第7話 犯人像
事件のあらましが、大々的に報道されてからというもの、日本中を恐怖のどん底に突き落としている摩訶不思議な怪奇事件首なし死体事件。進展しないまま彼是1カ月が経ったが、それでは今度は2人目の被害者Kの首なし死体事件を、深く掘り下げて行こう。
2人目の被害者Kは、富裕層家庭の子女が多い事でも知られるS高校の、使われていない倉庫から発見されたが、実は…36歳男性Kは、この学校の教員だった。そして…勝君と謙太君はこの学校の生徒だった。
どうも……このK教員夜の学校の見回りをやっていて、見てはいけないものを見たらしい。
それではその……見てはいけないものとは、いったい何だったのか?
実は、先生が夜の見回りに出掛けると「この学校の男子生徒2人が使われていない倉庫で、裸で抱き合っていた」と言う話なのだが、その光景を見た学校の帰りに先生は殺害されてしまった。
それでは、何故その話が他人の耳に入る事となったのか?
実はK教員は数年前に結婚していて、妻に帰る時には電話を入れるのが習慣になっていた。妻に帰る事を伝えていると、足音が近づいて来た。そこで「アッ!誰か来た!この学校の男子生徒2人が使われていない倉庫で、裸で抱き合っていたが、その時、生徒と目が合った」そう言うと電話は切れた。その話を取り調べの刑事に妻は話していた。
***
早速2人の刑事長瀬と田淵は、S校に直行した。だが、長瀬にはどうしても寄りたい場所が有った。
「アッ!銀さん学校はそこじゃありませんけど?」
「嗚呼……任せときゃ~ちょこっとだけ寄るとこがあるでよ―」
「どこに行くんですか―?」
すると商店街の酒屋に辿り着いた。それは……このS校の近所の酒屋に婿養子に入った同級生がいたからだった。子供の頃は家が近所でよく一緒に遊んだ仲だった。銀さんこと長瀬は慣れた様子で早速その酒屋の門をくぐった。すると慣れた様子で奥さんが対応してくれた。
「嗚呼……よーござった。よーござった。やっとかめだがや―。さあいりゃーせ」そう言って竹馬の友で、この店の店主の所に案内してくれた。すると丸々太ったオヤジさんが笑顔で向かい入れてくれた。
「早うあがりゃ―。早う」
「ありがとな。やっとか目に会えたもんで話してゃーあ事がいっぴや-い、あってよ―。ワッハッハッハ」
「そりゃあこっちも一緒だがやぁ。おみゃ―昔からな―おうちゃくい—て、おうじょうこいた。ワッハッハッハ」
「そりゃぁおみゃ―の事だがや。昔からな―おうちゃくい—て、おうじょうこいた。ワッハッハッハ」
「まぁ話し出したらきりがあらせん。だで時間が幾らあっても足りぁせんで…だちかん。ほんでも若い衆連れて来たという事は……なんか事件でも……起きたゃきゃ?」
「嗚呼……ほんでよ—最近S高校の使われていにゃ―倉庫で、首なし死体事件があったがや―?あそこの高校で何か?良からぬ噂なかったきゃ―?」
「あそこはよ―優等生のお坊ちゃまお譲ちゃまの高校でよ―。そげな悪い噂聞いた事ありゃりゃせん。そんでもよ―?お客さんに……それとの―聞いとくでよ―」
「頼むでよ。じゃ―またな…ワッハッハッハ!」
こうして一路首なし死体事件のあったS高校に向かった2人。
***
学校に着くなり早速校長以下、教頭とK先生と親しかった先生2人と応接室で、事件の経緯を聞いた。
「この高校で見回り中の夜にK教員が殺害された首なし死体事件だが、K教員は帰る前に妻に次のような言葉を残していました「この学校の男子生徒2人が使われていない倉庫で、裸で抱き合っていた」と言う話なのだが、その光景を見た学校の帰りに先生は殺害されてしまったのです。良からぬ行為にふけっていた2人は誰だったのですか?またその話は以前から聞いていましたか?ハッキリ言ってくりゃ―せ」
「刑事さん勝手に決めつけるような言い方は止めて頂けませんか?我が校で、ましてや夜に使われていない倉庫で……そのような不謹慎な事は絶対に有りません!デマデマです」
「それでは、他の先生方は何か?聞いていりゃ―すか?」
「…………」
「…………」
「…………」
「ハッキリ本当の事を言ってくりゃ―せ。この学校の大切な先生が亡くなったんだで!」
「…………」
「…………」
「…………」
「いい加減にしや—よ。大概にせにゃ—あかん!ハッキリ本当の事言わんと!」
「刑事さん栄えある我が校にイチャモンを付ける気ですか?何か……聞く所によると…ゲイの高校生が我が校に……まるでいるような言い方ではありませんか?そして…まるで……如何わしい行為が……この栄えある我が校で……あたかもあったような言い方。そして…さも我が校の生徒が如何わしい関係をK先生に目撃されて……それで殺害事件に発展したような。まぁ昨今はセクシャルマイノリティーがどうのこうのと、世間では騒がれていますが。決してそれが悪い事だと言っている訳ではありません。只…我が校はそれこそ……一流大学にも多くの生徒さんを送り込んでいる有名校です。そんな生徒さんがゴホン!そんな「LGBT」セクシュアルマイノリティだ等と言っている時間が、どこにありますか?汚らわしいアッ❕失礼!ゴホン!決して!決して!そういう方たちを、差別している訳では有りません。あくまで……その様な行動を取る時間がどこにあろうか?という事です。全くもって迷惑です。お引き取り下さい!」
※セクシュアルマイノリティ(sexual minority)とは、「こころの性・からだの性・表現する性が一致していない人達の総称。「性のあり方は男と女だけである」という考え方の人が多い社会からみて少数者という意味。「性的少数者」「セクマイ」とも表され、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー以外も含まれるため、「LGBT」と使い分けられることもある。
2人は校長の余りの剣幕に、もう今日の所はこれ以上聞き出す事は無理と判断して車で校舎を出た。
「全く学校の名誉を守る事で必死で、亡くなった先生の事は全く考えていないですね?」
「全くた—けらしい話だがや—。話になりゃ—せん!おうじょうこいた」
こうして一路車は愛知県警に到着した。
***
一方の小説研究サ-クルの、女子黒山幽香とサッカ-部所属のイケメン立花流星の2人は、この事件に興味津々だったが、その後この一連の首なし死体事件に進展は有ったのか?
「ねえ幽香今度さ―、その岡崎市の金物屋さんに行ってみない?」
「本当ね。言ってみましょう?」
こうして2人は次の日曜日、犯人が購入したと思われる金物店に向かった。
その中田金物店は岡崎市Z町の商店街の一角にあった。だが、その時一瞬あの美しい少女凛音らしき女の子が、日曜日で賑わう商店街の雑踏の中を通り過ぎた気がした。
「幽香ちゃん俺この事件に関与しているか分からないが、チョット怪しい女の子見掛けたんだ。僕、跡を追って見るね?」流星は慌てて凛音の後を追った。
(まさか…俺の見間違いに決まっている?でも……そっくりだったっけど……)
***
「あの時はビックリしたわ!まさか…モーテルに入るなんて、あれだけ約束したじゃないの。最初の約束、そういう行為絶対に無しって決めていたのに……もし…したいのだったら他の人にして頂戴って、あれだけ言って置いたのに……それから私の秘密をバラすなんて脅して……エッチさせたら黙っていてやるって……私がそんな行為出来る筈が無いじゃないの……恨んでやる!フフフそれでも…スッキリした!嗚呼一度するとクセになって……もっともっと……ああアアアアアア……モットモット……フッフッフ」
あの猟奇的殺人鬼首なし死体事件の犯人は、一体誰なのか?
名古屋弁一覧
よーござった:よく来てくれた
いりゃーせ:入ってください
あがりゃ―:あがって
やっとかめ:久しぶり
話してゃーあ:話したい
いっぴや-い:沢山
おうちゃくい:わんぱく
だちかん:ダメ
いにゃー:いない
た—けらしい:たわけらしい
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