第4話

 私、ジアンは他国の拉致被害にあって以降、様々な人のAIとして活用された。途上国でもAIが活用されるためもはや男女の性差は大差がなくなっているとはいえ、女性の方が優遇されてる以上少しはマシな人生ばかりだったかもしれない。AIに出された才能もあり、私は「マネジメント能力」をスパイ活動として大活躍した。どんな会社の組織に所属しても必ず人々に馴染むことができるし、出世もする。そうすれば、数々のデータだけでは得られない生の情報を垂れ流しできるわけだ。私のAIは代々そうやって二重の利益を得ながら人々に受け継がれていった。その間に私の魂が呼ばれることはなかったが。そして、核融合を用いての戦争が起き、一度は文化の崩壊の危機を招いた。しかし、私のAIは少数だろうが、多数だろうがリーダーになることはできないが、組織をまとめることができるスキルである。団結力を持たせるかたちで私のAIは貢献することができた。

 しかし、時代は繰り返し、植民地戦争が勃発すると私のAIはあっけなく、肉体を失い、現在は、ジアという女性名で外交官を務めている。私の魂も適合したのか、現在はその女性の肉体を用いて、私は活動することができた。マネジメント力を活かして生き残ることができてほんと良かった。

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 『なんて失礼な人なのかしら』

 今日は我が国の陛下記念館の開館式に、実効支配をしてあまり友好関係でないトーナラ国の皇子がやってくる。私はトーナラ国との最高外交官として務めているので、式辞を述べることになった。ここで、我が国をアピールし、いつか一矢報いるんだと強気の姿勢を見せなければ今後の我が国の命運は左右される。

 私にとっては本当に重要なことなのに・・・やはりトーナラ国の人間は傲慢なのだ。あそこの帝は私達を力でねじ伏せようとしている。それの血がつながった息子なら手袋外して、退屈そうに時計を見る態度もうなずける。相手がそんな態度を取られるのなら私は悔しいが、賛辞を省略していくしかない。私は内心では涙を浮かべながら、端正に準備した文章を床に落ちしていく。

 「省略いたします。この国とさらなる発展をお祈りいたします」

 私はそう述べた後、さっさと踵を返した。

 ああ、私とんでもないことしてしまった。

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 「なんて事をしでかすんだ」

 自宅に戻るなり、お父様は怒鳴り声を上げる。今日の失態をお怒りになっているのである。

 「とにかく、まだ他所へ出発する前に謝罪してこい」

 しかし、彼は皇子。あまりに過密なスケジュールだと話には聞く。

 「とても無理ですよ、そんな。まずどうやって出会うのですか」

 私もあの失礼な態度に内心腹を立てていることを心に留めながら反論する。正直、あんな人とは二度と関わりたくない。

 「何とかするしかないだろ、うちの名誉に関わる」

 結局、この人は名誉のことしか頭になく、なんの提案もない。私の肉体になってる部分にAIを埋めこようと思ったのも、キョウルナラ国の実施する「人類AI化計画」の成功例の情報を見て、赤ん坊だった状態から埋めて適合させた。そして、落ちぶれた我が家系の発展のためにやろうとしている。

 頭も身体も不自由になったのだから、さっさとご隠居すればいいのに。

 しばらく口論をしていると、ドアからノックがかかる。

 「先程の件で大公殿下がお呼びです」

 先程の後ろにいた使用人だろうか、ものすごく青ざめている。

 「よかった。ちゃんと謝罪をしてこい」

 お父様は余裕が無いのか、とにかく私をさっさと大公殿下に合わせようとして無理やり部屋から追い出した。

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 大公殿下は、わざわざ外交の時間をずらしてまで私と会う時間を用意した。

 正直、ここまでする理由がお互いに無いのが事実。正直、逢い引きさえ疑ってしまう。

 「私は陛下記念館の開館式の件をまず謝罪したい」

 大公殿下は私を見るなり、深々と頭を下げたのだった。 ? 頭を下げる。それは現在の時代特にの風習じゃないぞ。

 「そちらの国ではそのような謝り方が正しいのですか?」

 私はすぐに質問した。彼はしまった、という顔をして。帽子を取り、片膝座りで謝罪をした。

 しまった、という顔つき。そして冷静に考えると時計を見る仕草が・・・私の彼に似ている。生き別れてしまったロウンに。

「あなたって、昔の記憶がありますか?」

 私は現在の課題を忘れて彼のことを聞いてしまう。

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 瞳、髪の色、肌の色、身長など、全てにおいてジアンと違うはずなのに。どうして、そんなに聡明なのだろうか。私は噴水で会ってからひたすらドギマキしていた。思わず、昔の私の時代謝罪の仕方をやってしまった。しかし、彼女にはどうもそのやり方に見覚えがあるらしい。もしかしたら、彼女は本当にジアンなのかもしれない。

 「あなたって、昔の記憶がありますか?」

 なぜ彼女はそんなことを聞くのだろう。しかし、私はこの質問に応えることこそが最も大切なことだと感じた。

 「はい、私はAIによって、ロウンという男の方の潜在意識をもって生きています。」

 すると彼女は涙を浮かべ、こう述べた。

 「私の間違いでなければ・・・私はAIによってジアンの魂が宿っています」

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 私たちが、拉致以降生き残り続け、そして再び出会えたことに喜びを隠せなかった。私は思わず彼を立場も関係なく抱きしめていた。

 「まさか出会えるなんて嬉しい」

 「私もだよ」

 お互いに抱き合いながら会話をする。とはいえ、周りには彼の警護役がいるので流石に接吻は控えているが。

 「決めたよ。私は君を妻にする」

 私はそのままプロポーズをされた。もちろん私は何も考えずにokしたのである。

 「では、今日の夜から外交で出発でも大丈夫?」

 私はただ、喜びで満たされこう答える。

 「はい、もちろんです。ともに昔のように人生を謳歌していきましょう」

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 「話が飛びすぎじゃ・・・」

 お父様は完全に頭を抱えている。

 しかし、私はもう決めてしまったのだ。この赤い糸の運命からは逃れることなど無理だ。

 「そもそも、身分上でいったら違反になる・・・本当にそれで良いのか?」

 お父様は諦めながらも最後の質問をする。

 「はい、もちろんです。私は今日ここを出ていきます」

 そう答えると、「そうか」と涙を流す。私はお父様を抱きしめる。

 「今までお世話になりました。お父様。私はこの家に生まれて本当に幸せです」

 「わしも最高の娘に恵まれた。遠い血でも元気で、そして厳しい試練があるだろうが、諦めるんじゃないよ」

 この先、もしかしたら未来永劫お父様にお会いすることはないかもしれない。

 涙を浮かべながら、皇子の待つホテルへと向かった。

 次の日の一面にニュースを載せようとするマスメディアについては、厳重に行わないように圧力がかかる。職場では、突然のことに皆、ぽかんとしたそうだが、すぐにおめでたいことだと喜んでいたそうだ。

 車の中から見える、青い空、白い雲そして、太陽の光はいつにもまして暖かさを感じるのである。

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