Bルート
B 断るように逃げる。
俺は女の手を無視し、路地の奥へと走った。冗談じゃない。猫になっても俺は人間だ。一生狭い家の中なんてたまったもんじゃない。女は俺を追っては来なかった。諦めたのだろうな。
それから俺は何日も一人だった。最後にものを食べた日ももう思い出せなくなっていた。数年後、俺は暗闇の中で息を引き取った。たくさんの虫やネズミの鳴き声が聞こえていた――
――気がつくと俺は布団の中で寝ていた。手も足も人間のそれだった。
「戻れた、戻れたんだ!」
俺は部屋で一人声をあげて飛び上がった。
「うるさい!」
姉が隣の部屋で怒っている。俺にはそれも何だか嬉しかった。
俺はその日、大学に行く途中で、一匹の猫を見かけた。何だかリアルな夢だったな、なんて思いながら手を伸ばす。その猫は一瞬、笑顔を見せたような気がしたが、すぐに生け垣の向こうに逃げていった。
俺はどうやら猫らしい 雪野スオミ @Northern_suomi
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