第107羽♡ 非公式生徒会
――7月12日木曜日 午後8時40分。
20XX年度第29回非公式生徒会WEBミーティング。
出席者は副会長1名、議長1名、会計1名、書記1名、広報1名、庶務1名、監査2名の計8名となる。
なお副会長ポスト本来2つだが、1つは現在空席、そして会長は本日は欠席のいない。
「メンバーは揃ったようだね。では議長始めて貰ってもいいかな」
副会長の一声で10分遅れのミーティングが始まる。
「はい、それでは20XX年度第29回非公式生徒会WEBミーティング開始します。本日の議題に入る前に皆さんに報告することが二点ございます。
まず一つ目ですが、昨日7月11日
抑揚のない声をした議長は淡々と事実を読み上げる。
普通に聞けば年頃の少女の声をしているが、出席者は全員音声加工ソフトでヴォイスチェンジしているため地声ではなく、少女の声の主は実は少年かもしれない。
非公式生徒会のミィーティングは必ずリモートで行われる。
メンバー同士は会うことはない、そもそも互いの顔も本名も知らない。
「それは喜ばしいですね」
少年の声をした会計は嬉しそうにそう告げる。
「はい、全て我々のシナリオ通りです。念のための確認ですが監査A、ルール違反はありませんでしたか?」
少女の声をした広報は会計の意見に同意しつつも監査Aに疑問を呈する。
「はい、放課後の天使、癒しの天使ともに違反は確認できていません。それから緒方霞も」
少年の声をした監査Aは広報は即座に広報の疑問を否定する。
「それは良かったです。堕天使遊戯のルールに背けば罰を与えなければならない。それが我々の本意でなくても」
「個人的な感情を挟むのをやめたまえ広報、我々はそうしたものに囚われることなく黙々と仕事をこなせばいい」
それまで黙っていた書記が広報に苦言を呈する。
以前より神経質なところがあり、他の非公式生徒会役員からは堅物であり柔軟性に欠けると思われている。
「しかしこれで”放課後”と”癒し”にとって緒方霞の存在は無視できないものになった。彼女たちはこれでふたりだけの箱庭に戻れない」
「そうですね……残るは二翼か」
「7月31日の堕天使遊戯終了期限に間に合うでしょうか?」
「それは緒方霞の努力次第だね」
「どうなるか楽しみです」
「あぁ」
「もう一つ連絡事項のですが、最近我々非公式生徒会を探っている者が増加傾向にあります。先日秘匿性の高い電子掲示板にばら撒いていた
先ほどと同様に相変わらず抑揚のない声で、議長は事務的に連絡事項を読み上げる。
「ほう……辿り着いたのは例の第三新聞部かね?」
「はい第三新聞部もですが……学園内の名もなき同好会、三条院女学院、
「なるほど……だが偽装に引っかかっている内は問題ではないな。
我々の本丸には辿り着くことはできない、仮に辿り着いたとしても私としては一向に構わないがね」
「そうですね。我々は失うものなどありませんし」
「霧の先にある深淵を見て絶望する……ただそれだけのことさ」
「えぇ」
一同はしばらく沈黙する。
他の役員達も緒方霞を客席から笑って見ていられるほどの余裕はない。
「すみません……
「あぁ構わないよ監査B」
「先日の緒方霞との勉強会後にステータスが安定し傷は塞がれたと我々は判定しておりますが、この判定結果に疑問があります。そもそも彼女が本気なら今回の堕天使遊戯は成立しませんでした」
「……そうだね。だが我々は彼女にルールを課し、ひとり勝ちしないようにした上で堕天使遊戯にキャスティングしている」
「仰る通りです。そして月明かりの天使もルールには従っている。しかし……」
「監査B、どうにも腑に落ちないところがあるようだね。監査A、月明かりの天使は君の担当だが、直近で何か怪しいところはあったかね?」
「いえ、特に確認できておりません副会長、強いて言うなら何もないところが怪しいですね」
「……なるほど、証拠も根拠がなければ我々も手の打ちようがない、だが監査ふたりの意見を無視して良いものだとも私は思わない。月明かりの天使については新たに首に鈴を付ける。皆はそれでいいかね?」
「「「「「異議なし!」」」」」
監査ふたりと副会長を除く他賛成多数で即席案は可決される。
「さて……次に動きそうなのは
「学業だけでなく、スポーツ、音楽、武道とあらゆる方面に才能を見せ、若干15歳で経営者としても名を馳せる天才ですね」
「彼女の去った三条院はどうかな?」
「いまだに復学を求める声が多くあります。白花では最強最悪の天使でも、中等部三年間で封建的だった三条院に様々な改革を行った聖女ですから」
「お手並み拝見といこうか」
「はい、ところで本日会長は欠席ですが、どうかされましたか?」
「いつも通りだよ。腹が減ったから欠席と言っていた」
「……相変わらずですね」
「我々では計り知れないよあの方は。いつも自由な翼で空を駆けている。それこそ天使達のようにね。そして我々を統べるのはあの方しかいない。……さて残課題の審議も進めようか」
「はい副会長」
時刻は午後九時を回ったところが非公式生徒会のミーティングが続く。
役員達は互いのことを何一つ知らないまま……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます