第5話
その後の二人の生活は今までの時間を取り戻すようだった。多くの国々で仕事をする以上、行く国々の文化を知る必要があるとジアは述べ、それ以降ロウとジアは、新しい国に行ったときには必ず、時間があれば図書館に寄るようにした。どこの図書館に行っても、静かで落ち着いた雰囲気があり、多くの本が積み上がっていました。ロウもジアも、自分が探していた本を探し、見つけては高速で読み、AIに保存をする。だいたい1時間で60冊は保存できるため、二人で互いに違う本を読み漁り、必要な本がすべて保存できたら、二人のAIを共有して知識を保存していった。本を保存している最中にたまにお互いの様子を見て、目が合うと二人は顔を赤らめます。
この二人の時間は特別なもので周りの空間はロマンチックになっていました。
車の中では、基本的に共有した本の内容から議論をし合う場となっています。ここでも最初は議論をすることに緊張しつつも、すぐに意気投合し、長時間話し合うようになります。
使用人が「明日に響きますから、早めに」ということばがあるほど。
ロウとジアの関係は、現状秘密の状態となっている。ロウが行く先々の式典には隣に立つことは許されない。ジアは必ず、遠い場所で眺めているのである。ただそれでも彼の勇姿は輝き、美しいのである。
二人きり(使用人はいるが)になれる時間も存在する。それは食事の時である。
使用人が選んだお店には、誰もおらず、そしてそこで働く人々は古くからトーナラ国が代々利用しているため、厳重に秘密にしてくれる信頼できるレストランである。
ロウとジアが訪れると、どこのお店も優しい雰囲気に包まれる。二人が幸せを運ぶような空間になっている。
ロウは魚料理が好きで、ジアは肉料理が好きだ。これは昔のときもそうである。提供される料理は事前に使用人が伝えているため、二人が注文することはない。出てくるコース料理を楽しく食しながら、お互いに今日の出来事を語り合うのである。もちろんそこには結婚生活も。
「苦しい思いをさせることになる」
おおむね、毎回ロウはジアを気遣う言葉が多い。
「いいのよ、私が選んだ道なんだから」
そう言って、ジアは励ます。本当に二人はよくできたカップルである。
食事が終われば、すぐに移動となるため、お店の外の風景を眺め、夜であれば夜空を見ます。ジアは、ロウに寄り添い、手を握ります。二人は沈黙して、ただそばにいる時間も無駄にしないのである。
ロウが計画することもある。それはある国での科学博物館の開館10周年の記念挨拶で来賓したときのこと。当然ジアは見ることができないため、代わりに資料館でデータを回収していた。しかし、夜になってロウは彼女に伝える。
「科学博物館の見学の許可をもらったんだ。一緒にどう?」
ジアは喜んでロウに抱きつき、二人でお忍びのデートをするのである。
科学博物館に着いた二人は、まずは科学の展示室を見学する。そこには、地球の起源から現代までの科学の進歩が展示されておりましたが、自分たちの時代と少し考えが異なっているようでした。・・・というより核融合爆弾が落ちてからが起源となっており、文化そのものがごそっと抜けています。思わず、AIで出力すると、そこは私達の時代の説を流します。
「今まで、地球の誕生になんの疑問ももたなかったのかしらね」
ジアはロウに率直な感想を述べました。
「どうなんだろう、自分のAIが継承された歴史を見る限りだと、まだ種の起源とかが認められていないことになっている感じかも」
お互いに興味津々で見入っていました。そして、ロウとジアはデータをAIに保存もさせていきました。
その後、自然の展示室では、巨大な恐竜の化石が展示されており、恐竜という名目で展示されていて、そこに『核融合爆弾によって、絶滅した種です』と記されていた。特徴的角があり、形はクジラなので、二人揃って『イッカクだな、うん』とAIにどう保存しようか困惑した。そもそも北極海に行ける技術がないのか、本当に絶滅したのかも判別がつかない。何とかうまくAIを騙して数種類ある形で保存することにした。
帰り道、ロウはジアに手を取り、伝えました。
「本当に楽しかったよ。ありがとう」
ジアは、ロウと過ごした時間を大切に思い、
「私も楽しかった。次もこういった事ができるといいね」
と伝えました。
科学博物館デートは、お互いの距離感を縮めつつ、現在の世界はどうなっているのかを理解する。よい機会となりました。
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ある国で、ブームが起きた。それは山登りをするということだ。ジアとロウの今まで使用された人物たちの時代を遡っても核融合爆弾を透過されてからは一度も起こらなかったことだ。そして、まさかの『上流貴族の登山会』結成を記念して式典を述べることになったのである。式典を述べてから、なぜか使用人が登山グッズを用意されている。・・・二人してポカーンだが、
「お二人も登山会のメンバーになりました。そのためご用意させていただきましたので」
まさかの登山をすることに。といっても標高もそんなに高くはなくほぼほぼハイキングみたいなものだ。ものなのだが、いくらなんでも運動をしなさすぎてる。二人がジアンとロウンの頃は、普通に体を鍛えていたわけで、まあこのくらいなら問題ないのである。しかし、今は貴族だ。そもそもなぜ上流階級は、急に仕事が嫌になったから山を登ろう、とか考えだしたのか。AIによるとたしかに18世紀くらいには貴族がキリスト教が自由にした山を登るようになったとか。
ゼハーゼハーいいつつも、自然に触れ合いながらの登山は新鮮そのものであった。貴族会、ということもあって二人は話しながら歩けた。流石に手をつなぎながらとかは無理だったが、お互いにサポートしながら歩き続ける。
山頂に到着したとき、二人はこれほど自然があるのかと、景色に感動しました。お互いに感動のあまり涙を流すほど。核融合爆弾が透過されてから、周りは荒野のような景色になったと科学博物館で知っていたこと、ジアンとロウンの時代には、自然なんてものは本当に観光を売りにしてたり、林業があるところくらいしか残っていなかったため、本来の自然を間近に見れた貴重な機会になったのである。ロウはジアンに対して、
「こんなに素晴らしい景色を見られました」たのは、君がいてくれたからだよ。ありがとう」と言いました。
山頂での時間が過ぎ、下山する時間になりました。二人は、名残惜しいことだと感じていました。
帰り道中、ロウとジアは、その国で有名な温泉に入る事となった。現在の文化では、温泉に入るときは水着を着用する男女混浴であり、身分によって入れるところも決まっている。 二人は温泉を独占しながら、先程上から見た景色を今度はゆっくり疲れを癒やしながら近場で見ることができた。二人だけの空間であり、特に外の空気を気にしなくていいため明らかに筋肉痛(なんやかんやで若い身体だったからよかった)を治すために、交代交代でマッサージをする。ロウは中肉中背で、ジアはスレンダーな体型であることを二人は初めて知ることとなった。ふたりとも裸に近い付き合いは以前なら会ったが、ここにきて恥ずかしくなり、終わってからは顔を赤らめて再び温泉に入るのである。
こんな毎日が繰り返されながら、二人の外遊訪問は続くのである。
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