第12話
次の日、私はドアノックの音で目を覚ました。時間は9時を過ぎている。
「申し訳ないわ、今起きるわ」
そう伝えると、扉の向こうから
「いえ、お気になさらず。私どもも今朝からマスメディアの取材でなかなか手が離せず・・・遅くなり、申し訳ありません。朝食と新聞、お着替えをご用意します」
軍の兵がそう言ってしばらくすると、ドアがまたノックされ、ホテルの女性スタッフから朝食と新聞、服が用意された。
朝食は軽めのパンでそれを食べながら新聞を読む。
『サシラスでトーナラ国皇子暗殺!』
『犯人は行方不明』
『トーナラ国皇子ロウ様、暗殺される』
『トーナラ国激震! 犯人はいづこに』
『ロウ皇子に哀愁の意を』
どこの記事の見出しもロウ様でいっぱいである。そして、どの記事も私と犯人は行方不明で様々な憶測が飛び交っている。犯人にさらわれた、とか。別行動をしてた、とか。
電話で陸軍最高司令官ホーに尋ねる。
「お目覚めになりましたか」
「新聞を全部読みました。私、どうなってるんですか?」
「こちらでは行方不明扱いにして匿らせていただいております。もちろん皇帝陛下にも。あの国は現状信頼できない状態になっています。おそらく、明日にはクーデターが起きるかと」
ホーさんが匿って下さっているのは安心だ。しかし、私もいつまでもここにいる訳にはいかない。
「子どもが心配です。せめて屋敷まで移動したいのですが」
そう伝えると、ホーさんは冷静に回答した。
「大丈夫です。私が陸軍に特別なはからいをしてくださっている貴族に頼んで子どもたちは別の場所に移動させております」
果たしてその言葉そっくり信じていいのか。
『あなたの息子はすでにこちらに向かっているので安心してください』
昨日の夢の言葉がよぎる。今は信じるしかないか。
「わかりました。外出の許可はでそうにないですね」
「申し訳ありませんが」という言葉が返ってくる。この状況ではしょうがないとしか言えない。しかし、少女がくるらしいのだが、本当にくるのだろうか。
『grwそgl;jmls;b,;lf:db,えl;gd.dfz:b.;d:fz¥b.fd;lb,えlpdbm,えl;:dfb,』d;fb,df;」:b,df」b,df」b.d;btr」hkyもいうklymjん、:lfz;ds:。あっv.あ:;v,:gb,』
ロウのAIはまだ出力中で動かない。前よりは文字が変なところで区切れたりしてないのでましになったかな。これもアメリアに行くことで解決するのだろうか。
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「運命を変えた人間がいるからここに来いとか言われましたが、なんて汚らしい国なんでしょうか」
少女は長いハイヒールの靴。ひらひらのドレス。大きな傘。そして、大きな帽子をかぶり、結果的に元の自分の体格より大きく見える状態で歩いている。そもそも西洋のこの時代は排泄物は外に捨てることも多く、とにかく貴族は自分のみを守るために服装は重装備になっている。そして、下水道もままならない状態であったため、イメージする街並みとは程遠いものだった。まして、サシラスという国は近代化を進めた後に、強国に敗北した植民地国。雰囲気もあまりいいものではなかった。さらに今は暗殺が起きた後だ。街では物珍しい人間は怪しい人間だと不信感を抱く。少女は貴族の格好をしているが、偽物なんじゃないかと疑ってるのも何となく分かる。
とにかく、ここをさっさと離れて故郷に帰ろう。そう思いながら、目的地の宿泊所に着いた。
「ふーん、隠れてる場所は私達のところじゃもはや民泊ね」
仕事の確認をした際、超高級ホテルと聞いていたのに更にガックリである。この時代のこの国の料理もそこまで美味しくないと聞くし、ますます帰りたくなっている。
堂々と正面入口から少女は入ろうとする。
「何者だ!」
そこに見張りをしていた男二人が人が現れる。トーナラ国の軍人だ。
「んー、めんどくさいなぁ。そういうの」
そう言うと彼女のところに近づいてきた軍人は、扉を開けて
「どうぞお入りください」
そう言って案内してしまったのである。
「レディーを重んじる心。素晴らしいわね。元々は女を生贄にするための制度でしたけど」
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身体はどう考えても幼い子供だが、あまりに上流貴族じみた雰囲気の人が入ってきて、ホテルの従業員は仰天する。そもそも今は貸し切り。軍の人が案内するとは何者なんだ。怪しい気配を感じたホーは階段を歩こうとする少女の前に立つ。
「大変ゴミ分の高い人と存じますが、無礼な態度をお許しください。現在いかなる人であってもこの宿泊施設はご利用できないようにしております」
彼は少女の前で片膝をついて礼をしながら伝える。
少女は誰も傘を預かってくれないんだ、という態度を見せながら自分で傘をたたみ、ローの様子を見る。
「軍の人たちはこっち側の人間じゃないんだね。あなたまで操っても変だしなぁ」
彼女は少し考えた後、ふふふ、と笑いだす。
「ん、もう私のお仕事終わりそう。さすがは、社長。用意周到なんだから」
少女が総言葉に出す。ローは少し顔を上げて、何を仰ってんるんだと思った矢先、ジアが階段から降りてきてしまったのである。
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『お迎えに参りましたよ。ジアさん』
私のAIから声がする。夢に出た人とは違う人だ。
『gらえい;kbmrこえあ;lfb,;えあfdb,えぱl:・;gdb,え;lfd・』
ロウのAIも反応しているのか、ものすごいノイズが頭をよぎる。
『あっ、すごい。本当にAIを2つ持ってるんだ。ただ、まだ適応中かな。苦しませてごめんね。今ロビーに居るんだけど、こっちに来てくれない? ナイトさん、あぁもう軍人さんの時代か。陸軍の偉い人が私のこと怪しんじゃって』
そこまで聞いて、とりあえず部屋のドアを開けようとする。
しかし、開かない。内側からは対応できないようになっているのか。
『窓から入る:もし窓が開いていて、中に入れるなら、窓から入って扉押しができます。
別の出入り口を使う:もし家の他の出入り口がある場合は、その出入り口から家に入り、内側から鍵踏みができます。
鍵穴にグリスやオイルを注入する:鍵穴にグリスやオイルを注入し、鍵を挿して回すと、鍵がスムーズに回るようになる場合があります。扉の段差ができます。
鍵を突き止める:鍵を削除、鍵穴に何かを挿入して回すことで、鍵を使用せずに扉を押すことができます。また、この方法は方法に問題がある場合があるため、地元の法律を確認することをお勧めします。
ロックピックを使用する:プロのロックピッカーのみしかこの方法を使用することはお勧めできませんが、ロックピックを使用して内側から扉押しができます。
ドアを壊す:これは最後の手段であり、非常に危険であるため、警察に通報する前には試すべきではありません。また、この方法は問題がある場合があるため、地元の法律を確認することをお勧めします』
AIからの反応はなんともまあ、雑な回答が出てくる。ここはしょうがない。
最大まで下げれるところまで下がり、一気に突っ込んで扉を破壊した。
どうもオンボロだったらしく、扉は私が突っ込んだ形のまま穴が空いた。いや、これはこれで不用心だな・・・しかも全然音もしなかったし。
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