これが戦争だ。

作者である矢舷陸宏さんの独自の世界観で繰り広げられる、リアリティ重視の戦争ドラマ。
最大の特徴は主人公が、一騎当千の英雄でも何でもない、戦場を駆ける一人の兵士である事でしょう。
「鬼軍」に所属する主人公、ベニキリ・ミキの視点で彼女と彼女の戦友であるアカツキ・アサキの三人を中心に敵味方様々な女性軍人との人間模様、そして彼女らが臨む戦争の趨勢が、時にユーモラスに、時に苛烈に描かれます。
いつ敵が現れるのかも分からない前線で、銃を手にし四方八方に警戒心を張り巡らせる兵士達の緊張感、そしていざ戦闘に突入した時、そこに飛び交う銃弾硝煙血飛沫専門用語兵士達の絶叫…生きるか死ぬかの緊迫感が手に汗握ります。
そんな花形の戦闘のみならず、塹壕や簡素な陣地などの劣悪な環境故に衣食住に苦労したり、たまに訪れる貴重な楽しみを存分に満喫したりと、戦場での「非日常的な日常」にミキ達が見せる喜怒哀楽がほっこりとしつつも哀愁を誘います。
そんな「等身大の女の子」であったミキとその戦友達が、「戦場に生きる兵士」として成長していく様も見どころです。
またこの作中世界では主人公のミキが属するオーガこと「鬼人族」をはじめ、エルフ、コボルト、人間など多種多様な人種が登場し、かなり現実的な作風でありながらファンタジーの雰囲気も味わうことができます。
物語が進む中でこうした鬼軍世界観の様々な設定が開示されていくのも楽しみの一つと言えるでしょう。