最終節 竜の話
それからというもの、ガスプは何度もおれの住む洞窟を訪れてくれた。もちろん、従者付きで。おれを相談役としてガスプは王子として急成長を遂げ、王となった。おれの語る数々の
この半島もそうだが、そこから拡がる隣国の多くは魔族を敵とする宗教を支持していて、子のゴルージャ、孫のドラノクと代が続くうちに、そうした勢力を単純に敵国として切り捨てるには、無視できなくなっていた。親子三代に渡って王国の発展を語り、おれを楽しませてくれたガスプージャ家だったが、その話を聞いて、おれの方から彼らを突き離した。洞窟は大岩で塞ぎ、二度と王国の者が入ってこれないようにした。そうしてからも、外に出る日課以外、おれは毎日を同じように過ごしたが、決して退屈することはなかった。ガスプとその息子達の
「陛下。ここにある書物は――?」
「燃やせ」
多く血を失い、流石に竜であろうと意識の朦朧として来たおれの耳に、ガスプージャの当代オムグムとその従者の、そんな会話が入った。おれがガスプにもらった羊皮紙に書いた物語のことを言っているんだろう。
マジか。おいおいやめてくれよ。誰に見せるものでもなかったけれど、そう簡単に焼却を決められると口から乾いた笑いが漏れた。
だが――。こうして思い返してみても、悪くない一生だった。きっとコトプァが生き、ガスプが拡げたこの地は、これからも大きく発展していく。その全てを見ること敵わないのは残念ではあるが、仕方がない。
「安らかに眠れ、竜よ」
意識を失う直前にそんな言葉が聞こえて来た。それがオムグムのものだったのか、それともおれが最期に聴いた幻聴だったかは定かではない。
だが、こうしておれという竜の
fin
竜語りのサーガ 宮塚恵一 @miyaduka3rd
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