第3話 バトルのお時間!

-アルテナ草原-


サクラと草原を歩きつつ色々この世界の考察をしたり特殊技能スキルを試したりとお互いに発見した事や、この世界構成の疑問があったら共有して行こうと話していた。


彼女の職業【侍】、戦士系職業の上位職に該当する。

特徴としては装備出来る武器は基本的に「刀」、「小太刀」のみと武器選択幅が狭い。

防具類も軽装備程度、主に剣技を使用した近接戦闘に特化している。


ステータス面では攻撃力と素早さが高く魔力、防御力が低い。

魔力に関しては無いと言っても良い。


特殊技能スキルも刀を使った近距離・中距離の斬撃技、剣を使用する相手への切り返しや白刃取り等の物理カウンター系も有る。

完全な攻撃寄りの前衛、近距離職業。


侍も良いんだよなぁ!

正直私もキャラクタークリエイトの時点では名前を〖武者小路忍むしゃのこうじしのぶ〗にして職業を侍にしようか迷った程だった。


名前が安易とか思うな!名前は考え出すと1時間とか悩んでしまうのだ!

レトロゲームの「俺の●を越えて行け」とか30分に1回子孫の名前入力とかあって、超悩んでゲームが進まないと言うジレンマを抱える程だ。


ちなみに私の職業は【忍者】だ。

忍者は盗賊系職業の上位職に当たる。


魔力・攻撃力は中程度だが素早さ、回避能力に特化している。

暗殺特殊技能アサシンスキルの即死攻撃や特殊技能スキルで罠やモンスター探知も得意だ。


ちなみに忍術は魔力に依存する。サムライと同じく「刀」、「小太刀」に加え「飛び道具」も使える。

防御系装備が殆ど無く一撃が致命傷になりかねないので注意と言った所だ。


ステータスを敏捷極振りにカスタマイズした私に攻撃を当てるのは至難の技だと思うけどね。

特殊技能スキル【影分身】、【空蝉うつせみの術】など素早さにより補正を受ける技が有り、私はラスボスの居るエリア位しか私に攻撃を当てる敵は居ない。


「ねね、サクラPVPとかPKって出来るかな?」


【PVP】=プレイヤーバーサスプレイヤーの略で1対1の対人戦。パーティー戦も有り。

【PK】=プレイヤーキラーの略で主に自分より低レベル帯のプレイヤーを狙った殺人的行為。


モンスターも見当たらないし、【NPC】=ノンプレイキャラも見当たらないので疑問に感じていた。

先ほどお互いに刀を刺した時に確かにダメージを受けた。

当たり前だが武器が刺さると痛い。いや、非現実的な考えが抜けないので頭がモヤモヤする。


「どうでござろうな?ステータスウィンドウが出ないでござるから、何とも」


ゲームの設定ではPVPは街中でも相手の了承を経て行う事が出来る決闘で、例え相手プレイヤーを倒しても犯罪数値カルマが上昇しないがPKはフィールドのみ無条件で相手を倒せるが犯罪数値カルマが上昇する。


犯罪数値カルマが一定以上溜まると「お尋ね者」一覧に掲載される。

頭上に表示されているプレイヤーネームに犯罪者印どくろマークが表示される。


そして懸賞金が付き街中だろうがフィールドだろうが、プレイヤーから攻撃を受ける状態になる。

お尋ね者が倒されると犯罪数値カルマ×10000ゴールド=PKプレイヤーの資産から倒したプレイヤーに支払われる。


倒された方はお犯罪者印どくろマーク表示が消えて犯罪数値カルマもゼロになるが預金・手持ちのゴールドを持っていないとマイナス表示になる仕様だった。


サービス開始当初そのシステムを利用して仲間内で無限に所持金を増やす等の悪行が有ったので、その辺りは細かく修正されたらしい。


「試してみるでござるか?」


「むぅ、痛いのはやだなぁ・・・マジで痛かったし!」


額に刺されただけで痛かったし!リアルな痛みだったし。

腕とか斬られたら意識不明になるんじゃないだろうか?

文字通り私がサクラの特殊技能スキル【居合切り】とか真面に喰らったら上半身と下半身が真っ二つに斬れそう。


・・・怖!超怖いし!一応最上級回復アイテム完全回復薬【ハイエリクサー】は何個か所持してるし、即時復活薬【アナスタシン】も数個持っている。

う~ん、今のうちに試してみるのも有りかも知れない。


「じゃぁ、戦ってみますか!」


「うむ、先っちょだけでいくでござる!」


下ネタに聞こえた私の心は汚れているのだろうか?

いや、サクラの表情を見る限り絶対狙って言ってる。

ゲームとは違いリアルに表情で感情が読み取れるのはリアルだなと感じる。


つーか以前は女性声優ボイスだった時には笑えた会話が、いざ男性の声で下ネタを言われると若干嫌悪感を覚えるのは女性の身勝手な考えだろうか?


気を取り直して、お互いある程度の距離を取り武器を構える。

お互いに真剣を構えて対峙すると、ゲームの時とは違い異常な緊張感が有る。


「行くでござる・・・」


「いつでもどうぞ!」


サクラは摺足から急加速し距離を詰めてきた!侍の特殊技能スキル【縮地】だ!

予測通り!距離を詰めるなら、【縮地】からのニ連撃後大技の一撃が定番。


二連撃をバックステップで回避、忍術【空蝉うつせみの術】で後方に回り込み暗殺系の特技で決める!素早く連撃を回避した所でサクラの特殊技能スキル朧三日月おぼろみかづき】が発動。



特殊技能スキル朧三日月おぼろみかづき】は侍が覚える剣技で、居合斬りモーションからの素早い横薙ぎによる近距離斬撃攻撃。

刀を1度鞘に納める必要が有るが、SP消費で【障壁貫通】【物理ダメージ1.5倍】の効果を得られる。


「もらった!」


刀による近距離広範囲の横薙ぎ技がシノブの脇腹を捉えて切り裂く。

シノブの体が半身に切り裂かれた瞬間に割れた枯れ木で出来た丸太の様な形状の物質に変化する!


サクラの後方ギリギリに表れ耳元で囁くように「残像だ」と呟く!

私カッケー!忍者の即死系の特殊技能スキル鎌異太刀かまいたち】。

頸動脈に小太刀を当てて、そっと冷たく流すように切り裂く。

派手に出血し一撃でサクラは倒れる、そして起き上がる気配が無い。


体力ステータスバーの表示が無いので状態が分からない。

アレ?もしかして私やっちゃいました?


ヤベ、動かない・・・


しばらくするとサクラの体が灰色になってしまった。

あ、これ死んだわ。死んだ時のエフェクトはキャラクターが灰色に染まり、一定時間内に復活アイテムを使用しないとホームポイントに戻される。


この状態は、今まさに目の前でサクラが死亡したのだ。


「ちょっ!まじで!?あわわわわ、復活薬を使わないと!」


あ、有ったポシェットの中に即時復活薬【アナスタシン】を取り出しサクラ目掛けて投げる。

サクラの体が輝き、首元の刀傷が塞がる。

おお、凄い。ゲームでは何気ない光景だったのにリアルで見ると奇跡を体験している様だ。


程なくしてサクラの意識が戻った。


「うう、ひどい目にあったでござる。」


「よ、良かった。サクラぁ・・・死んだかと思ったよ。」


私はホっと胸を撫でおろす。

現実で意識不明の人にAEDを使用するのってこんな感覚だろうか?

蘇生アイテムを取り出す時かなり焦った。

ゲームではショートカットで取り出せる、しかしリアルの感覚だとそうはいかない。


「映画ド●えもん」でピンチの状況で焦った●ラえもんが四次元ポケットからお目当ての道具が出なくてって様々な道具を取り出すってシーンを思い出す、感覚的にそんな感じだった。


「三途の川の向こうでギルマスのミカエル殿が手を振っていたでござる。」


「いや、ミカさんは死んでないだろ!・・・多分」


思わず瞬時にツッコミを入れたけど実際は分からない。

この世界に来ていない可能性も有るし。


サクラの話では致命的なダメージを負った瞬間視界が真っ暗になり、じわじわと首筋が暖かくなり次第に痛みを感じ始め徐々に意識を遠のくのが分かったらしい。

私が何やらしている気配だけはしていた。


その後徐々に体の体温が低下して、すごく寒く感じたが復活薬を使用した瞬間だと思うが、徐々に体暖かくなって目が覚めたらしい。

ゲームでは視界が赤くなり、蘇生がしばらく行われない場合ホームポイントに強制送還される。

リアルで死ぬ様な経験をしたことが無い為審議の程は分からないが明らかにゲームとは違う。


「それが死ぬ感覚なんだね。復活薬があって良かったよ」


「まったくでござる・・・うん?」


不意にサクラの視線が私の頭上を見ている。


「シノブ殿!シノブ殿!上!上!」


なに?なに?顎を上げ上空を見るけど何も見当たらない。


「何も無いじゃん!何かあるの?」


「ああ、頭を動かすと文字が一緒に動くでござる!」


文字?何だというのだろうか?


「頭の上に犯罪者印どくろマークが付いているでござるよ」


サクラが笑いを堪えながら私の頭上を指さしている。

そう、PKをした人間の犯罪数値カルマが一定値を超えて表示される例のアレが私の頭上に表示されているらしい。


「なんでじゃぁぁぁ!」


超納得いかない!これはPVPであってPKではないはずだし!ちゃんと復活させたし!

ちょっとクソ運営呼んで来い!GMコールは何処に隠してあるんだ!


GMコール=GM:ゲームマスター、運営者であるGMに直接連絡する手段。


・・・と、言うわけで私は不本意ながら「犯罪者のお尋ね者」となってしまったのであった。

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