とある国のとある男の話

@awanoawa

第1話

昔、昔あるところにとても強く優しい男がいました。

幼いころから兵士として育てられ、その強さはこの国で一番の兵士といわれるほどでした。

その男は12歳の夏、初めて自らの目に戦場をうつし、その残酷さを知りました。

目の前であっけなく散っていく、人。人。人。

明日を迎えられるか分からない恐怖。

男は怯えました。

家に帰ってから、たくさんたくさん訓練をしました。

誰にも負けないように。次も生きて帰れるように。

そうして月日はすぎいつしか男は16歳。

国最強と言われるほどになっていました。

戦いの後、王は必ずその男の名を呼びます。

そして男が無事なのを確認すると安心したような顔をするのです。

どんなにたくさん死傷者がでた戦いのあとでも王は言います。

「まだこの男が生きている。この男が生きている限り希望はある。」

その王の言葉を聞いて男は思いました。

自分が死んだら、どうなるのだろうと。

自分が死んだら、この国は戦いをやめるのではないかと。

男は誰よりも強く誰よりも優しかったため、人が傷つくのをみるのが嫌いでした。

人を傷つけることも、殺すことも大嫌いでした。

そして男は思います。

自分が死ねば、仲間が死ぬことも傷つくこともないと。


ある日の朝、塔の下に人だかりができていました。

人だかりの中心には平和を祈り覚めないの眠りについた男がいます。


男が亡くなったことを知った王は絶望しました。

その国はとっくに男なしでは戦える状態じゃなかったのです。


これをきっかけにその国は戦いから手をひきます。

平和を祈りとんだ男の願いは叶い、国には平和が戻りましたとさ。


国にとってはこれでめでたし。めでたし。

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