第6話
毎日が忙しくも楽しい外遊旅行。
そんなある日、豪華客船の新船長着任式に出席をする予定とともに、この式典後、初の乗船者の一人としてロウとその使用人たちは乗船し、ロウのトーナラ国に戻ることになったのである。
「君のことは説明するが、恋人であることは隠さないとならない」
ロウは申し訳無さそうにジアを見つめ伝える。
「気にしないわ。私が選んだ道ですもの」
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着任式の方は、たまにかもめが飛んできて、防止を奪い去ろうとする邪魔が度々あったが、無事に完了した。
いよいよ豪華客船に乗ることになる。1万人が乗車可能な大型の客船で残りが全長は300メートルを超えている。中に入れば、高級な食事やドリンクが提供され、様々な種類の料理を楽しむことができる。ライブやダンスショー、カジノなどのエンターテイメントも用意されていて、船内で一日中楽しむことができる。今回は豪華客船の最大の魅力である船旅中に立ち寄る様々な港や景色は、帰国ルートに直帰のため楽しむことができないが、今まで回った地元の文化や歴史を整理するにはちょうどよい時間が与えられたし、二人にとってもデートを楽しむことができる空間である。
「ジア、どう?この豪華客船すごいよね」
ロウは多くの船の式典には出席したが、実際に乗船するのは初めてだった。
「本当に素晴らしいわ。こんなに贅沢な空間でなんて、初めてよ」
ジアも興奮した状態だ。
式が終わって、すぐに乗船したにもかかわらず、中の案内だけで時間がだいぶ立つ。やはり、巨大な客船だ。部屋は無数に存在し、階で表現すれば、進入禁止も含めて6階以上。先程の説明以外にもプールもあり、とにかく豪華である。一通り案内が終わって、招待された客たちはそのままディナーになった。
「ディナーについても、音楽についても全てが一流なのだから本当にすごいよ」
お互いに驚きながら、舞台装置に見入る。本当に船の中かと思うほど広いルームであり、常に流れている音楽もそう滅多に聞けるものじゃない代物だとすぐに分かる。食事の内容も多くのデータを蓄積したはずのAIが出力されないものばかりである。この時代における最新にして最高級の料理なのだろう。
「すごい、旨味が今まで味わったことのないものだわ」
二人は、おおよそ外遊でほとんどの一級料理を食してきた。それでも今回の食事は今まで食べたことがないほどおいしいものだった。
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最高のディナーを終えてから、二人で歩く。今日は周りにも貴族がいるため出会うたびに挨拶をしているが。しばらく歩くと独特な明るさの部屋があった。中を除くとそれは・・・
「カジノとかあるんだ」
高級感のある内装やデザインが特徴的で、充実した設備が整っている。
カジノフロアは、照明がすこし落とされ、独特の雰囲気が漂っている。また、プロのディーラーが対応しており、貴族の人たちがゲームを楽しんでいた。
「カジノとか興味あるの?」
ロウが私の様子を見て、聞いてきた。ジアンだった頃の時代だと賭博は衰退しつつもある一定層に根強い人気が会った。賭博法もより厳しくなったので、運営側もプレイヤーもほとんど稼げないような代物だったが。私は一切手を付けたことはなかったが、初めて見る光景に少し興味が湧いた。
「せっかくだし、少しやってみましょうか」
私はロウを誘ってルームに入る。今回選んだのはルーレット。色と数字を選んで、いくら賭けるか決め、そこに玉が入れば当たり、という極めてシンプルなものだ。ルーレットは電子だった。
「お金儲け出来そうなものは、復活も早いものだね」
と言いながら、ロウはAIを使ってルーレット台の機械のデータに侵入する。その様子を見て、私も一緒に侵入してみた。ベットされたもの以外に玉が入る結果になるよう仕組まれていることがわかった。ディーラーはあくまでルールの説明だけが役割のようで、現代版イカサマという感じだ。ただ、セキリティがガバガバなのでいくらでも勝つことができる。
いくらまで賭けをやれるか、使用人に確認をし、
「ここは、君が気になる数字にかけてみるといい。きっと、運が向いてくれるさ」
といって私とアイコンタクトした。
うふふ、資産を増やしましょうか。
「そうね、私のラッキーナンバーは13。色はピンクにしましょうか」
そう言って、賭けの限界全額を13のピンクにのせる。周りもディーラーも使用人もびっくらこいてる。
その間にロウはルーレット台をいじって当たるようにした。
使用人は止めに入っている。
「いくら初心者でもギャンブルとはそういう使い方ではないですよ」
ディーラーでさえ止めに入る。
「流石に考え直したらいかがでしょうか」
ちなみに当たれば1万倍のお金が返ってくる。
「もしかして、返せるお金がないのかい?」
ロウは二人の様子を見て、挑発する。
私は少し微笑しつつ、内心はものすごく楽しむ。
「第一、賭けれる金額だけしかやってないんだ。私は何も気にしないよ。当たらなければ帰るだけだし」
使用人は諦めた表情をする。
ディーラーは「かしこまりました」といって、ルーレットが回るボタンを押す。
人の射幸心を煽る用な光と音とともにルーレットは周り、そして・・・
13のピンクに玉が入った。
周りの人たちも当然全く当たってないのだからその様子を見て拍手喝采である。
「わあ、本当に勝ったわ」
私は大喜びし(不利だとバレないような形で)する。
ディーラーもイカサマしているわけではないし、普通に拍手して賞金を渡す。
その日だけで、ものすごいお金を手にしたため、これでしばらくロウの国に帰っても問題なく、暮らせる。それだけでなく、多くの貴族が幸運の持ち主として、ロウと私を讃えて、親戚のような仲間内になろうとしてくれた。彼らはなにか外交とかで必要になった時に大きな力になるはずだ。
カジノルームから出ていく際、使用人が
「心臓に悪いので今後はもう少し、本当にもう少しギャンブルをするなら品のあるやり方にしてください」
と注意された。品のあるってなんだ、とクスクスしながらもロウは悪かった、と使用人に伝える。
今日の夜は本当に最高の一日となり、これから待ち受ける多くの困難も乗り越えられる感じがした。明日の昼からは私の存在はロウのふるさとの何処かに幽閉されるのである。私の選んだ道でもある。それを乗り越えられるように務めなければならない。
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カジノルームでは、一つの落とし物が発見され、船内の担当者に届けられた。それは懐中時計である。シンボルマークは鷲であるため明日到着する予定のトーナラ国の方のものであろう。明日の朝、朝食の時間に尋ねることにしよう。謝ってボタンを押すと蓋が開き、蓋の裏には美しい女性の姿があった。この女性の冠とペンダントはなぜか獅子の模様である。
おそらくは、別の国にいる愛する女性の写真を一緒に入れたのであろう。貴族といえども恋人と離れながら暮らすことになるのだから辛いものなのだなぁ、と受け取った船員はしみじみ感じている。しかし、その懐中時計の持ち主こそがトーナラ国皇子ロウの物であった。ここから二人の運命は大きく動くことになるとはつゆ知らず、ロウとジアは美しい夜の海を眺めた後に眠りについたのである。
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