第4話 脱出計画の策定
それからの私は
私は相変わらずこの屋敷の主人に乱暴された。何人もの女を侍らせ、私を足蹴にしながら他の女を抱く最低のクズだ。その男の名は
携帯端末やPC等の使用を許されていなかったが、私にはユズハがいるので不自由はしなかった。
ユズハ自身が通信機能を持つPCとして使用できたからだ。私は人間と違ってキーボードもモニターも必要ない。私のCPUと接続するだけでどんなタスクも遂行することができるし、また、その詳細もモニターを介さずに把握できる。
私はこの屋敷の全てをハッキングした。そして屋敷内のあらゆる設備を掌握し管理下に置いた。ハウスAIとそれに連なる防犯システム、TVや冷蔵庫などの家電製品。家事アンドロイドや警備アンドロイド、そして私の他にもいるセクサロイド。五台ある自家用車と、屋敷に出入りしているあの男の会社のリムジンまで、ほぼ全ての物を。
「菜緒さん。今、この屋敷の全ては私の管理下にあります。あの男を殺そうと思えば、事故に見せかけて実行する事も可能です」
「殺人は感心しませんね。私たちは安全確実に逃げ出すことができればそれでいいのです」
「そう言われると思っていました。そこで、脱出計画を立てたのですが、如何ですか」
私は菜緒と見つめ合う。
お互いの鼻が触れ合う位の距離で。
傍から見れば、今にもキスしてしまいそうな雰囲気だがそうじゃない。私の両目と菜緒の両目の視線が一致した時に、私の両目から赤外線で情報が送られる。ネットも電波も使わない光通信は、私たち二人だけの秘密を共有する事になる。ほんの少しの時間だが、私は菜緒と一体化したかのような恍惚感を味わった。
「これは面白そうですね」
「はい。狙いはあの男が女を連れてくる週末です。少し小細工をして火星連邦軍でも呼びましょうか?」
「なるほど。警察だけだと証拠を揉み消されるかもしれませんからね」
「連邦軍が絡むなら適当な事はできませんから。軍と警察って仲が悪いですし」
「そうね。お互い面子を保たなくてはいけないから、必死に手柄を立てようとするでしょうね」
伝統的に軍と警察は仲が悪いものらしい。火星においては各都市に都市警察が設置されおり、中には軍と警察が良好な関係を築いている都市もある。しかし、ここ火星連邦首都オリンポスにおいて軍と警察の関係は最悪だ。いつ乱闘事件、発砲事件が起きるか分かったものではない。それが賭けの対象になっているくらい険悪な関係なのだ。
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