第五話 ヤケで上げたテンション
「っつはあぁっぁぁぁぁぁ!?!?」
の、乗せられた! 乗せられたぞ!
聖剣抜いちゃったし!
……元通り突き刺したし、大丈夫か。
聖剣というよりは呪剣とか魔剣の類だろアレは。
数多の命を奪いし剣とか聖なる力宿ってるわけないし。
あんな剣に宿ってるものはきっと呪いとか怨念だろう。
などと考えていると村人の一人、ガタイのいい男性が近づいてきた。
その上俺の後ろに回り込んで手を抑えてきた。
「んな!? なんだよ……俺が聖剣突き刺したの怒ってんのか?」
俺は少し戸惑いつつも、そう質問をする。
「いいや違うぜ。はいせーのー!」
おん? 俺の手の上から剣を握って? 上方向に力をかけて?
ずっ。
あっ。
聖剣抜けちゃった。抜けちゃったよ。
聖剣ってこんな簡単に抜けるもんなんだ……。
もう誰でもよくね?勇者。
「よし! これで戦えるな!」
「よし! じゃねぇーーーっ!!! 俺は戦う気は無えぞ!? 負けても知らないぞ!?」
「イヤ、イケルヨ。イケル。カテルッテ、ユウシャダシ。」
「とても信用できない話し方しだした!!」
なんなんだその話し方は!?
急に変わったし結構ビビったぞ!?
ってか戦うって何と?
なんも聞かされてないし……。
気になった俺は質問した。
「なぁ。突然聞くけど、戦うって何と?」
そう言ったとたん、村人全員の視線が俺に集中した。
「.....え? 俺なんかしました?」
「よく言った!」
「え?」
村の人たちがどんどん俺の周りに集まってくる。
「相手を聞いたってことは戦う気はあるということよね?」
「え? え?」
「お前なら戦ってくれると信じてたぞ!」
「え? え? え?」
「本当にやってくれるんだな!」
「ちょっと待ってくんない!?」
俺やるとは一言も言ってないんだけど!?
「貴方に戦ってもらうのはこの街を襲っている魔物の群れよ!」
はいはい俺の話は聞いてもらえないんですね。
ノンストップで進むんですかかそうですか。
「頼んだ! お前ならやれる!」
「くれぐれも気を付けるんじゃよ」
「僕たちの村を救ってくれ」
いや……これは……。
もうわかった。
これ以上反論するのもめんどくさいし。
やります。
勇者やります。
やればいいんでしょやれば!!
それで文句はないでしょ!!
もうヤケだヤケ!!
「よし分かった! 俺が魔物全員村から追い出してやらぁ!!」
「よし! このまま戦いに行くぞ!」
「おっしゃやってやらぁ!!」
「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!」
マリーは若干ひきつった笑顔で俺に話しかけてくる。
「ツグナさん……もうヤケじゃないですか……」
「うるせーマリー!! もうこのテンションじゃないとやってられんわ!!」
「あはは……。が、がんばって、くだ、さい?」
「よーーーし!! 応援もされてるし頑張るぞー!」
「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」
村人たちの盛り上がり方がすごいな……。
俺とテンション同期してんのか?
「魔物がいるのはこっちだ。俺たちについてきてくれ」
「おーしわかった! マリーも行くぞ!」
「私もですか!?」
「ったりめーだろ! マリーいた方が安心できるしな」
「んうふぇ」
「え? 今のマリーの声?」
「……」
「マリー?」
「……」
……どうしよう。マリーがおかしな声を出して固まってしまった。
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