第13話
周りには誰もいない状態でそのまま階段を降りた。
するとそこには、ホーさんと見知らぬ少女が対峙していた。
間違いなく、迎えに来た少女だ。
「あなたが、迎えに来るとおっしゃった方ですね」
ホーさんは、「えっ」という顔をする。
「よかったです。私のことを認識できて。私はあなたが何かあったときに必ず借りを返します、という約束でした。今がその時と思い、馳せ参じました。」
目線とAIからの出力で話を合わせろと、出てくる。なるほどね。
「彼女の国は非常に文明の発達した国。そして、彼女は私の信頼できる人です。どうか、彼女に私の身元を預ける形にしてくれませんか?」
私はホーさんにお願いする。
「しかし、ジア様。流石に見ず知らずの人には・・・」
そう言うと少女は会話を制し、
「お名前を述べてなかったですわね。私の名はフォートル・マスクでございます」
その言葉を聞いた瞬間、周りがざわめく。
「私は道に迷ってしまったことがあったのですが、彼女に助けられたのです」
私はこんな美少女助けた記憶はないが、とりあえず話を合わせる。周りの方は、どうも名前を聞いた瞬間ざわめきだしている。
「ジア様。あなたはやはり聡明な方だったか。現状、私たち軍でもトーナラ国の組織の一部、限界があります。しかし、マスク家ならなんとかしてくれましょう」
ホーさんは完全に彼女を信頼しきってしまった。
「お任せください。必ずや代々守り続けましょう。では、行きましょう。お姉さま☆」
最後の言葉にちょっと背筋がブルッとしたが、私は周りに挨拶をし、幾分かの荷物をもらって、変装をして出発した。
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扉から出るとこの時代には珍しい車が用意されていた。周りがジロジロみる。中に入るとさらに驚きなのが完全自動運転。ジアンの時代のときさえまだ完全体じゃなかった代物だ。
「周りのことは気にしないで。後で記憶なんて消えるから」
フォートルちゃんはAIに命令をして、車を起動させる。それにしてもずいぶん恐ろしいことを言う。
「時間が経てば忘れるという意味?」
私は外に出る前に変装をさせられたが、格好は使用人(メイド)の格好だ。彼女の世話役となれば私がジアとはバレないか。ちょっと気恥ずかしい格好だと思いながら、先程の言葉の意味を聞く。
「時間、って。ああそうかお姉ちゃん、もしかして現代の技術発展知らないのか。AI持ってたからてっきりだよ」
お姉ちゃん、という言葉にまた背が震える。
「説明してくれるみたいだけど、その前に次からお年ちゃん呼びはやめてほしいかな」
フォートルちゃんにお願いする。
「私たちが行動する関係的にはこっちの方がいいと思うよ。後、私を呼ぶときは一応『様』でお願いね。でも、『ちゃん』付はすごく嬉しい」
AIで考えてない部分も読まれてるのね・・・
「すごく簡単に説明すると、脳って、信号で色々と身体に命令しているじゃない。現代だとそれが全部解明されたんだよね。当然思考も。まあAIが人間の思考なんてたいしたことないって証明しちゃったしね。で、私たちみたいに観測する側の人間はその信号命令形等を全部AIに埋め込んで学習させたの。で、身体に『金属系統』を持ってさえすれば、AIを持っていない人間を金属から見えない信号を送って、ある程度なら意のままに操れるし、心も読むことができる。とはいえ、IQがよっぽど高くないとそれも扱うのが難しいけど。あっ、でもこれってIQが高くて練習すれば出来るようになるから根底的には私たちもあなたが本来生きていた時代よりは馬鹿かもね。古臭いことなんてしないし」
説明をしてワードがさらに増えてくる。
「まあ、とりあえず私のような人は人を操れるよ、って話。お姉ちゃんもわたしたちのところにくればあっという間にできるから安心して。なんせ、『マネジメント』と『リーダーシップ』内蔵のAI保有者だし。空間における正しい人間の操作なんて意のままだよ」
そこまで人を操りたいとは思わないんだけど。「ふふふ、いい人だね」とフォートル様は優しい笑みをする。
「箱庭と観測する側って、どういう意味?」
それを聞くと簡潔に
「あなたが今生きている中世の世界が『箱庭』、私たちが生きていて行ってることが『観測する側』だよ。まあ、こっちにくればよく分かるよ」
「あ、あと私がアメリカのロサンゼルスに行くとは夢で聞いてたんだけど、具体的どこに行くの?」
フォートル様はニコニコしながら答える。
「私のうちだよ」
ついでに聞いてみる。
「フォートル様の『マスク家』って、どういった家系なの。陸軍最高幹部がたじろくくらいだから相当すごいと思うんだけど」
今度は、「えっ、知らなかったの」という言葉とともに伝える。
「お姉ちゃんは元プーノ国でトーナラ国の外交官してた・・・ああ、プーノ国はわたしたちの存在否定派だもんね。箱庭側だと『祖にして究極の神の家系』、ただ、今まで見たことがないからといって別の人間が嘘といって勝手に新しい神を名乗ってたりするよ。たまに用事で外出して顔出ししてるんだけどね。そして、観測者側では『世界で最も人々のための行いをした』家系として有名だよ」
おそらく、トーナラ国の皇帝の家系よりすごい家系なのか。
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国を出て、しばらく移動するとずいぶんとだだ広いところに付き、驚く。
「えっ、飛行機」
それは、輸送型の飛行機だった。いや、この時代にはありえないし、今までこんなところ見たことない。フォートル様の世界では一体何が起きているのか。
「ひと目につかないように常に脳がいじられて、ここに行く道のりにはAI内蔵者しか少なくとも無理だよ」
と道程の説明はしたが、飛行機の説明はない。
「そっちだと、このレベルの飛行機はまだロストテクノロジーだもんね」
そう返されながら、飛行機の輸送庫の中に私たちの乗った車が入っていく。
「ちなみに、さっきの車も飛行機も核融合理論を基本にしているよ。兵器の後は人々のための実用になる、好例だよね」
ほとんど置いてけぼりにされながら、飛行機はものすごく静かに離陸をしてしまった。
「驚いてるんだね、お姉ちゃん。そう滅多に落ちることもないから大丈夫だし」
そこを心配しているわけではないが、その後は彼女の近くに機械人形が現れて、服を持っている。それを受け取って、彼女は貴族衣装をその場で脱ぎだす。
「いや、もうちょっと恥じらいを・・・」
と突っ込んだが、「ん? ロウ側のAI戻ってないし、そもそも裸をみたって性欲とかでないでしょ」
といって一切気にしない。
いつの間にか私の分もあった。
「重いし、暑いし、動きづらいし。それにアメリカだとこんな服着る人いないよ」
そう言って私にも切るように促された。フォートル様は幼い身体を一切気にせず見せつけた後に、さっさと私の時代に着ていたごく当たり前の洋服に着替えてしまった。
私も、周りを見たが誰もいないし、試着室もなさそうなのでさっさと着替える。
・・・私はスーツなんだ。これはこれで懐かしいけど。
「アメリカの方は第4次世界大戦の影響を受けなかったから、基本的に技術も残ってるんだよね。だから観測者になれてるわけだけど。ただ、やっぱり細かい説明は現地かな」
とりあえず、飛行機がある理由だけは納得できた。搭乗時間はどれくらいか聞くと5時間くらい・・・5時間って短くない?
「飛行機も発展してG軽減とか成功しちゃったんだよね。すごいでしょ、あなたの本来生きてた時代だと10時間だったかな」
フォートル様はウキウキと飛行機の技術について説明してくれたが、私には未来過ぎてただただAIに保存するのが精一杯だった。
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