第17話 雑踏の中で見かけた凛音は?
流星は、両親の離婚という不幸を乗り越え、今現在は母共々元気を取り戻し以前の生活が戻りつつある。
運動神経抜群の流星は、岡崎市にある桜ヶ丘南高校のサッカ-部に所属しているエ-スにして桜ヶ丘南高校のスター的存在。浅黒い肌と白い歯が眩しい爽やかイケメンで、身長は182cmのパ-フェクトボーイだ。サッカー部と趣味の小説研究サ-クルという大好きな事にのめり込み、大忙しの毎日を送っている。
だが、家庭ではチョットした不幸に見舞われていた流星。それは両親の離婚だ。家族がバラバラになった事で心を痛めていた流星だったが、その悲しみ冷めやらぬ中、母には男の影がチラ付いている。許せない思いで一杯だったが、部活と趣味の小説研究サ-クルに打ち込む事で、あの日偶然にも目撃した英会話教室の講師でいかにも下心アリアリの、薄汚い男と母との汚らわしい行為も、いつの間にか忘れ去られて行った。
そして…小説研究サ-クルを発足させた女子黒山幽香と流星は目ぼしいミステリー事件と聞けば危険も顧みず飛び回っている。特に興味をそそられたのが、首なし死体事件だ。
その狂気の事件も、事件から早1ヶ月が過ぎようとしている。日本中を震撼させている「首なし死体事件」豊明市の廃墟から見付かったTさん、更には名古屋市瑞穂区の高校の使われていない倉庫から発見されたK教員、そして……とうとう流星の住む町、岡崎市のモーテル「シャチ」でも無残な首なし死体事件が起こってしまった。
こんな事件が起きたのに、この2人がオメオメ引き下がっている訳がない。これぞ我らで犯人を追及してみせると意気込んでいる。
それでは、小説研究サ-クルに在籍している流星は、自分の父親と首なし死体で発見されたTさんの父親で土産物製造販売社長が、知り合いだという事を知っているのか?
更には、無残に首なし死体で発見された勝君の父親Tさんと勝君の事を、知っているのか?そもそも星信学園高校で起こっているゲイ事件に辿り着いているのかが疑問だ。
その事件とはこれだ。
星信学園高校の男子Xが、豊明市の民家の廃墟で見付かった首なし死体Tさんの息子勝君にLINEを介して「友達以上💛💛💛LOVE。付き合いたい」などとメッセージを送って恋愛感情を告白したところ、勝君は「これからも良い友達でいたい」などと応答した。友達の戯言と思った男子Xの言動を(友達として付き合いたいのだな)と最初は考えていた。だから…野郎達と一緒にXも誘って、海にもショッピングモ-ルのゲ-ムセンタ―にも山にも登ったりして、束の間の時間を謳歌していた勝君だった。
そんな時にXとショッピングモ-ルの「屋内アスレチック施設」トンデミで、Xと2人でトランポリンをやっていた時に、Ⅹが後ろから抱きついてパンツの中に手を忍ばせて来た。
それでも…ふざけて野郎達とは人に言えない事もやって来ているので、まさか…あんなゲイやレズと言った類の人間が、本当に自分の周りに居ようなど想像も出来ない事だった。だから…勝君は差し障りない拒否を続けたが、次第に度を超す行為を取るⅩに、流石の勝君も気味が悪くなりXを避け始めて来た。
例えば抱き付いて来て暫くすると生温い、こそばゆいものが首筋を伝っているように感じる。それは舌で首筋を舐めているのだった。その姿を目撃した謙太君にとんでもない誤解をされた。それは……『ハッハッハ!お前等ゲイかよ?』こんな勘違いをされた勝君は、益々Ⅹと距離を置くようになって行った。
そのⅩとは学校でも幅を利かせているボス的存在。強く出る事も出来ず、受け入れる事も出来ず、やがてⅩの復讐が怖いので、2人の事情を知らない他の同級の友人とも距離を置くようになり、精神的に不安定になり夜も眠れなくなっていった勝君。
それでも…ちょっかいを出してくるⅩに、勝君は同級生である友人たちが見ているLINEグループに、『Ⅹがゲイであることを隠しておくのもうムリだ。ごめん』と投稿し、Ⅹが同性愛者であることを第三者に暴露した。このLINEには同級生10名ほどが参加していたとされ、結果的に既に知っていた3人を除く、7人に対してX君が同性愛者であることが暴露されてしまった。
未だLGBTに対して偏見が有り、隠していたのに暴露された腹いせにⅩ君が復讐心で、勝君の父親Tさんを殺害したのでは………?と言う話だったが、幽香と流星はこの話を知っているのか?
実は…流星と勝君は、東京駅や新宿にある各地方の土産物が一同に揃っている「ご当地プラザ」で何度か父親とお爺ちゃんに連れられて行った事が有り、お互いに知っていた。だから……勝君の父親Tさんが殺害された事件に心を痛めていた。
***
事件が起きてからと言うもの、幽香と流星の2人は研究室に籠って必死に犯人探しに躍起になって居る。
「オイ!首をちょん切るって、どんな神経しているんだい?だって勢いよく血が噴き出るし、恐ろし過ぎだろう。生きた人間の首をすっぱり切ると本当に出血は噴水状態になるのかい?」
「いや~だって~睡眠薬で眠らせたって、鈍器で殴っても生きているから……人間の首は生きている状態でその拍子にいきなり首切ると、血が首の断切面から噴水のように大量の血が噴出すらしいよ」
「そうだよなぁ。心臓は体中に血液を回すためにすごい力で押しているから……だから…太い血管の動脈、静脈が首にあるから、それを切ったら噴水のように溢れ出すわなぁ」
「でもさ~ノコギリを購入した店が特定出来たんでしょう?それも岡崎市の金具屋さんだったって言うじゃないの?」
「どうして金具屋さん特定出来たんだい?」
「どうも……ノコギリの店名の部分が紙だったので、風呂場で殺害したので剥がれたらしいのよ。それで……ほんの少し1cm程の店名の部分が剝がれたのだけれども、その燕三条産製品は、海外の展示会にも数多く参加し、日本のものづくりの真骨頂として高い人気を得ているらしいの。そして…そのノコギリは特注だったらしい「金文」の文字が、ちぎれて落ちていたらしいのよ。高級品を取り扱うその店は新潟県の有名職人に注文したらしい」
「高級品って事は犯人は金に困らない人物か?金持ちって事かも知れない?だけど内に秘めた狂った人物って事かな……」
「それでも…この一連の犯人は、何かしらの証拠品を残しているって聞いたけど?」
「嗚呼……それ分かる気がする。1950年代ごろにアメリカを騒がせた連続殺人犯のウィリアム・ハイレンズ。彼は、ある殺人現場から立ち去る際、被害者の口紅を使って、メッセージを残していたみたいよ。For heavens Sake catch me Before I kill more I cannot control myself(これ以上だれかを手にかける前に、頼むから僕を捕まえてくれ。もう自分をコントロールできない。このように自身でも抑えることのできない強烈な欲望と、それを何とかして止める手立てを模索して複雑な動機を抱えている犯罪者もいるのよ」
それでは、あの日高校2年生の流星は、偶然にも菊池凛音とお寺の境内で遭遇していたが、その後偶然にもカラオケボックスで会ったが、あれ以来会っていないのか?(それにしても……あの女の子の眼差しには狂気が潜んでいる)
「ねえ幽香今度さ、その岡崎市の金物屋さんに行ってみない?」
「本当ね。言ってみましょう?」
こうして2人は次の日曜日犯人が購入したと思われる金物店に向かった。その〈中田金物店〉は商店街の一角にあった。だが、その時一瞬あの美しい少女凛音らしき女の子が、日曜日で賑わう商店街の雑踏の中を通り過ぎた気がした。
(まさか…俺の見間違いに決まっている?)
それでは本当に菊池凛音は、「中田金物店」の商店街の近くを歩いていたのか?
実は…あの時、流星は菊池凛音らしき女の子を、日曜日で賑わう商店街の雑踏の中で見付けたが、見失ってしまった。
それでも……凍り付くような表情で含み笑いを投げかけて来た美少女だったが、余りの狂気の眼差しに、余りの二面性に身体が凍り付いて、恐怖からその場から立ち去ろうと思えば思う程恐怖で足がすくみ、まるで磁石の様に地面に足がへばり付いて離れない。そのくらい狂気をはらんだ少女だったが、それでも…あれから寝ても覚めてもその少女の事ばかり考えている流星。
そして…狂気の部分は日にちが経つと共に消え失せ、ハッと目を引く美しい少女の姿、最初に見た印象だけが燦然と輝き頭から離れないのだった。
だから……会いたくて!会いたくて!時の経つのも忘れてその少女を探していた。
一方の置いてけぼりを食らった小説研究サークル女子幽香は、日曜日で賑わう商店街の雑踏の中に置いてけぼりにされ怒り心頭を通り越して、無の境地に達していた。それはそうだろう。「友人がいたから探してくる」と言って別れてすでに3時間以上経っている。もう我慢の限界をとっくに通り越している。
***
その頃流星は、やっとの事自分の意思が通じたのか、菊池凛音らしき女の子を探し当てる事が出来た。
そっと後ろを付いて行くと、ある一軒家に消えて行った。入って行く訳にもいかず彼是小一時間ぐらい待っていると、中年のオヤジと美少年が連れ立って出て来た。
如何にも馴れ馴れしそうに、2人とも漫勉の笑みを浮かべて腕を組んでいるのが見て取れた。
だが、さっきの美少女凛音の姿はどこにも見当たらない。只一瞬不審に思った事が有った。それは……その美少年がどこか見覚えのある顔だったからである。
その時ハッ!と気が付いた。余りにもその美少年と凛音が似ている事に………。
これは一体どういう事?
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