第102羽♡ 恋と憧れ
「そうだよ……わかってた、だってオレは誰よりもすずのことを見てきたから」
前園はこれまで秘めていた想いをゆっくりと語り始めた。
「すずは初めて会った時に運命だと思ったって言ってけど、オレも同じだよ。出会ったその瞬間からすずは特別で憧れになった。
これまで見た誰よりも綺麗で、穏やかな笑みを浮かべてたのを今も忘れない。
オレがクラスの奴らと揉めたあげく
あの時は、本当に悲しかった。
なんてことしてしまったんだろうって……
元々オレは長い髪が大嫌いでいつ切ってもいいやって思ってから、たまたま切ったのがあの時だっただけなのに、オレの髪がかわいそうだってすずは泣いてくれたよな。オレも部室に散らばったすずの綺麗な髪がかわいそうで結局、ふたりで大泣きして……
すずはいつもオレのそばにいてくれた
いつも欲しい言葉をくれた
すずがいないとオレはダメなんだよ……
オレだけは見ててほしい……
でも不安だった。
いつかオレを置いて、どこかに行ってしまうんじゃないかって。そんな思いに
去年の白花祭で、オレたちが舞台で交わした言葉が答えなんじゃないかって思った、ようやくゴールが見えたと気がして嬉しかったよ。
ふたりで話し合えば、この先も手を取り合って歩いていけるかもって……
でも冬星館であの日オレがヘマをしたせいで……それも難しくなった」
言い終えた前園は同時に悔しそうな顔をする。
「冬星館のことは凛ちゃんのせいじゃない……忘れ物を部室に取りに戻ったら急に豪雨になって、わたしたちは雨宿りをすることにしたけど、スマホやかばんも教室に置いたままだったし、部室が冬星館の一番奥あったせいで管理人さんに気づかれないまま入口の鍵をかけられてちゃって……窓ガラスからなら外には出れたけど、激しい雷のせいでわたしたちは動けなくなり一晩過ごすことになった」
前園は雷にトラウマがある。
俺と中尾山に登った時も途中で雷雨に巻き込まれ、我を失うほど怖がっていた。
「あの事を境に学園内ではすずとオレは互いに距離をとることを決めた。
良くない噂が学園中に広がって抑えることは無理だった……中にはオレたちが心中を
「わたしね凛ちゃんを独り占めしたくなるの。そばにいると気持ちを抑えるのは難しい。だったらこのまま距離を方が良いって、 それに噂は立ち消えになったわけじゃない、高等部に上がってからあまり耳にすることもなくなったけど、何かのきっかけでわたしたちを脅かすかもしれない」
前園はちゃんと宮姫を思っている。
宮姫は前園のことを思って距離をおこうとしてる。
互いを大切に思っているのに、このままだとは距離が埋まらない。
このままではいけなんだよ前園、宮姫……
ふたりはそばにいて良いんだよ。
「なぁ……前園は宮姫に憧れてた。憧れてたから宮姫に追いつきたいと願った。
宮姫は前園のことを大切に思っていた、その想いは恋だと思った。
ふたりとも互いを大切にしていた。
ずっとそばにいたいって思ってたんだよな!?
ほんのちょっとのすれ違いだけじゃないのか!?
ただそれだけだろ?
ふたりが願うのは本当に『憧れ』や『恋』なのか?
それよりも大切なのは、そばにいることじゃないのか?
互いが隣にいること以上に大切なことなんてあるのか!?」
俺は外野でしかないかもしれない。
でも、このままでは余りにもふたりがかわいそうだ。
「そうだね緒方君……いつかわたしはお凛ちゃんにとって必要なくなると思った。だから心を縛ることができれば、ずっとそばにいられると思った。それが恋だと思った。でもどこかで間違たのかもしれない」
「すずと対等な存在になれば、この先もずっとそばにいられると思ってた。でも自分の気持ちが上手く言えなくて、すずはずっと悩んでたのに分かってあげられなくてずっと傷つけてきた。
オレの憧れになんかならなくていい。
すずお願いだからそばにいて」
「うん……凛ちゃんはわたしの恋じゃなくいい、そばにいてほしい」
「ごめんなすずすけ……」
「お凛ちゃん……ごめんね」
ふたりはそれまで溜まったいたものが一気に決壊したように抱き合い大きな声を上げて泣いた。
俺はふたりが泣き止むまで見守った。
こうして前園凛と宮姫すずは雪解けした……
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