第18話 中学生2人組
流星の父親と勝君のお爺ちゃんは、共にお菓子製造販売という共通の仕事を生業にしていた。どちらの商品も人気があり地元だけに留まらず、各都道府県でも販売されていた。それは、東京駅や新宿の「ご当地プラザ」更には各大都市のアンテナショップにも自社の商品や土産物を卸していた。
※アンテナショップ:企業や地方自治体などが、自社あるいは地元の製品を広く紹介したり、消費者の反応を探ったりする目的で開設する店舗。地域の特産品や土産物も多数販売されている。また、特産品の所だけでなくギャラリー、観光情報コーナーなども備えられている店もある。首都圏在住者などにとって遠方の物産や観光情報を入手できるだけでなく、地方出身者が故郷の食品などを買える場でもある。
東京都内には数多くのアンテナショップがある。また他の府県にある各自治体の主なアンテナショップは、青森県 、愛知県 、鳥取県、 熊本県、 岩手県・秋田県等にもある。
勝君のお爺ちゃんの店は、博多に本店を構える「博多玉露抹茶バウム」と言う土産物専門店。この店の人気商品は何と言っても、八女茶玉露抹茶を使ったバウムクーヘンが人気で店の看板商品だ。他には冷凍の「フロ-ズンバームク-ヘン」も爆発的人気を誇っている。その為、人気の「博多玉露抹茶バウム」は主要都市東京Ⅿ百貨店と大阪のH百貨店にも店を構えている知る人ぞ知る有名店だった。そして…売り上げ№1を誇るT百貨店に店を構える名古屋支店を任されていたのが、誰有ろう社長の息子で勝君の父親Tさんだった。
何という偶然の一致なのか、博多に本店を構える「博多玉露抹茶バウム」と岡崎市に本店を構える流星の父親が経営する「菊乃屋」は「ご当地プラザ」やアンテナショップにも商品を卸していた。
そんな事から、流星の父親と勝君のお爺ちゃんは「自治体アンテナショップ情報交換会」で何度か顔を合わせており顔見知りの関係だった。ましてや首なし死体で発見された息子で豊明市の43歳の男性Tさんは実は…「博多玉露抹茶バウム」副社長で名古屋支店の店長として忙しい毎日を送っていた。
詳しい事は分からないが流星の父親と勝君の父親Tさんも、同じ土産物店という共通点がある事から、ひょっとして父親同士も顔見知りかも知れない。という事は流星と勝君の繋がりは想像以上に深い繋がりが有るのかも知れない。
***
そんな時に母から思いも寄らない事実を聞かされた。
銀座のアンテナショップで4年前に事件が起こったと言うのだ。
それは「菊乃屋」の饅頭に針が入っていた事件だ。
どうも……突き詰めて行くと、その当時「菊乃屋」の饅頭が人気で、それを妬んだ他店の仕業ではないのか?と言う噂だった。「菊乃屋」の饅頭は餅にクルミが練り込まれてあって、小豆も十勝産の絶品饅頭だった。今まで不動の一位を誇っていたにも拘らず、後から入ってきた新参者にお株を奪われた形の「博多玉露抹茶バウム」が、「菊乃屋」を追い落とそうとして針を侵入させたのでは?そんな噂がまことしやかにあの当時囁かれていた。
今までは不動の1位だったのに、日に日に売り上げが落ち込んで行った「博多玉露抹茶バウム」の店長が思い余って針を饅頭に差し込んだと言う話だった。
それでも…ハッキリとした証拠は出たのか?
それが「博多玉露抹茶バウム」の店長が、アンテナショップ「菊乃屋」に侵入した映像は防犯カメラにハッキリと捉えられていたが、その時中学生ぐらいの男の子が2人、その店長に手を引かれて閉店しているお店に入って行ったと言うのだ。
その中学生2人は誰だったのか?
そして…店内には店長の姿は無く、あれは確か節分の前夜で閉店して間もなくの時間帯で2月2日の午後8時過ぎだった。そして…その中学生の2人は鬼の面を被って何やら………怪しい行動を取っていた。
その中学生が、小豆に針を侵入させたのだろうか?針は原形を留めていない短いものだった。饅頭の小豆が水に浸して有ったので、その時に小豆に侵入させたのだろうか?
翌朝職人さんが、小さすぎて分からなかったので煮込んでしまったのかも知れない。こうして事件は起きた。だが、その事件はニュースにはならずうやむやになってしまった。只「博多玉露抹茶バウム」の店長だけは責任を取らされて首になっていた。
それでは店長は踏んだり蹴ったりではないか?どう見ても中学生らしき2人組の犯行に見えてしまうのだが?
その中学生2人組は、誰だったのか?
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