第3話 初めまして?~3~
放課後になり、荷物の整理をしていると、私の机まで貴島君がやってきた。
見上げると爽やかな笑顔で微笑む。
いやぁ、いい笑顔だこと。みんなが騒ぐのもうなずける。
貴島君は自分の荷物を持ちながら、廊下を指差した。
「行こうか、委員会」
「あ、うん」
私は慌てて荷物を鞄にしまい、ちなに別れを告げて貴島君と教室を出た。
委員会が行われる集会室へ肩を並べて歩き出す。
「それにしても、面倒な役になっちゃって大変だね。大丈夫?」
「うん、仕方ないよ。寝てた私が悪いんだもん」
気遣ってくれる貴島君に肩をすくめて答える。
本当、仕方ない。
こればかりは自業自得であり、もうやるしかないもんね。
いつまでもごねていても仕方ない。割り切るしかなかった。
でも、正直学級委員なんてやったことないからどうしていいかわからないのが本音だけれど……。
貴島君はそんなことお見通しなのか、優しく微笑んだ。
「俺、中学時代になんどか学級委員やったことあるから出来る限りサポートするし、心配ないよ。一緒に頑張ろう」
「そうだね、頑張ろう。よろしくね」
その笑顔に、つられて私もへらっと笑顔を返す。
うわぁ~、爽やかだわ。そして優しい!
いい人と委員長になれたみたい。
なにより、頼りになりそうだし……。安心した。
ありがとう!
貴島君の足を引っ張らないよう、私精いっぱい頑張るからね。
ひとり感激していると、貴島君が小さく笑った。
顔を上げると、苦笑している。
「でも、先生もウケるよな。委員会の日に慌てて選ぶなんて」
「本当だよね。忘れてたなんてね」
「まぁ、俺らも忘れてたけどね」
アハハと笑い合う。
委員会が始まるまで、一気にリラックスできた。
貴島君とこうしてちゃんと話すのは初めてだけどいい人みたい。
良かった。
私はホッと胸をなでおろした。
委員会が行われる集会室に到着すると、すでに殆どのクラスが集まっていた。
というか、入口付近に集まっている!?
なぜか集会室の入口に人だかりができていたのだ。
なんでみんな部屋の中に行かないの?
んん? 女子がなんだか色めきだっている?
何事かと首をひねるが、きゃぴきゃぴした女の子たちが興奮気味になっており、状況がよくわからない。
みんなが見ている方を見ようとするが、これまた中がよく見えない。
ん~。困った。
中に入れないんですけど……。
入れず女の子たちの後ろで困っていると、貴島君が私に声をかけた。
「松永さん、どうしたの?」
「あぁ、貴島く……「きゃぁ、貴島君よっ」
返事をしようとした私の言葉にかぶせるように、前にいた女の子たちが甲高い声を出した。
女の子たちは今度は振り返って貴島君を恥ずかしそうに見つめている。
なんだなんだ?
すると中から、「やばい! カッコイイ! 爽やか」「委員やってよかった」「超ついている」などなど、女の子たちの会話が聞こえてくる。
へぇ、貴島君て本当に人気なんだ、と感心する。
本人は聞こえているのかいないのか素知らぬ顔だ。
「今年はついてるね。貴島君にあの春岡君もいるんだもんっ!」
「委員長になって良かったー」
「ドキドキするねっ」
なんて声も聞こえてくる。
春岡君?
聞き覚えのある名前に首をひねると、すぐにああ! と思い出した。
昼間、ちながかっこいいとか話していた人だ。
へぇ、同じ委員長なんだ。
どれどれ、と中をよくみると、コの字型になっている机に頬杖をついた男の子がいた。
各クラスの委員長の席はほとんど埋まっているが、みんなの視線がそこに集まっており、すぐに彼が春岡君だとわかる。
そもそも、一番目を引く存在だからいやでも目についた。
ということは、中に入っていないこの人たちは野次馬か……。
委員会には関係ないけど、中が見たいからみんな入口からみていたのね。
ふむふむと状況に納得して、改めて春岡君を見る。
入口にいる私の位置からだと、彼は廊下側の席に座っているので横顔しか見えないが、なるほど確かに美形だ。
鼻筋も通っており、まつ毛も長く目元も切れ長の二重。少し長めの前髪がなんとも色っぽく見える。
整った顔立ちの正統派イケメンというやつだろう。
へー、と見ていると隣の貴島君がボソッと低い声を出した。
「やっぱり春岡も委員長なんだ」
「貴島君、知ってるの?」
「あ……いや。春岡は入学試験で学年トップだから、嫌でも委員に任命されるだろうなって思って」
「へぇ~」
凄い、学年トップで美形でって完璧なの!?
神は二物を与えたんだなぁ……。
世の中には凄い人もいるもんだな、とのんきに感心していると先生が入ってきたため、慌てて席につく。
入口も閉められ、全員がそろったところで担当の先生が口を開いた。
「じゃぁ、まず、各クラスの委員長の自己紹介をしてもらおうか」
A組の男子委員長、女子委員長と自己紹介が始まる。
あぁ、自己紹介とか嫌だなぁ……。 緊張しいなのに……。
と、ひとりドキドキしていると、小さい歓声が上がった。
な、なにごと!?
驚いて顔を上げると、女子が騒いでいたイケメンが立って自己紹介をしていた。
「1-B、春岡 龍輝(はるおか たつき)です。よろしくお願いします」
低良い声でそう挨拶して、ふっと小さく微笑むと歓声はより大きくなった。
うわぁっ、本当に噂通りカッコイイ!
何、今の笑顔! どこかのアイドルのようだ。
私もつられてドキッとしてしまった。
騒ぎたくなる女の子たちの気持ちがちょっとわかる。
えへへ、良いものみれた気分。
明日ちなに自慢しちゃおう。
得した気分でいると、あっという間に自分の自己紹介まであと少しになっていた。
うわっ、別の意味でドキドキしてきた。
大丈夫大丈夫。
名前を言えば良いだけ。やれるぞ、私!
そう、緊張を抑えるように心の中で呟いて気持ちを落ち着かせていると、不意に視線を感じて顔を上げた。
ん? なんだろう?
辺りを見回してみる。するとじっとこちらを見ている春岡君と目が合った。
視線が合い、思わずドキッとする。
えっと……? 私、春岡君に見られてる?
でも目が合っても、表情変えずにじっと真顔で見られてるってちょっと怖いんですけど……。
今度はその視線に妙にびくびくしてしまう。
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