第二話 興味と映画と恋心
「あ゛ーー…。口の中まだ甘ぇ」
どっかに水とかないかな?
ずっとこのままはさすがに嫌なんだが。
「すいません。流石に入れすぎでしたね。気づきませんでした」
「入れる前の段階で気づこう!?」
え? マリー?
噓だよね?
ほんとに気付いてなかったの?
…まぁ、いいか。
「さてと。今日は教会の手伝いでもするかな」
これといった予定もなくて暇だし。
「今、暇だって思ってますよね?」
「!」
噓だろ!? なぜ察知されたんだ…
「ふふふ。ツグナさんはお顔に出しやすいですからね♪」
え?そうなの?
そんなに?
「俺そんな表情変化してます?」
「してますよ。あと今日は教会休みです」
「そうだっけ?」
「はい。安息日ですので」
「あー…あったなそんなの」
「いい加減覚えられないんですか?」
ふっ。俺には無理だ。
興味がほとんどないからな。
「まぁ、なんにせよ今日一日暇になっちまった。どっか行くか?」
「じゃあ…映画?でしたっけ? 最近できたやつに行きたいのですが」
「あー。シネマトグラフとかいう機械使って上映するやつな。近くにできたもんな」
「なんでそれは覚えてるのに安息日は覚えられないんですか!?」
「そんなに興味ないから」
「もぉぉぉぉぉぉ! 少しは教会の規則にも興味持ってください!」
「はいはい。わかったから」
俺はめんどくさそうに返事を返す。
「わかってなさそう!」
すぐに帰ってきた返答を軽く受け流し俺は話題を変える。
「で? マリーは何を見に行きたいんだ? やっぱこの『オクト・ジャックの一日』ってやつだったりする?」
「なんでわかったんです!?」
先ほどは俺が驚かされたが今度はマリーが驚く番だ。
「映画化する前からずっと好きだんだったろ? 小さいときに買ってもらった『オクト・ジャックの一日』の漫画、まだ持ってるんだし」
「私のことなのによく覚えてますね?」
「へへっ。記憶力いいだろ」
「そ、そうですね」
◇◇◇
えへへへへ…覚えてくれてるってことはツグナさんは『私』に興味がある。ってことですよね!? 嬉しい…
そう。何を隠そう私、アウル・ローズマリーは…ツグナさんに恋心を抱いているのだ。
だってしょうがないじゃないですか!?
幼いころから一緒にいて、いつだって私を守ってくれて、私がやらかしても笑って許してくれる。
そんな人、好きにならないわけがないじゃないですか!
だが、私が教会の規律を守らなければならないシスター。
この気持ちを、素直に口に出せはしない。
うぅ……! ツグナさん!!
私の気持ちに気づいてくださいよ~っ!!!
◇◇◇
「どうした? そんなニヤニヤして?」
「っ!! いっ、いえ何でもっ、何もっ、ないっ! ですぅ!」
「そうか? それならいいが。そろそろ行かねぇと間に合わなくなるぞ、映画」
「あっ! そうでした! あるんでしたね上映時間……」
俺はここぞとばかりにマリーを煽る。
「なぁんで安息日は覚えられるのに上映時間の存在も覚えてられないんですかぁ~~?」
「むうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
めっちゃ膨れてる。
ちょっとかわいい……
でもさすがに煽りすぎた気もする。
……まぁいいか。
とりあえずそれは置いておき、俺は出発の準備を始める。
「ほらほらマリー。早くしないとあの出鱈目な動きしやがるタコ。見逃すぞ~」
ホントに出鱈目な動きするよなぁジャック。
飛ぶし、跳ぶし、変形するし、走るし、伸びるし、泳ぐし、瞬間移動もするし。
力も尋常じゃない程強くて、触腕一本一本が別の動きするし、毒持ってる。
キャラクターとしてはジャックが無双するからあんま好きじゃないんだが、動き自体は出鱈目だけどその一つ一つがものすごく精密に描写されてるから映像になったときにすごそうなんだよなぁ。
そんなことを考えながら、俺は歩き出した。
「ちょっとぉ! ツグナさぁぁぁぁん! おいてかないでくださぁぁぁぁい!!」
訂正。
俺たちは歩き出した。だな!
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