第25羽♡ 堕天使遊戯
今日のノルマを終え、公園を後にした俺と宮姫は、夜道を歩きながら話をする。
「前園のことだけど……俺から先にいいか?」
「どうぞ」
「宮姫と前園は元々親友同士なんだよな。どうして距離を取ろうとするんだ?」
前から気になっている。
今日もそうだったけど前園が宮姫に話しかけると宮姫は避ける。
中等部時代ふたりはとても仲が良かったらしい。
でも俺が高等部に入学してからはふたりが楽しそうに話しているところを一度も見ていない。
「ボタンの掛け違いみたいなものだよ。別に喧嘩してるわけじゃないし」
「前園はさっきも寂しそうにしてたぞ」
「今はこうするの一番いいと思ってる、詳しい理由は言えないけど」
「じゃあいつか仲直りするんだな?」
「……それはわからない、勝手なお願いかもしれないけど、お凛ちゃんと出かけるなら絶対に彼女を傷つけないで」
こんなにも前園の事を気にかけてるいるのにどうして?
宮姫は誰かとぶつかるタイプではなく、人当たりが良く友達も多い。
高校入学時、知り合いがいなかったリナは宮姫と同じクラスになったことで、かなり世話になったらしい。さくらも同様で宮姫とは上手くやっている。
「わかったよ……俺にとっても前園は大切な友達だし、変なことは絶対にしない」
必要以上に宮姫や前園のことに介入することはできない。
だけど、できれば仲良くしてほしいと思う。
「知ってる限りだけどお凛ちゃんが学校の男子とふたりで出かけるのは初めてだよ、校内で知れたら大事件だよ。
もちろん緒方君と出かけること自体、『天使メール』のシナリオに沿った可能性はあるけど」
「……だよな。そう考えるのが自然に思える」
『天使メール』は白花学園非公式生徒会から天使宛に送られてくるシナリオのようなもので、メールを受け取った天使はシナリオ通りに行動しなければならない。
天使たちは俺と同様、秘密を握られており、背けばバラされてしまうかもしれない。本人の意思と関係なく非公式生徒会に従うしかない。
「でも緒方君が『天使メール』で貰ったシナリオを解決の糸口になるかもしれないし」
「そうだな」
俺が非公式生徒会から『天使メール』は五月のゴールデンウイーク明け、つまり今年の天使同盟メンバーが発表された日と同じだった。
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Subject:天使メール
こんにちは緒方霞
こちらは白花学園高等部非公式生徒会です。
おめでとう!
あなたは明日から始まる堕天使遊戯のメインキャストに選ばれました。
明日から天使たちとの素敵な学園生活が始まります。
シナリオ:
七月三十一日までに天使達の傷を塞ぐこと
・癒しの天使 宮姫すず
・櫻花の天使 赤城さくら
・気ままな天使 高山莉菜
・月明かりの天使 望月楓
・放課後の天使 前園凛
期限までに目標が達せられない場合、あなたは大切なものを失います。
ルール:
・天使たちと非公式生徒会や天使メールについて話をしてはいけない。
・堕天使遊戯について外部に公表してはならない。
・非公式生徒会のシナリオを書き換えてはならない。
・パートナーである癒しの天使と一緒に問題を解決しなければならない。
・癒しの天使と会った日は必ず彼女とキスをしなければならない。
それでは素晴らしい学園ライフを!
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このバカげた「天使メール」だけなら、悪戯だと思い無視していた。
次に届いた「天使メール」には誰も知るはずのない俺の秘密が書かれており、無視することができなくなった。宮姫も同じだった。
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Subject:天使メール
こんにちは宮姫すず
こちらは白花学園高等部非公式生徒会です。
おめでとう!
あなたは明日から始まる堕天使遊戯のキャストに選ばれました。
天使名:癒しの天使
明日から白花学園高等部天使同盟十二天使一翼として素敵な学園生活が始まります。
シナリオ:
緒方霞と一緒に七月三十一日までに天使達の傷を塞ぐこと
・癒しの天使 宮姫すず
・櫻花の天使 赤城さくら
・気ままな天使 高山莉菜
・月明かりの天使 望月楓
・放課後の天使 前園凛
期限までに目標が達せられない場合、あなたは大切なものを失います。
ルール:
・他の天使たちと天使メールについて話をしてはならない。
・堕天使遊戯について外部に公表してはならない。
・非公式生徒会のシナリオを書き換えてはならない。
・パートナーである緒方霞と一緒に問題を解決しなければならない。
・緒方霞と会った日は必ず彼とキスをしなければならない。
それでは素晴らしい学園ライフを!
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今日は六月九日、期限の七月三十一日までは一か月以上時間はある。
今のところ『天使達の傷』が何を指すのか見当も付かない。
ルールに接触しないように、それとなくリナや楓に気になっていることや悩みがないか聞いてみたことがある。
だけど、ふたりからは事態の解決に繋がるような回答を得ることはできなかった。
それに天使たちのと言うなら目の前にいる宮姫も『傷』を抱えていることになる。
『堕天使遊戯』が始まってから、宮姫と協力して非公式生徒会に繋がるものがない色々調べたが、今のところ目ぼしい成果はない。
ひょっとしたら、シナリオを解決するには普段と違うことをしないといけないのかもしれない。
前園とふたりで出かけることも、何か意味がありそうだ。
「ところで本当に前園と出かけても良いんだよな?」
「わたしが止める権利はないよ、緒方君がお凛ちゃんに変なことしないか心配だけど」
「そこは信じてもらうしかない、でも宮姫がどうしても俺のこと信用できないなら出かけるのを止めるよ」
「じゃあこうする……緒方君が今回の件をやり遂げたら緒方君を信用する」
「え~今の段階で信じてくれよ~」
「無理~だって緒方君いつもいやらしいもん」
一緒に住宅街を歩く宮姫の表情は暗くてよく見えない。
でも少しだけ笑っているように感じた。
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