第57羽♡ 調査! 調査! 調査!
「水野、広田ちょっといいか?」
モップ会のない水曜日の昼休み、俺は校舎中庭にふたりを呼び出した。
教室にはいつものように楓や前園がいる。できればふたりがいないところで話がしたい。
「で、どうした緒方?」
いかにもなインテリ風の広田が眼鏡の位置を整えながら尋ねてくる。
「休み時間に
「俺たちより緒方の方がふたりのことを知ってる思うが」
外観は爽やかイケメンで、中身は残念な水野が穏やかな口調で言う。
「最近のふたりのことじゃなくて、中等部時代の前園や宮姫についてだ」
「俺らが知ってることなんてたかが知れてるぞ。それで良ければ」
「頼む……」
「わかった」
水野と広田は、前園たちと同様に中等部から白花学園に在学している。
俺の知らない時代のふたりを知っている。
そして俺が遠慮なく声を掛けることのできる貴重な男友達。
ふたりとも変人なのが残念だけど。
「俺は中一と中三の時、ふたりと同じクラスだった。水野は?」
「中二の時だな」
「前園と宮姫のふたりは三年間同じクラスだ。
あのふたりは親友同士、とても仲が良かったな。
まず前園だが、中等部出身者は男女関係なくほとんどの同級生が憧れてたと思う」
「すごい人気があったってのは聞いたことがある。でも何が凄かったんだ?」
「前園は三年間クラス委員長だった。
普通中学生になると、冷めた感じになるだろ。
クラス委員長なんて
立候補するやるヤツなんてまずいない。
前園も推薦で嫌々クラス委員長に選ばれたんだが、
とにかく手際がよくて、仕事ができた。
どんな問題でも真摯に向き合うし、学校行事は先頭に立つ。
大きな声を出して、屈託なく笑ってクラス全員を引っ張って」
水野も続く。
「俺が同じクラスになった時もそんな感じだったな。
情熱があるだけでなく、前園には人を惹きつける魅力がある。
容姿が良いのもあるが何より天性の明るさと謙虚な人柄だな。
前園が頑張るなら自分もやらなければって気分になるんだ。
理想的なリーダーだったと言える」
「すごいな……」
広田が苦笑いで続ける。
「中等部時代に前園に出会えたのは幸運だったよ。楽しい時間が過ごせた。
次に宮姫だが……前園の
前園の決めたことを宮姫が実行レベルに落として黙々とこなす。
頭の回転が速くて、周りにも的確に指示を出す。
普段から運動も勉強もできるし友達も多い、優秀で華のある女子だった」
水野も広田の意見に同意するようにうなづく。
前園の宮姫の良さは知っているつもりだ。
中等部時代にはふたりとも出来上がってたようだ。
「お前らは最近の前園と宮姫をどう思う?」
「緒方はあのふたりに微妙な距離があることを言ってるのか?」
「あぁ」
水野と広田の表情がとたんに曇る。
「……中等部出身者としては残念に思っている。あのふたりには恩があるからな」
「俺や広田だけでなく、皆気にしてると思う。どうして今の様な状況になったのかはわからないが」
「やっぱ知らないよな……」
「あぁ残念だが。
中等部時代は教室だけでなく、放課後もふたりだけの美術部で一緒だった。
前園は宮姫を気に入っていたし、宮姫も同じように見えた」
「俺が知ってるのはこの程度だ、水野、他に何か付け加えることはあるか?」
「……いや」
「大した情報もなくすまんな緒方、後はそうだな……中等部出身であのふたりと仲が良かった女子に聞けばもっとわかるかもしれない」
「あいにく俺の周りに気安く聞ける女子はいないよ。楓やリナたち以外の女子と話すのは、委員会の時くらいだし」
「なら……ふたりをよく知る女子を紹介してやろう」
「ん?」
広田はスマホを取り出すとRIMEで誰かにメッセージを送る。
五分ほど待つと黒髪を左右二本に束ね、おさげにした女子がやってきた。
「良助……何? こんなところに急に呼び出して。
あれ? 水野君と緒方君!? ちょ、ちょっと三人であたしに何するつもり!?」
「……心配するな何もせん。それより
「あ~そう言うことか、ふ~ん、それにしてもこれはこれは……
おっと、初めましてだよね緒方君? あたしは一年D組の
凛ちゃんとすずは中等部時代から付き合いだよ。
ついでにそこの広田良助の彼女をやってる」
「なに~!?」
俺が声を上げると、広田が恥ずかしそうに視線を落とす。
こいつ、まさかとは思うが照れてるのか?
前園たちの過去を聞く前に、北川さん発のびっくり情報で俺はくぎ付けになった。
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