第18羽♡ 天使たちの高速SNS詠唱
午前中の授業が終わった昼下がりのカフェテリアで俺と天使同盟メンバー五人は間近にいるにも関わらず、第三者に聞かれるの防ぐためグループRIMEでやりとりしていた。
高校生のスマートフォン操作はおそらくどの年代よりも早い。
まるでファンタジー世界で魔術師が操る高速魔法詠唱のようにメッセージは次から次へと入力され飛んでくる。
さくら「別にいいじゃないかしら? カスミ君と前園さんが少し遊びに行くだけなら」
前園の問いに対し、開口一番でさくらがポーカーフェイスのまま全員にメッセージを送ってきた。
筋さえ通せば、他の女の子と出かけるとしても気にしないってことかな。
楓「そうだよね。わたしもいいと思う。少し遊び行くだけだよね」
続いて楓からのメッセージが届く。
こちらは肯定的なメッセージとは逆に「反対する理由がないから了承するけど、納得はしてない」と顔にはっきり書いてある。
……楓が嫌がるなら行きづらいな。
すずすけ「緒方君が途中で体調不良とか適当な理由をつけて前園さんを無理やり『二時間ご休憩七千円』の
よくわからないけど」
『すずすけ』というのは宮姫すずのRIMEネーム。
そう言えば、さっき前園が宮姫のこと『すずすけ』って呼んでたな。
……ん?
それより宮姫がとんでもない事をぶっこんで来たんだけど……。
さくら「すず、心配しなくてもクソザコなカスミ君にそんな度胸はないわ!」
前略さくら様、どうかポーカーフェイスのままクソザコとか言わないで下さい。
でも仰る通りワタシにそんな度胸は微塵もないです。
リナ「兄ちゃんがクソザコヘタレなのは妹のわたしが保証する! 昨日の夜は何もなかったし(泣)」
顔を伏せ、わざとらしい嘘泣きをする義妹もどき、しかも『クソザコ』から『クソザコヘタレ』にさり気なくレベルアップさせてる。
昨日の夜も一昨日の夜もいつも何にもないんだから誤解されるようなことを言うんじゃね――!
楓「疲れた時は二時間でも三時間でも多めに休憩した方が良いじゃない?」
楓はリナの『昨日の夜は~』の下りをスルーした。
それともスルーしたわけでなく気づいてない?
しかも休憩時間延長とか、事態を悪化させるようなこと言ってるし~!?
リナ「一時間延長キター! 楓ちゃん、ここでいう『ご休憩』は休憩とは名ばかりでハードワークのことだよ!
でも三時間はちょっときついかも……凛ちゃんが昇天しちゃう!
子供のわたしにはよくわかんないけどね……(テレ)」
天使だけに昇天ですか?
……上手い! 義妹もどきに座布団一枚!
じゃねーわ!
楓に変な事を吹き込むんじゃね~!
あと、どこでそんないかがわしいことを憶えてきた?
兄ちゃんは非常に悲しいです(泣)
楓「ふたりはスポーツジムに行くの? だとしてら水分補給だけはしっかりね!」
楓さんや……。
リナの言うハードワークは運動のことを言ってるんじゃないからね~
隠語みたいなものだよ。
でもそのまま勘違いしててね……。
リナ「俺カスミ 前園よ水分補給はお前の口から直接頼むぜ!」
ちょっと待てや義妹もどき~!
勝手に俺の発言を捏造してるんじゃねーぞ!
というか兄ちゃんをそんなキモいキャラ設定せんどいて~!
すずすけ「ケダモノ、ゲス、変態紳士、今すぐ四散して!」
宮姫さんや……。
あなた、わざとリナの戯言に乗っかってボクのこと、
仕方ないので耐えますが、せめてその害虫に向けるような視線だけは止めてもらえませんか?
どうかお願いします~。シクシク
でも昨日前園さんと望月さんが家に来た時、ほんの少しだけえっちぃ目で見ちゃったのは認めます。
どうもすみませんでした。
さくら「カスミ君には当日手錠と目隠し猿ぐつわで移動してもらうというのはどうかしら?
前園さんの身の安全は保障されるわ」
さくらが
ちょっと待て!
俺はそんな怪しい姿で休日の大田急線に乗らないのいけないの?
前園の身の安全が保障される代わりに緒方霞の人としての尊厳がゼロかマイナスになりますよ。さくらたん!
リナ「さくらそれいい! でも
妹よ……その妙なこだわりは何?
俺は休日に手錠と目隠しをされ、あげく木馬に乗ったまま電車に揺られ鞭打たれるの?
怪しさだけが右肩上がりで急上昇なんですが~。
楓「木馬? カスミと凛ちゃんはスポーツジムじゃなくて遊園地に行くの?
でも水分補給を忘れないで」
楓さんや……本当に何にも知らないのね。
ずっとそのままの純粋な楓のままでいておくれ。
ところで、どうしてそんなに水分補給に
お凛ちゃん「ねぇ緒方『二時間ご休憩七千円』じゃなくて、せめて『二時間ご休憩八千円』くらいにしてくれないかな、その方がアメニティが充実してるよ。よく知らないけど」
無言だった前園さんキタ~!
……ってツッコむところソコっすか?
ご休憩はいいの!?
お値段が七千円から八千円に上がるとそんなにアメニティが違うの~!?
「皆さ、緒方には厳しいよね~何を言っても大丈夫って安心があるからかな。
心配しなくてもちょっとだけ気分転換に付き合って欲しいだけだよ。
変な事は絶対ないって約束する」
前園がそう告げると白熱したRIMEグループトークは終わった。
気のせいだろうか……。
皆を見つめる前園凛の笑顔はいつもと同じようでどこか違うように感じる。
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