第17話 生まれた児に

 親方の家に着いた翌日の朝はやく、ヨハナが赤ん坊を生みました。日の出には、まだ早く、家の内外を深い闇がおおっていたとき、おぎゃーという産声が聞こえました。

 親方が、

「さあ、これでお前も一人前だ。仕事も、家のこともどちらも大切だ」

と励ましてくれました。

 ホルツと親方が、祝杯を上げているところに、産婆が顔を出しました。

「あのー、お話が……」

「なんだい」

とホルツは、この産婆にも、お礼をあげようと思いながら、産婆が、何の用だろうと考えていました。

 部屋から出たホルツは、産婆に招かれるまま、廊下の端に行きました。産婆が、周りを見渡しながら、話し出しました。

「生まれたお子さんは、玉のような女の子です。ただ……」

と、あたりをはばかった様子で、次の言葉を探していました。ホルツは、じれったくなって、

「どうしたんだい。赤ん坊は、五体満足なんでしょう。ヨハナも元気なんでしょう。それ以上は、望みません」

「それが、赤ん坊の右手の親指がありません」

ホルツの顔色が、変わりました。

「右手の親指がないって、それはどういうことです。まさか、私のようだというのか」

「言いにくいのですが、体は丈夫でも、こういう子が生まれることがございます。決して、神様の罰だなどと、お考えにならないように」

と産婆は、言うのがやっとでした。

 ホルツは、天を仰ぎました。

「神様、どうしてこのような罰を与えるのですか。それほど、私がしたことは、悪いことだったのでしょうか」

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