第159羽♡ レッツ・シンキング・タイム!

  

 『陰キャでいつも冴えない俺、この度北欧系金髪碧眼ハーフ美少女とめでたくルームメイトになりました。なおクレームは一切受け付けません。そこんトコロよろしく!』


 ノーラさんの出した条件をラノベ風にするとこんな感じになる。

 ちょっとタイトルが長いかな? まぁいいか。


 それにしても……


 あぁ良い。

 凄く良い。

 

 ベリーベリーグッド&マーベラス&チョベリグ!(死語)みたいな感じぃ?(平成ギャル風)?


 ウチの学園の生徒どころか、日本中の男子高校生全てが敵になりそうだけど、そんなの関係ない。


 相手はあの前園凜だ。

 ルームメイトになる事を断るヤツなんてこの世に存在するのだろうか?

 

 美少女ってだけでなく、性格も良いし、勉強もできるし、スポーツ万能だ。

 

 全生徒が沈黙する購買部の神秘カリブ風カニみそクリームパン好きだったり、たまに天然なところもないわけではないが、その辺も全部ひっくるめて、前園の良いところだと思う。

 

 ……女の子とふたり暮らしってどんな感じだろう?

 

 しかも同じ部屋にずっといたらと思うと……ドキドキが止まらなくなりそう。

 

 着替える時は、当然後ろ向いてないとダメだよな?

 

 でもそのうちに……

 

 『緒方も男だし気になるのが普通だろ? 恥ずかしいけどさ、ちょっとなら見ても良いから』

 

 とか言ってくれたり……。

 

 お墨付きを貰った以上は見ないのは失礼だ。


 3秒?……いや、ちょっと短い、なら5秒?……うーん、もう一超えで……では15秒くらいが妥当か。

 

 運動神経の良い男子高校生が100mを軽く走るくらいのタイムだし、これくらいなら前園はきっと許してくれるだろう。

 

 『ふーん。オレの裸は15秒の価値しかないんだ。へ~』

 

 ちょっと待って! 妄想上の前園さん!?

 そんな訳ないじゃん!

 

 出来る事なら穢れなき心と魂で、世界が終わる一コンマ前まで、そのお姿をガン見していたい。


 でも15秒以上その麗しいEカップ(以前前園さんが自白)と滑らかな腰ラインを見てたら鼻から大量出血して、世界が終わるまでどころか、すぐに天国への階段を全力で駆け上がる事になる。

 

 『でもさ中尾山で一緒に温泉に入った時は15秒以上見ただろ』

 

 ……はい、見ましたね。

  

 不慮の事故とは言え、お互い一糸まとわぬ姿で温泉に入りました。

 

 その節は大変お世話になりました。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

 ………………

  

 …………

  

 ……

 

 じゃね――よ! 

 やっぱ見ちゃダメだろうが!

 

 と言うか、さっきから前園さんの裸体の事ばかり考え過ぎだ。

 これはいけない。よろしくない。

 

 よし!

 心を入れ替えて真面目に考えよう。

 

 家を出て、前園とふたり暮らししたら、我が緒方家はどうなる?

 

 家事をやる人間がいなくなり敢え無く家庭崩壊。愛する義妹もどきのリナは、食べる物がなく遠からず餓死。

 

 親父は今も部屋から出てこないし、恐らく生きているとしか言えないが同様に餓死。


 世界の中心ではない東京片隅で起きた、ある家族の不幸は、北欧系金髪碧眼ハーフ美少女にうつつを抜かす俺の罪としてSNSで拡散後、世間からは大バッシングされる。俺は学園を自主退学の上、大切なルームメイトを愛の住処に残し、俗世から夜行列車で逃亡する。

 

 やがて行きつく世界の果てにある名もなき無人島で、女神からチートスキルを付与され、異世界無双する日々だけを夢見て俺はそれでも生きるが、待てど暮らせど、女神の導きはなくそのまま老衰、土に還る。

 

 緒方霞 享年109歳。

 

 ただただごうが深いだけの人生だった。乙

 

 

 ~~~緒方霞無人島サバイバル編GOOD END~~~


 エンディングテーマ「緒方君の足が臭い365の理由」 

 作詞、作曲、歌:宮姫すず







  


 

 ……って全然GOODじゃなーい!

 

 

 そもそも俺と別れた後の前園はどうなる?

 異世界転移して聖女デビューとか!?

 

 まぁ前園の場合、聖女になっても全く違和感がない。

 

 ……っていかん。

 

 さっきからどうも発想が飛躍し過ぎる。

 リナを置いたまま、前園と別で暮すのは現実的に難しい。

 

 そもそもかわいい義妹もどきのお世話ができないと、俺は三日後に吐血してストレス死する。

 

 それに誰がリナのおパンツとおブラを洗濯する?

 俺しかいない。誰にも譲らん。

 

 でも、リナも洗濯はできないわけじゃない。

 

 ……と言うことは、おパンツ&おブラお洗濯問題はさほど重要でもないか。


 でも家を出て、前園とふたり暮らしをしても、たまには洗濯したくなるだろうな。

 もはや趣味みたいなものだし。

 

 あ、そっか。

 前園さんのおパンツとおブラをたまに洗濯させてもらえば良いのか。OKOK~

 

 でも、どうやってお願いする?

 

 『趣味なので前園さんのおパンツとおブラを洗濯させてください』は流石に変態発言過ぎると思う。

 

 うーむ……

 

  

 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 

 「おーい緒方」

 

 澄んだ蒼の瞳が目前に迫る。

 

 「はっ? 前園どうした?」

 「どうした? はこっちの台詞だよ。20秒ほど唸っていたけど大丈夫か?」

 

 俺の隣には前園、テーブルを挟んで向こう側にはノーラさんがいる。


 109歳までの壮絶な人生を回想していたからか、多くの時間が流れたように感じる。だが老舗お寿司屋さんでノーラさんが、問題のルームメイト発言してから20秒ほどしか経っていないらしい。

 

 「……あぁ、大丈夫」

 「何か唸ってたけど」

 

 「実は前園のパン(ツ)……いや、何でもない」

 「ん? オレのパン? 刹那にも言ったけど、最近は緒方がお弁当を作ってくれるから購買のパンは食べてないよ」

 

 「そうだったな、はっはっは」

 「? 変なの」

 

 前園が怪訝そうな顔をする。

 それを見た俺の背中に嫌な汗がどっと流れる。


 良かった……都合の良い方に勘違いしてくれて。

 

 娘さんのおパンツとおブラの事を考えていたなんてノーラさんには死んでも言えない。



************************

いつもありがとうございます。


宜しければこちらもお願いいたします。

以前投稿した緒方君とリナちゃんのお洗濯のお話です。


・優しいだけのお兄ちゃんは今日もJK義妹パンツを手洗いする!

https://kakuyomu.jp/works/16817330665632669777

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