第9話 新たな生活の始まり
AR-7の扱いにも慣れ、銃と言う存在に慣れつつあったミラとマイ。そんな2人に俺は、新たな武器としてサブマシンガンのVz61スコーピオンとハンドガンのスタームルガーMkⅢを贈った。そしてその銃の威力を実戦で試すべく、俺たちはゴブリンを探して森の中を進む。
森の中をそれぞれの武器を手に、四方を警戒しながら歩いて行く。やがて。
「ッ」
不意に、何か聞こえた気がして俺は足を止め、咄嗟に左手を握った状態で掲げた。それに気づいたようで後ろの2人の足音が止まる。
「どうしたのよ?」
「何か音が聞こえた気がした。2人とも、警戒を怠るな」
「……OK」
「はいっ」
2人とも静かに頷く。
「周囲を警戒しつつ進む。周りに気を付けろ」
「言われずとも、分かってるわよ。マイ、行くわよ」
「うんっ」
俺たちは警戒心を強め、それぞれの武器を構えたままゆっくりと進んだ。しばらくすると……。
「ッ、獣臭いわね。それにこれ、血の臭い?」
ミラが真っ先に気づいて周囲の様子を伺っている。俺も足を止めて臭いを確かめるが。確かに臭いな。僅かに、だが獣の臭いと血の臭いだ。
「近いな。2人とも、行くぞ」
「えぇっ」
「はいっ」
血の臭いがするって事は、近くで戦闘があった証だ。警戒しつつ、最初に聞こえた音の方角へと進んでいく。すると、風の音や鳥のさえずり、風に揺れる枝の音に交じって聞こえてきた、ゴブリンどもの声。
「ゴブリンの声だな。近いぞ」
俺の声に2人は無言で頷く。慎重に音を立てないように、声がした方へ近づいていく。
すると、見えた。前方、少し離れた所で無数のゴブリンたちが何やら騒いでいた。
「見えた。前方にゴブリンの群れだ」
「数は?」
一旦足を止め、木陰で体を隠しつつ様子を伺う。俺の報告を聞くとすぐさまミラが問い返してくる。
「詳細な数は分からないが、10匹、いや15匹は下らないな。大型の獣、熊でも仕留めたのか?大きな動物らしい影の周りで騒いでるな」
「どうします?かなりの数ですけど」
マイが俺の様子を伺いながら問いかけてくる。どうするか。
幸い、今の俺たち3人はフルオート射撃が可能な武器を備えている。2人も銃にはある程度慣れてきている。加えて奴らは油断している。なら……。
「仕掛けるぞ」
「……やるのね?」
「あぁ」
俺の言葉を聞くと、ミラが静かに、しかし緊張した様子で問いかけてくる。傍に居るマイも緊張しているのか表情が強張っている。
「今の俺たち3人なら、恐らくあの程度の数ならやれるはずだ。もう少し近づいてから、一斉射で先制攻撃を仕掛ける。……出来そうか?」
「はっ、上等っ」
「分かりました……ッ!」
2人に不安や恐れがあるのなら、あのゴブリンたちとの戦闘を避けるべきか?そう考え問いかけるが、ミラは狂暴な笑みを浮かべ、マイも覚悟を決めた様子で頷いた。なら問題ないな。
「よし。じゃあもう少し接近するぞ。音を立てないように、ゆっくり俺についてこい」
「「えぇ(はい)……ッ!」」
2人が頷き、俺たちは静かに進んだ。木や茂みで体を隠しつつ進んでいく。
そしてある程度距離を詰めると、状況が分かって来た。ゴブリンどもの数は見える範囲で約16匹ほど。だが奴らの傍には大きな熊が転がっている。俺たちと熊を挟んだ反対側に居る可能性もあるから、20匹はいると観るべきだろう。だが……。
「よし、ここまで近づけばいいだろう」
既に俺たちは奴らに対して20メートルとは離れていない。どうやら奴ら、獲物をしとめて舞い上がってるな。周囲を警戒しておらず、熊の骸の周りでギャアギャアとはしゃいでいるだけだ。
「タイミングは任せる。2人が撃ったら俺も射撃を始める。それと、一気にマガジン全部撃ち切るなよ?」
「えぇ、分かってるわよ」
ミラは頷きつつ、木の影で立ち上がり、半身とスコーピオンを覗かせながら頷く。更にマイも、傍の茂みから膝立ちの姿勢で狙いを定めている。よし。
俺も2人からメートルほど距離を取った所の木陰から狙いを定める。狙われているとも知らずにな。
そして。次の瞬間銃声が響いた。指切り射撃による疑似バースト射撃だ。短い連射音が1回。直後にもう1回。
ミラとマイが撃ち始めた。まずは最初の射撃の効果を見る。放たれた複数の銃弾は、ゴブリン2匹を撃ちぬいた。短い悲鳴と共にゴブリン2匹がその場に倒れたっ。
『ギャッ!?』
『ギャギャァッ!!?』
他のゴブリンどもがすぐさま騒ぎ出す。粗雑なこん棒や槍、剣を手に周囲を仕切りに見回している。だがその場から動かないのは銃に対して悪手だっ!
「そこだ……ッ!」
2人の射撃の効果も確認した俺はすぐさま射撃を開始した。バースト射撃による短い連射音が複数、森の中に響く。そしてその都度、ゴブリンたちが1匹、また1匹と銃弾に倒れていく。
「ッ!撃ち切ったっ!リロードするっ!」
「うんっ!カバーするっ!」
ミラの声が響き、それを支援するようにマイがバースト射撃で制圧射撃を行う。その隙にミラは空になったマガジンを落とし、新たなマガジンを装填。後退していたボルトを軽く引いて解放。ボルトが前進し初弾が装填される。
「OKよっ!」
「私もリロードするねっ!」
ミラがリロード完了の合図としてマイの方を左手で軽く叩く。それを合図にマイもリロードの動作に移った。
『ギャギャッ!』
『ギィアァァァァッ!!!』
と、その時。いい加減銃声とマズルフラッシュで気づかれたか。ゴブリンどもがこっちを見ながら騒いでいる。そして、ついにこちらに向かって駆け出してきたっ。
「来たぞっ!こっちにたどり着く前に撃ち殺せっ!」
「分かってるっ!」
俺たち3人による一斉射。雨あられと放たれた22LR弾と32ACP弾による弾幕は10匹以上いるゴブリンたちを次々と撃ち殺していく。
「リロードするッ!」
順調に数を減らすゴブリンども。後5匹くらいまで減った所で、俺は叫びながら、空になったマガジンを捨て、新たなマガジンを装填。ボルトリリースレバーを押してボルトを前進させた、その時。
「カイトさんっ!右から新手のゴブリンがっ!」
「何っ!?」
聞こえてきたマイの叫び。見ると俺たちから見て右側、3時の方角からゴブリンどもがこん棒を手に向かって来ているっ!?新手っ!?それとも回り込まれたのかっ!?
どうするっ!?咄嗟に判断を下そうとした、その時。
「カイトッ!右から来たのは私とマイで迎撃するからっ!アンタは前の奴らをっ!」
「ッ!任せたっ!」
短いやり取り。時間を掛ければそれだけゴブリンどもに接近される。だからこそ、新手のゴブリンはミラ達に任せた。
「マイッ!」
「うんっ!迎撃、するよっ!」
2人はすぐさま、射撃目標を切り替え射撃を開始したっ。よし、俺はっ、こっちだっ!
「来やがれおらぁっ!!!」
雄叫びを上げながらの射撃。サイト越しに見えるゴブリンどもに向かってフルオートで弾を数発撃ちこんでいく。ゴブリンどもは、俺たちに近づく前に次々と倒れていった。
短いゴブリンの悲鳴がいくつも聞こえては消えていく。
『ギィアァァァァァァッ!!!』
最後の1匹が俺とあと数メートル、というところまで近づいたが。それだけだ。
「ラストォォォォッ!!」
最後の1匹目がめて、マガジンに残っていた弾をすべてぶち込んだっ。最後の1匹は、それこそ映画で集中砲火を受けた登場人物のように、手足をギクシャクと振りながらその場に倒れこんだ。
っしっ!これで最初に見つけた群れは倒したっ!俺は素早くマガジンキャッチボタンを押し、空のマガジンを捨てて新しいマガジンを装填。ボルトリリースレバーを押し、ミラとマイの方に向き直った。
「ミラッ!マイッ!」
「大丈夫よ」
俺が振り返った時には、既に2人とも新手のゴブリンを退け、丁度リロードを行っている所だった。
ミラはスコーピオンの銃口を下げ、左手でサムズアップをしている。マイもその隣で安堵したように笑みを浮かべていた。
「2人だけでどうにかなったか」
俺も、2人の無事な姿を見て安堵し、思わず息を漏らした。
「当然よ。って言っても、スコーピオンの弾数の多さと連射力に救われたわ。おかげで接近される前に私とマイの一斉射で軽く倒せたし。ね?マイ」
「うん。AR-7だったら、ちょっと危なかったかもね」
「そうか」
2人の会話を聞きつつ、内心スコーピオンを渡しておいて正解だったな、と安堵した。ともあれ。
「ナイスだったぜ、2人とも」
俺は笑みを浮かべながら左手の拳をミラの方へ突き出した。
「ッ。ふふっ、当然っ」
それを見たミラは一瞬驚いた後、自信に満ちた笑みを浮かべながら左手の拳を突き出し、俺の拳とコツンと軽くぶつけ合った。
「マイも、助かったよ」
「い、いえっ!これくらいならっ!」
更に拳をマイの方に向けると、マイはミラと違って少し恥ずかしそうに顔を赤くしながらも笑みを浮かべ、優しく拳をぶつけてきた。
ははっ、こういうの、仲間内でやるのって結構憧れてたんだが、結構嬉しいもんだな。
「さっ、さっさと耳を回収しましょう。血の臭いで狼とかが来たら事だしね」
「おうっ」
「うんっ」
ミラの発言に俺とマイは頷き、俺たちは手分けしてゴブリンどもの耳を回収した。
回収した耳の数は、新手も併せて20を軽く超えた。耳を回収した俺たちは、一度その場を離れ、適当な所でリュックに入っていた空のマガジンを取り出し、手早く弾を装填した。さっきの戦闘で思った以上の数のゴブリンを相手にして、皆マガジンを2本以上消費したからな。
「ふぅ、弾の補充はこれで良いとして、この後はどうする?」
弾込め作業も終わった後、俺は2人に問いかけた。
「もう少しゴブリンどもを狩るか、それとも戻るか。2人はどっちが良い?」
「私としては、もう少しゴブリンを狩りたいわね。稼げる時に稼いでおきたいし。マイはどう?疲れた、とかだったら無理はしないけど?」
「ううん。私は大丈夫だよ。まだまだいけるよ」
マイは大丈夫、と言って微笑んだ。無理をしている様子、ではないな。なら行けるか。
「そんじゃ、もうちょっとゴブリンどもを狩って行きますか」
「えぇっ」
「はいっ」
その後も、俺たちは森の中を探索し、ゴブリンの群れを見つけるとこれを討伐していった。最初の20匹程度に加え、5匹ほどの群れを3回見つけて討伐。合計40匹近いゴブリンを討伐した俺たちは耳を回収し、森を出た。
「ん~~~!大量大量ッ!」
森からの帰り道、ミラが満面の笑みを浮かべながらぐい~っと伸びをしている。
「ホントだねミラちゃん」
その隣でマイも嬉しそうに笑みを浮かべていた。2人とも、大量にゴブリンを討伐した事を喜んでいるようだ。まぁ、討伐数の多さが報酬の額に直結するんだ。無理も無いし俺も嬉しい。
「どうする?今日は大漁だったし、報酬を貰ったらどこかでパ~ッと食事でもするか?」
「あっ!良いわねそれっ!」
「そうだねっ。あ、折角だから私たちのパーティーが正式に決まったんだし、その記念に、なんて思ったんだけど、どうかな?」
「良いじゃないそれっ!」
俺の提案にミラとマイは嬉しそうに笑みを浮かべている。
「よ~し決まりだな。じゃあ町に戻って報酬を貰ったら、パーティー正式結成のお祝いも兼ねて、ぱ~っと食事しようぜっ」
「賛成~♪」
俺の言葉にミラは楽しそうに笑みを浮かべ、マイもその隣で笑みを浮かべていた。
という訳で、俺たちは町に戻りギルドへ直行。無事、報酬を貰う事が出来た。
「うっし、報酬も貰ったし、早速店探すか?」
「そうねぇ。混みだす前に店入っちゃう方が良いだろうしね。あ、マイはこれ食べたい、とかってある?」
「うぇっ!?き、急に言われてもな~。何だろ~」
そんな他愛もない会話をしつつ、3人してギルドを出ようと出口に向かった。だが……。
「あら~?誰かと思ったら弱虫女と無謀女じゃない♪」
「「「ッ!!」」」
今の状況で聞きたくない声が聞こえた。俺もミラもマイも、それぞれ息を飲み、表情を強張らせる。
っくっ!こっちは良い雰囲気で食事に行きたいってのにっ!最悪だっ!これでミラがいつぞやみたいに怒り出したら、折角の良い雰囲気が台無しだっ!ここは、口論になる前にミラ達を連れだすべきかっ!
そう思った、その時。
「何よ。言いたい事はそれだけ?」
何とミラの奴っ、この前と打って変わってただ、うざったそうに息をついてそう漏らすだけだ。
「み、ミラ?」
「悪いけどこっちは用事があるの。アンタらとお喋りしてる時間無いのよ」
ミラは俺の言葉を無視した形となっているが、怒っている、という感じではなかった。
「ほら行くわよ、マイ、カイト」
「お、おぉ」
「う、うんっ」
戸惑う俺とマイに振り返って声をかけ、歩き出すミラ。俺とマイは困惑しながらも彼女に続いた。が……。
「待ちなさいよっ!」
どうやら黙って俺たちを見過ごす気はないようで、あの女が声を張り上げた。その表情は、相手にされていない事に苛立ちを感じているようだった。俺は素早く、あの女の取り巻きと、周囲の様子を伺う。周囲の他の冒険者たちはこっちを見て、俺たちと関わるのを恐れてか距離を取っている。
あの女の取り巻き達は、声を荒らげたボスに戸惑っているようだ。
「アンタ、大して強くも無い癖にッ!強気で居られるのも今の内なんじゃないのっ!?どうせその強がりだって、その男が居るからでしょっ!?でも、アンタみたいな金にがめつくて、向上心ばかり強い無謀な短気女と臆病女、すぐに捨てられるんじゃないのっ!?」
負け惜しみ、だな。口ではミラとマイを罵っているが、その表情には焦りが見えていた。前回とミラの反応が違うから戸惑っているのか?ってか、それほどまでミラを怒らせたいのか?まぁ良い、今はとりあえず、成り行きを見守りつつ、右足のホルスターに収めたM1911A1に手を伸ばす。
いざって時は、威嚇射撃でも出来るようにな。まぁ、ギルド内部でぶっ放すのは避けた方が良いだろうが。背に腹は代えられない。
ミラとマイ、あの女とその取り巻きに動向に注視する。
「……そうね。確かにアタシはお金にがめついかもしれないし、向上心とかも強い上に短気なのは認める。それがアタシの欠点だって事もね」
ッ、ミラの奴どういうつもりだっ!?こんなセリフ、下手をすれば相手のあの女を調子づかせるだけだぞっ!
そう考えた直後。
「でもね」
ミラは何やら不敵な笑みを浮かべ、次の瞬間俺の左手を掴んできたっ!?なんでっ!?と思った矢先。
「こいつはそんなアタシの短所を受け入れて、その上で一緒に旅してくれるって言ったのよ。ね?カイト」
「あ、あぁ」
突然話を振られ、しかもいきなり手を引かれた事にも驚いて、俺は若干しどろもどろになりながらも頷いた。するとその答えに満足したのかミラはフッ、と自信に満ちた笑みを浮かべた。
「こいつとなら、カイトと、マイとアタシなら、一緒に上に行けるって分かったのよ。だからもう、アンタたちに固執していちいち目くじら立ててる場合じゃないの」
「ッッ!」
自信に満ちたミラの表情。対照的に、怒りに満ちた表情を浮かべる女。
「そう言うわけだから。ほら行くわよ、カイト、マイ」
「あ、おいっ」
俺の腕を引いて歩き出すミラ。それに続くマイ。
「ッ!ちょっと待ちなさいっ!まだ話はっ!」
あの女が追いかけてこようとした。が……。
「あなた達っ!またギルド内で問題を起こす気ですかっ!?いい加減にしてくださいっ!」
あの女の後ろから女性ギルド職員が声をかけていた。
「ち、違うっ!私は問題なんてっ!」
「言い訳は聞きたくありませんっ!大体今のやり取りだって見てましたけど、あなたから最初に声をかけて煽ってましたよねっ!?」
「そ、それは……」
どうやら職員のお姉さんの方が上手のようだ。女は戸惑い、仲間に助けを求めているが、仲間もギルド側と揉めたくないのか、困惑し何も言えずじまいのようだ。
「ほらカイトッ!行くわよっ!」
「おわっ!?お、おい引っ張るなってっ!」
あの女たちの様子を見つつ歩いていると、強くミラに引っ張られた。結局俺はミラに手を引かれたままギルドを出る羽目になった。彼女がその手を離したのは、ギルドを出てからだった。
「さぁ、美味い料理の店探すわよ~!」
そう言って楽しそうに笑みを浮かべながら先頭を歩くミラ。
しかし、ミラの奴大丈夫か?内心、めっちゃ怒ってるんじゃ?そう思うと、一応聞いておいた方が、良い、のかな?とりあえず聞いてみるか。
「な、なぁミラ。大丈夫か?」
「えっ?何よ急に」
ミラは小首を傾げながら肩越しに振り返った。
「いや、さっきの会話は見てたし、ミラが怒った様子は無かったけどさ。実は内心激怒してるんじゃないかな~、って思ってさ。それが気になってさ」
「あぁ、そのことね」
ミラはそう言って小さく笑みを浮かべた。
「お生憎様、本気でブチギレたらそれを隠していられる程、自制心は強くないわよ、アタシは」
「じゃあ、怒ってないのか?」
「そりゃぁ、あいつらの顔を見たら怒りが込み上げてきたわよ?でもね、あいつらの事はもうどうだっていいのよ」
「どうして?」
俺が問いかけると、ミラは屈託ない笑みを浮かべながら俺とマイの方へ振り返った。
「今のアタシの仲間は、マイとカイト、あんたよ。アタシはこの3人で上に行きたいって思ったの。だから、あんな奴らに構ってる暇もないっての。これ以上構ってやる義理だって無いしっ♪」
ミラは白い歯を見せながら、小悪魔のように『ニシシッ』と笑みを浮かべている。
「まぁ、違いないな」
確かに彼女の言う通りだ。あいつらと関わった所で俺たちに何かプラスがあるとは思えないのも確かだ。
すると……。
「ほら、あいつらの事なんか忘れましょ。今日は正式にパーティーを結成した記念の打ち上げなんだから。そうでしょ、マイ?」
「うん、そうだねミラちゃん」
マイは俺を追い越し、ミラと並ぶ。するとミラは何かを思いついた様子で、少し顔を赤くしながらも、楽しそうに笑みを浮かべながらマイに耳打ちをしている。
「ふぇっ!?そ、それって、恥ずかしいよぉっ!」
「な~に言ってるのっ!こういうのはノリよノリッ!ほらマイッ!」
「ふぇぇぇっ!分かったよ~!」
何やら恥ずかしそうに顔を赤らめているマイ。な、何だぁ?
と俺が内心首を傾げていると、2人が俺に向かってそれぞれ、手を差し出してきた。
「「改めて、これからよろしく(お願いしますっ)ねっ!」」
頬を赤らめるマイと、悪戯を仕掛けた時の子供みたいに楽しそうな笑みを浮かべるミラ。
そんな2人の姿が、とても可愛く見えた。タイプの異なる美少女2人の言葉に俺は……。
「は、はい」
顔を赤くしながら呆然と返事する事しか出来なかったっ!なんだこのラブコメのワンシーンみたいなのっ!?彼女いない歴=年齢だった俺には色々ハードル高すぎるわっ!?……でも結構嬉しい。美少女の2人とこんなやり取りで来たのは初めてだけどやっぱり嬉しいっ!
「ふふっ!カイトったら顔赤くしちゃってま~♪」
「ッ!?う、うるせぇいきなりだからちょっとびっくりしただけだよっ!」
「ホントに~?実は内心嬉しかったりしてぇ?」
「は、はぁっ!?べべ、別にそんな事無いけどなぁっ!」
嘘ですちょっと、いやかなり嬉しかったです。アニメのワンシーンみたいで緊張したし、何なら今も心臓がうるさいですはい。
「え~?ホント~?その割には顔真っ赤だけどな~」
み、ミラの奴楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべながら俺の様子を伺っているっ!し、仕方ないっ!
「そ、それよりほら飯だ飯っ!パーティー結成の打ち上げするんだろっ!ほら行くぞっ!」
「あっ!話題逸らしたわねカイトッ!こら~!待ちなさ~いっ!」
「あわわっ!ま、待ってよ2人とも~!」
恥ずかしさを隠したくて、足早に歩き出す俺を追いかけてくるミラとマイ。
うぅ、これから先、ミラに色々弄られる未来があるのかもしれないなぁ。……けどまぁ、それも良いかなって俺は思っていた。
一人旅よりも、仲間がいた方が楽しいはずだ。
こうして俺は、ミラとマイ、2人と共に旅をすることにした。
そうして俺の、俺たち3人のパーティーが出来た。これから2人とどんな旅が出来るのだろうか、なんて期待が、俺の心臓を高鳴らせていた。
第9話 END
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