無駄使い?」

 何事もなかったかのようにフォートル様が画面に歩み、話しかける。

 「また、遺伝子異常が起きました。最近はどうも多くて」

 遺伝子異常、とはどういうことか。人が死んでいるのだが。

 「ジアさんも、そろそろ『ちゃん』付けでいいよ」

 ついでに私の緊張も読まれてしまう。

 「ふむ、この方が歴史のズレになったものですね」

 フォートルちゃんが嬉しそうな顔で画面に対して回答する。

 画面にはよく見ると3Dデザインの顔がある。

 「そうなんだよ、マザー。それにジアさんはAIが2つも入っているんだよ」

 『gぼいKRLSfz;md↑dglb,→;fd・b.gl;fん、・rhfl;gx¥b.』

 その言葉の後に、ロウのAIも反応がする。ちょっとさっきの場面もあったから気持ち悪くなる。

 「なるほど。もうひとつのAIは別の人ので、舌につなげたのですか。食事のように食べて、適合させるとは大胆な」

 別に食事のように食べてはいないが、口に含んだのは事実だから特に返さなかった。

 「まずはご招待ありがとうございます。ただ、その・・・いきなりで申し訳ないのですが、先程の状況を説明していただければありがたいです」

 私の吐き気も少しは理論が入れば抑えられるかもしれない。とにかくなるべくメンタルが正常でなければこの後の判断も迷いかねないし。

 「なるほど、『マネジメント』と『リーダーシップ』が合わさることで徹底的に自分の身の第一を考えられる危険察知能力を備えているのか」

 画面の中の『マザー』と呼ばれる3Dデザインの顔は私を観察し続ける。

 「マスクよ。説明するのです」

 すると、説明はフォークルちゃんがするように促してきた。

 彼女は笑顔で私の方を向き、説明をし始める。

 「まずは、ようこそ観測者側の世界へ、箱庭の方。さっきの生命の生き死には私たちにとっての日常茶飯事なの。観測者側の世界は核融合が投下されず、すべての文明や技術が残った。そこでさらなる進化を遂げ、核融合技術による一切の環境汚染のない無限のエネルギー、遺伝子操作による絶対的な優生思想。あなたの時代にはAIをチップとして人間の脳に埋め込んだ時代でもかなり革命的だったのだけどそれを遥かに超える進化を遂げてきたのよ」

 私は黙って、話を聞いている。つまり、核融合の被害がなかった国はさらなる発展を遂げ、そうじゃない国はAIを用入りながら少しずつ文明を気づいてきた。ここまでの想像をフォークルちゃんは肯定する。

 「まずはその認識で間違いない。ただ、指摘ががあるとしたら。『アダムとイブはどこからきたのか』、そして『神様を超えた私たちだからできることをする』が挙げられる」

 なにかとてつもなく嫌な予感がした。

 「そもそもあの何もない地に人が誕生したのは、私たちが造った人間を送ったため。そもそも核融合爆弾によって全部無限のエネルギー化しちゃったんだから当然だよね。そして、せっかく人間を送るんだからその人々がどうやって人の英知を築くのを見たくなった。まあ、たまに人間送りつけないと全滅しかけることがあるからある程度人はさっきみたいに製造して遺伝子異常を起こさなかったのを、記憶を塗り替えて輸出しているの」

 まるで道具だ。ただ、これがなかったら私の生きる世界は全く発達しなかったことになる。

 フォークルちゃんはその後嬉々としてさっきのシーンも今までの歴史の過程に合わせて説明をする。

 「さっき、消しちゃった人は遺伝子異常を起こした人なんだ。わたしたちのところでは遺伝子を用いての完璧な人間を作ることができるようになった。クマムシなんかを混ぜたりして放射性物質に強くもしたりした。ただ、まだ解明されていないこともある。それが『遺伝子異常』。さっきの人も私たちが造ったときは普通だったの。でも、なぜか生活に文句を言い出して、終いにはあんな感じでマザーに文句を言う。ああ、人はそれを進化という、とかじゃないんだよ。原因はわかってて、遺伝子が勝手に変わってしまったのよ。そういうのは箱庭だと危険因子になって明らかに今までと違う危険な行動に走るから、強制的に老化を促進して、処分しているの」

 「だって、あのまま箱庭に送ったら箱庭の世界滅ぶよ」と最後に付け加えた。私たちで作り上げた世界でなく、彼女たちのぶっ壊れた倫理観で築かれた世界、という現実を突きつけられてやるせない気持ちになってくる。

 「状況は理解しました。いままで本当にありがとうございます。ですが、もう人の補充は大丈夫なのでは?」

 マザー、と呼ばれる人に今の箱庭の状況は安定していると伝える。今の人口は私が外遊した地域だけを合計しても1千万人いると言われている。そうであるなら、もうわざわざ誰かが介入して貰う必要がない。勝手に文化は発展し、いつか観測者側の世界と同様レベルになるだろう。デモがあったり、皇帝が暴君になることなんてよくあることだ。すると・・・

 「いえ、このままいけば第一次世界大戦の再来で箱庭は滅びます」

 マザーは、全く抑揚のない口調で説明される。

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