第4話

 起きた。


 起きた?


 しんだんじゃなかったっけ。彼の目の前で。


 そう。彼の心に、わたしを刻みつけたいと思った。考えた結果、思いついたのはひとつ。彼の目の前で、彼をかばってしぬ。それしかなかった。彼と一緒になれないなら。せめて、彼の心に傷をつけて、一生そこに居座ってやる。そういう、いじきたない私の決意。


 だから。

 彼が私よりも先に。

 しぬことは。

 許されない。


 なのに。私が起きた。なぜ。

 煙草擬き。なぜかくわえている。わたしの煙草擬きは、尽きたはずなのに。


 彼は。


「あぁ」


 言葉にならなかった。


 なんで助けたの。わたしを。


 まって。わたしをひとりにしないで。


 隣で動かなくなっている。彼。

 煙草擬きを彼のくちに突っ込む。ぽとりと落ちた。


「くそっ」


 煙草擬きを、せいいっぱい吸い込んで。

 彼のくちに流し込む。服流煙キス。

 しなないで。ね。しなないでよ。おねがいだから。置いていかないで。

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