第5話

 ここは、横浜の戸塚だった。

 大学生のシュンスケは、いつもゲームをしている。

 これから、JR東海道線で、東京都心まで、シュンスケは、行こうとしている。

 雨が、降っていた。

 そして、そのゲームとは、「ぷよぷよクエスト」とか「ぷよぷよテトリス」だったりするが、時々、戦国武将などが出てくる戦闘ゲームもする。

 シュンスケは、あまり、勉強が好きではない。

 どちらかと言えば、遊び人である。

 そして、気が付いたら、大学に入学してから、東京都心の大学へ行ったが、そこでは、ゲームだけではなく、お酒や女の子とも遊んでしまっていた。

 だが、シュンスケのお父さんは、大学教員である。 

 そして、シュンスケのお父さんは、歴史学の研究者である。鎌倉幕府の源頼朝の研究をしている。

 まだ、新型肺炎コロナウイルス感染症が、大変だった当時、2022年にNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が、放映されていた時、シュンスケは、少しだけ、ドラマを観た。

 それは、お父さんが、歴史学の先生よりも、シュンスケは、源頼朝のゲームが好きだったからだが、それでも、シュンスケは、あまり理解ができなかった。シュンスケは、あまり、勉強が好きではないのだが、だが、鎌倉時代へ行ってみたい気がした。

ーだって、今の時代、冒険ができないから

 と思っていた。

 平清盛とか後白河法皇、源頼朝、北条政子なんて出てきて、そして、イキイキしていると思っていた。

 北条時政なんて「かっこいいじゃん」

 なんて、訳の分からないことを、思っていた。

「偉い奴になればやりたい放題じゃん」

 なんて思っていた。

 更に、2023年になると、NHK大河ドラマでは、『どうする家康』が放映されている。松本潤が、家康役。築山殿は、有村架純。

ーああ、俺も、あんな彼女が欲しいな

 なんて思っている。

 お父さんは、シュンスケのだらしない生活に呆れて

「早く勉強しろ」と言っても、暖簾に腕押しだった。自分だって、お酒をいつも同僚と飲み、浮気をしたから、駄目な親だとも思っている。

 上野東京ラインの快速電車が、来た。

 そして、シュンスケは、ゲームをしながら、車内に入った。

 席に座って、頼朝のゲームをしていたら、眠たくなってきた。

 そして、気がついたら

ーほお~お~ほぉ~お~

 となんか法螺貝のような音が聞こえてきた。

 夢なんだろうか?

 シュンスケは、感じたのだが。

 そこらには、お侍さんが、鎧をつけて、馬にまたがって、ぱっかぱっかと音を立てて、突進している。

 そして、足軽らしき兵隊が、わっさわっさと進んでいる。

 みんな、槍とか刀を持って、走っている。

「これから、頼朝殿がいる三嶋大社まで行くぞ!」

「おー!」

 なんて言っている。

 三嶋大社?

 いや、三嶋大社なら、箱根を超えて、静岡県だったけ?

 なんてシュンスケは、思った。

 その時、顔が真っ黒になっている足軽の男が、シュンスケに

「ほれ、おめえも、これから、三嶋大社へ行くんだぞ」

「え?」

「え、じゃないわい、明日までに三嶋大社へ行くのじゃ」

「は?」

「平家を倒すためじゃ」

 よく思ったら、シュンスケの身体にも、鎧が被さっている。

 そして、シュンスケも気が付いたら、鎧やら兜で身体が重くなっているのに、気がついた。

 さっきまで、JR東海道線に乗っていたのだが、どうなっているのか?

 さっき、源頼朝の名前が出てきたのだが、また、何か、おかしなドラマのエキストラになったのか?うちの大学にもマスコミ研究会があったけど、こんなに面白いセットだったっけ?

 うちのお父さんは、そもそも、時々、関西の大学へ行って、出張でテレビ局に出ているのだが、それなら、せめて教えてほしかった。いや、これは、本当か?とも思った。もし、そうなら、新垣結衣ちゃんに会いたいなとか思っている、シュンスケは。

 一応、シュンスケは、自分の顔を「パチン」と叩いた。

 ああ、オレは、まだ生きている、と思った。

 「おい、もうすぐ、鎌倉だぞ」

 と誰かが、叫んだ。

 だが、足軽で走っているシュンスケは、この今の状態は、焦げ臭いやら埃臭いやらと思った。

 ゼエゼエ息を切らしながら走っている。

 鎌倉まで来たら、JR横須賀線があるじゃないかとも思った。

 そして、初めて、高校時代、彼女とデートをしたのも、鎌倉だった。

 その時、新垣結衣に似た由香と付き合って、初めて、一緒に、パスタを食べた。だが、帰りの横須賀線で、由香は酔って、車内で吐いて、優しい言葉を掛けなかった。

 そんな思い出があって、切なくなった。

 自分が、遊び癖が治らないのも、そこが、トラウマだったかも。

 農家が見えた。

 そこに一人の娘が、農作業をしている。

 新垣結衣に似ているすらりとした目がくりっとした娘がいた。

 そして、シュンスケは、そこで、走っていたら疲れて、腰を下ろした。

 そのまま、シュンスケは、その新垣結衣に似た娘を観ていたのだが、その時、ついシュンスケは、彼女に声を掛けて、「こんにちは!」と言った。

 挨拶をした瞬間に、ピカッと光が来て

ーガタンゴトン

 と電車の音がした。

 前に、たまたま、由香が座っていた。

「あれ、シュンスケじゃん」

「おう」

「さっきから、ゲームの音が鳴りながら、寝ていたよ」

「うん」

「だらしない」

 そう言いながら、由香は、ずっとシュンスケを観ていたのだった。

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