第四話 乗せられた勇者

 前回のあらすじ!


 映画を見に行ったら俺の左手が光って女性に力負けして引きずられているYO!


 ……あ?

 無駄にテンションが高いだぁ?

 うるせぇ俺だってこうでもしないとこんな状況でやってけねぇんだちょっと黙れ。


 では本編どぞー


 ◇◇◇


「あうあうあ~~~~~~~~~~~」


 俺は考えるのをやめて大人しく村の人たちについていく。

 だってしょうがねぇじゃん。逆らおうにも力負けしてるんだし。

 でも俺のが身長も高いし体格もいいのに……

 解せぬ。


 などと心の中でぐちぐち考えていると、なんだかすごそうな祭壇が目に入った。

 それだけじゃない。

 すっげぇ強そうな剣も刺さってる。


 なにこれぇ?


「これが『聖剣エクスカリバー』よ」


 俺が抱いた疑問の答えはすぐに帰ってきた。


 この『聖剣エクスカリバー』とかいう剣は、かつて魔王を倒したとか、嵐を切り裂いたとか、龍王の首を取ったとかそんな剣だそうだ。


 なんでも聖なる力が宿ってるらしい。




 いや、くっっっっっそいらねぇー!!

 聖なる力で命を奪うとかマジ意味不。

 どんな聖なる力が宿ってても首取ったら犯罪。


 尊い! 命が! 失われてしまう!


 魔王にも魔物にも龍王にも命はある! 嵐は……どうなんだ?

 でもいのちはたいせつ。

 これに変わりはない

 命を落とす立場になって考えてみろ聖剣!!


 命を奪うんだぞ!?

 切ないだろうが!!

 怖いだろうが!!

 恐ろしいだろうが!!

 嫌になるだろうが!!


 決めた。

 聖剣はいらん。


 絶対に俺は誰も殺さない。




「いい? 恐らく貴方は勇者よ!」


「えぇ……?」


「そうだ!! お前さんなら聖剣も抜けるはずだ!!」


 なんか来たぞ?

 勇者? やだね。

 精一杯言い訳して逃れまーす!!


「こんな悪人面だぞ? 勇者なわけないだろ!」


「普通にイケメンじゃない。 それに実際には悪人じゃないんでしょ?」


 ……うっ。

 イケメンだとほめられたのはうれしいけれども!


「いや傷跡いっぱいあるしな!? 勇者には見えないだろ!」


 近くにいた白髪のおじいさんに問う。


「ふぉふぉ。それもまた個性」


 ……うぐっ。

 自己肯定感は上がったけれども!


「俺は戦争孤児だぞ! 戦争に参加している可能性だってある!」


「まあいいじゃねぇか。お前さんはそんなこと気にすんなや」


 え? 嬉しい。

 なんていい人たちだ。

 あったけぇよぉ……


 こんな俺でも……ってちがーう!!


 怒り散らかしていると、金髪碧眼の美少女が目に入る。

 マリーだ。


「俺が勇者なわけねぇだろ! マリーもなんか言ってやれ!」


「ツグナさん……勇者だったんですね!」


「え?」


「それなら色々納得できます!」


「え? え?」


「ツグナさんの異様な強さも!」


「俺そんな強くないんだけど?」


「移動速度の速さも!」


「いや50m走8秒台! 平凡!」


「力の強さも!」


「女性に力負けしてたの見たでしょー!」


「勇者だっていうなら納得できます!」


「いやそんなことしてなーーーーーーーーーーい!!!」


 我ながら魂のこもった叫びだと思った。

 だってほんとにそんなことなかったし……いやあるか。


 ブチ切れた時に刃物持ったやつを殴り倒したこととか、野生動物に襲われたときにそいつより速く走って逃げたとか、鉄の塊持ち上げたこととか、あった気がするなぁ。


「ほらツグナさん! 聖剣抜いてみてくださいよ!」


「えー? やだ」


「いや。お前なら抜ける!」


「そうよ!」


「ほらツグナさん! がんばって~」


 お?そういう感じか?


「お主ならば行ける」


 パチパチと手拍子が鳴り始める。


「頑張れ頑張れ~」


「貴方は勇者なの!」


 そういうことねーはいはい。

 よーし!


 パチパチパチパチ


 ツグナさんがんばっちゃうぞー


「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ!」


 おれは聖剣をつかみ、一気に引き抜く!


 うおおおおおおぉ、と歓声が巻き上がる。


 いぇーい! やったー。


「やりましたねツグナさん!」


 よーしこれで俺が勇者……ってちがーーーーーう!!!!!!!!


 先ほどとは変わって俺は思いっきり聖剣を地面に突き刺した!













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