❸真っ白な闇
今日は新しい拠点に移った
移動や場所探しをしたから疲れた…
「もう寝よ…クロ…」
ダンボールの上に寝転がろうとすると
路地の向こうから若い男の怒鳴り声が響いて来た
クロの毛が逆立っている
喧嘩か…珍しくは無いけどまずいな…
この場所だと見つかるかもしれない
逃げる場所を探していたら
腕の中に居たはずのクロが居ない
怒鳴り声の聞こえる方を見るとクロがそっちに走っていた
きっとクロは喧嘩を見るのが初めてだったからビックリしてしまったのだ
「まって!クロ!!!」
私が迂闊に飛び出せば…若い男に目を付けられる
私は、、、私は助けられなかった
いや、助けなかった
自分の身の保身のために
しばらくして怒鳴り声が聞こえなくなった後私はクロが行った方に行った
クロは喧嘩して負けた男に八つ当たりをされ弱っていた
「クロ…」
弱っているクロを呼ぶ
「にゃ、…」
弱々しい声が聞こえて私は今更になって助けなかった自分を責めた
「ごめんね…私最低だ…」
もう時間の残っていないクロの最期には相応しくない言葉だった
「にゃーっ!」
弱々しい猫パンチを食らった
自分の事を否定するな、と言われてるような気がした、
そういう事にした…じゃないと自分を許せないから
そういう事にしても私は許せないけど…
クロは震えていた…
「痛いよね、怖いよね…ごめんね。」
「おやすみ…クロ!」
せめて最期は安心させてあげたくて精一杯の笑顔でおやすみを告げた
「にゃ…ぁ……」
安心したようにクロは眠りについた
クロの綺麗な目の光は消えて
あんなに温かかった体温ももう残ってない
私は何日かしてクロを火葬した
どうやって火葬したかも覚えていない
ここ数日の記憶が曖昧だった
骨になったクロはもう黒くない
「クロ…真っ白になっちゃったね…」
「白になってもクロはクロだから大好きだよ。」
こんな事を言ってももうクロには聞こえないのに。
クロの死がもたらしたのは真っ白な闇だった
めすがきちゃんは幸せになれない 星月 猫 @Meronya
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