第3羽♡ よく鍛えられた義妹もどきは爪を隠さず
リビングから廊下へと続くドアがバーン!と開き、悪の巨頭もとい我が妹様が焼き鳥の串を咥えたまま姿を現した。どうやら俺がアルバイト先と通話中に学校からご帰還されてたようだ。
「あのなぁリナ、人のものを勝手に食べるのは感心しないぞ」
「兄ちゃんのものはわたしのもの、わたしのものもわたしのもの、そしてわたしは兄ちゃんのもの、だから何の問題もない!」
リナはジャイアニズムをさらに飛躍させたトンデモ俺様理論で小生意気にも反論してきた。
「いや俺の焼き鳥が食われた現実は変わらないから問題あるだろ」
「ふっ、焼き鳥の一本なんて小さな事だぜ兄ちゃん! それよりわたしがいない間にめんこい女の子を二人も連れ込むとは~どういう了見だ?」
「昼前にRIMEでふたりが家に来るって連絡したら、お前「りょ!」とか返してただろ」
「あ、そうだった。いらっしゃい~楓ちゃん、凛ちゃん」
「てか今更挨拶かよ!」
「お邪魔してます。リナちゃん」
「うぃー妹ちゃん……今日もかわいいね。こっちにおいで」
「はい~きゃうう~凛ちゃん良い香りがシマスるるる♪」
「ホント……食べちゃいたいくらいにかわいい」
イケメン少女にハグされたリナはまるで子犬のように甘える。……その光景はまたしても尊い。前園さんやあなたやっぱ百合なの? 楓だけじゃなくてリナも狙ってるの? これは波乱の展開ですわお姉様! お姉様って誰だよ?
リナこと
そしてリナも白花学園高等部天使同盟一翼「気ままな天使」
天然茶髪のショートボブ、クリっとした瞳で構成される小動物のようなビジュアルは一言で言うとかわいい。勉強はできないし部屋の片付けもできない、唯一の特技は運動で、基本は食っちゃ寝の我がまま姫だけどかわいい。リナは世界一いや宇宙一かわいい妹、正確には妹でも義妹でもない「義妹もどき」だけど。
「俺の分を食べなくてもお前の分の焼き鳥も、ちゃんと前園が買ってきてくれたんだけど」
「な・な・な・なんと……!? 部活が終わったばかりでお腹ペコペコだったし、わたしだけ仲間はずれにされたと思ってつい……兄ちゃん、さーせんでしたぁあああ!」
三つ指をついて深々とお辞儀をする義妹もどき、姿勢だけは真摯だった。
と言っても簡単に信用してはいけない。
「お前あんまり反省してないだろ」
「そんなことないよ兄ちゃん。はっ! ひょっとしていつものようにわたしにえっちい罰を与えたいのか? なら仕方ない。ふたりが帰った後、好きなようにしていいよ。でも最近あちこち敏感だからさ……や・さ・し・く・ね」
顔を上げたリナはウインクをする。あざといとか全部通り過ぎて、うざっ! この妹マジうざっ!
しょうもない発言を聞いて吹き出す楓、前園は腹を抱えて笑っている。
「アホなことを言ってんじゃね~ぞ、いつもえっちい罰なんかしてないわ~」
俺は在らぬ疑惑を即座に否定した。前園はともかく楓から発せられる負のオーラで室温が一気に下がった気がしたからだ。無言で笑顔なのも怖い。
「あれ違った? じゃあ兄ちゃん、お詫びは脱ぎたてパンツにしとく? それとも脱ぎたてブラ?」
「いらんわ。そんなもん!」
「なんとぉ~!? ひょっとして楓ちゃん凛ちゃんのを合わせた三人分のブラとパンツを? 兄ちゃんさすがにそれは
「下着の話から離れろ~!」
脳内ピンク色おバカ妹のしょうもない会話が終わらない。誰か助けてくれ!
「楓、オレたちもパンツとブラが獲られるみたいけど今日は勝負できるやつ?」
「え? いつでも準備はできてるけど……じゃなくてそんなの駄目に決まってるじゃない!」
「兄ちゃんにパンツ獲られても、わたしの未使用品をふたりに進呈するから大丈夫だよ……ブラは楓ちゃんのスイカと凛ちゃんのメロンはわたしの夏みかん用じゃ収まらないからノーブラで」
「スイカ……ブラは無し……」
「それは困った。緒方におっぱいのカタチばれちゃうかも」
楓は言葉を噛み締めるように呟くと耳の先まで湯気が出そうなくらい真っ赤になり、恥じらいの表情を浮かべる。前園は身をよじり胸を両手で抑え、上目遣いで俺を見つめたまま怪しく笑う。
あぁ神様なんと言うことでしょう、この前十六歳になったばかりなのに女神様のようにナイスバデェな親友とやたらえっちぃエロフ様がここにおられます。目の前に広がるお胸様ファンタジー浪漫を心より感謝いたします。令和~年六月某日、平凡な男子高校生代表緒方霞。
「だ~か~ら何で私たちの下着をカスミにあげる事が決定になってるの!?」
珍しく大きな声を出す楓、すまない……うちのおバカ妹には後で健全な教育的指導をするから許してくれ。
「しかしこの兄妹、仲がいいよね……少し妬ける」
半笑いでつぶやく前園。仲がいいのは認めるが違うんだこれは……
「ねぇ私は小論文書くの終わったけど、カスミと凛ちゃんはまだ小論文が残ってたよね?」
「うん。そうだね」
「そろそろ続きをやる?」
「いや、残りは家でやるよ。そこの兄妹のイチャコラを見せつけられた後にすぐに書ける気がしない」
「そうだよね~はぁ」
楓は深いため息をつく。勉強するのって雰囲気大切だよね、イチャコラはしてないからね。
いつの間にか午後五時に迫り窓の向こうは暗くなり始めていた。早く小論文の続きをやらないと思いつつ俺も前園と同様にすぐに続きを書ける気がしなかった。
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