第六話 ペチペチペチペチ……意外と痛いんだが?
え? マリーが変な声出して固まったんだけど?
何があったの?
「おーいマリー? 起きてー」
マリーの頬を叩くが微動だにしない。
「マリー、倒れてないで行くよー?」
質問してみるが返事がない。
ん? これ……息してます?
ちょっとマリーの顔の近くに手を持っていって……。
うんうん……。あれぇ?
は? え? 嘘でしょ?
「マリー息してないんだけどぉ~!?」
なんで?
何が原因だ?
息をしていない 呼吸?
なんで?
なんで?
俺がマリーが息をしていないという事実に呆けて思考の世界に入ってしまった。
しかし、それを見た村人たちのざわめきですぐに現実に引き戻された。
そして村人の一人がこう言った。
「え? でも別に魔物は退治できるから行きますよね?」
オイ薄情だな!
ってそんなこと考えてる場合じゃねえ!
マリー起こさないと!
「ちょっとマリー起こすまで待ってくんない? 駄目?」
「……」
「……駄目っすか?」
じゃあ時間稼ごう。
言い訳だ言い訳。
「でも勇者だからってどうやって魔物を倒せばいいかわからないし、さっき言った通り何の訓練も積んでないただの人だよ? 簡単に死ぬよ? 死んじゃうよ?」
村人たちは沸き立つように言った。
「よく言った!」
え? またこのパターン?
「戦い方を教えれば戦うという事よね?」
「えっと、だかr「戦うためには自分のスキルと魔力を知っておかなければならないのじゃ」
ノンストップですかそうですか。
この村の人の勢いすげぇな……。
もういいや。
どうせ止まってはくれないんだし。
「じゃあそれやってやるよー!」
逆に気合入れて臨んでやろうじゃないか。
「気合入れてるとこ悪いが、簡単に終わると思うぜ?」
え? 気合入れた意味よ……。
ていうかマリーは?
考えてるうちにまた女性に引きずられていった。
あっ……。マリーも引きずられてる……。
◇◇◇◇◇
俺とマリーは変な古びた祠みたいなところまで引きずられて来ていた。
相変わらず手荒なんだよこの女性は。
もうちょっと俺たちに気を使ってくれてもいいんじゃない?
「今から魔力の属性を調べる。これで自分の得意な魔法がわかるぞ。この水晶を持って魔力を出してくれ」
やり方は知ってる。
マリーの教会にいた時に何回か見たことがあるから。
……あれ?
ていうか
「その水晶どこから持ってきたんですか?」
「もともと俺が持ってた」
じゃあここに来た意味ある!?
なくない!? という気持ちを抑えながら、言う通りに水晶玉を片手で抑え込むように持ち、魔力を通した。
魔力を通すと水晶が六色に光って……下からじわじわと黒くなっていく。
「これ、何ですか?」
「闇、だな」
え? や、闇?
闇って物語の主人公のライバルが使う属性だよね普通?
勇者じゃなくない? 黒勇者的な?
……まぁ、この話はやめて。
気にしないでおこう。
いいんだよ闇でも。多様性の時代だ。
「次は、っと。マリーの魔力を調べますかねぇ」
「でも倒れてるし……」
あぁ……。
マリー倒れてるんだった。
もう一回マリーの状態を見ようとマリーの顔の近くに自分の顔を寄せていくと……。
「ふぇ!?!?」
あ!やったー!起きたー!
という喜びもつかの間、
「ふわあぁぁぁぁぁぁぁ!!! ツグナさぁっ!? うあああああああああああっ!!
○※$*#Φ☤▼∮◇♡#~~~~!?(意味不明な聞き取れない単語集)」
顔を近づけてたからか、マリーの顔がかなり赤かったような気がしたがそんなことを確認する暇はなく、めちゃめちゃマリーに叩かれた。
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
……いや叩きすぎじゃない?
あーそんな目に涙をためた可愛い顔でこっち見ないで。
ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
そろそろやめっ……ペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチペチ
痛たたたたた。意外と痛い……。
5分後にやっと叩くのをやめてもらって、マリーの属性を調べることにした。
マリーは自分とは違うように両手で下からやさしく包み込むように持っていた。
そして、水晶が六色に光って……俺の時とは違い、水晶は黄色っぽくて優しい光を発していた。
「光、だね」
御伽噺とかの勇者パーティの聖女!!
ふつう俺も光じゃない!?
「次にスキルの説明だ。
これは魔法みたいのものじゃない。どちらかというと才能や技術の類だ。使い方はスキルによって違うからな。自分の感覚を信じろ!!
よし! 説明終わり。戦いに行くぞ~!」
いやスキルの説明雑っ!!
だが感覚っつうのは何となく理解出来た。
魔法よりは使いやすそうだな……。
……あれ?
丁寧に調べた魔法より適当なスキルのほう理解しちゃったよ?
……いや? よく考えてみれば魔法の使い方の説明受けてねぇんだが?
まぁでも、教会で何度も見てるから、打てるだろ。
よし。魔物と戦う準備はできたし、倒しに行くかなぁ……。
……俺も大概いい加減な奴だな……。
◇◇◇◇◇
自分たちは村人に連れられて魔物がいる場所に到着した。
村の近くの森の中。前方にとても深い崖があって、中心に橋、崖の下には川が流れている。
その橋の前に魔物がいた。
緑色の肌に大きくて尖り、上を向いている耳。手には斧を持ち、汚れた服を着ている大きな目の魔物の群れ。
そしてその群れを統率しているであろう緑褐色の肌の大きな魔物。近くには大剣が置いてある。
恐らく、ゴブリンとオークだろう。
「あれが村の近くに出没した魔物か?」
「はい! そうです! あいつらが橋の前を塞いでいるせいでこの村から出られないんです!
魔物を倒してください勇者様!」
塞いでるだけ? ちょっと拍子抜けだな。
……あいつらそんなに悪い奴らじゃ無くね?
でも魔物である以上は人を襲う可能性もある、か。
よし。
どこまでできるかは分からないが、やってやろう。
……勿論‟俺のやり方”で、だがな!
俺が勇者であるために 海陽 @39377
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