第14話 ホルツとヨハナの婚礼
ホルツがヨハナの父親に、花嫁代を支払って、一ヶ月以上がたっていました。ホルツは、すぐにでも、ヨハナと結婚式を上げたかったのですが、長い間、牢屋に入っていたので、すっかり体が、弱っていました。
そんな、ホルツを看病してくれたのは、あのヨハナでした。ヨハナの父親は、花嫁代を受け取ってから、ホルツが渡した金は、盗んだものらしいと聞いて、取り返されてなるものかと、毎日、毎日、浴びるほど酒を飲んで、ホルツの無実が晴れる前に、死んでしまいました。
「これで、私は、一人っきり。でも、私には、ホルツがいるわ」
ヨハナは、ホルツの母親のもとに行き、手伝いをしてホルツが、無事、出てくるのを待っていました。
そうしている内に、ホルツの母のもとに、あの宿の主人から、村人に木ぐつをつくった代金が、送られてきました。
次の日には、ホルツが、正直にお金を拾ったことを届け出たという理由で、代官から、ご褒美のお金が届きました。
ホルツは、ベッドから起き上がり、
「お母さん、僕は、小さいときから結婚するなら、ヨハナだと決めていたんだ。稼いだお金で、もっと楽をさせたかったんだけど」
「いいのよ、ホルツ、お前が、幸せになってくれるのが、一番の贈り物よ」
お母さんの優しさが、身に沁みました。
ヨハナの介抱のかいもあって、ホルツの体は、日一日と元気になっていきました。一番、喜んだのは、お母さんだったか、それともヨハナだったか、筆者には、わかりません。
ホルツもヨハナも願っていた結婚式を、挙げることにしました。結婚式のお金は、ホルツが木ぐつを売ったお金と代官からのご褒美をあてました。小さいけれど心のこもった婚礼をしたいとホルツは考えました。
ホルツは、きれいな花を編んで、ヨハナのベールにしたいと、野原に花を摘みにでかけました。しかし、季節は、冬の初めです。もうきれいな花は、咲いておらず、近くの町で、花を売ってはいましたが、高価で、とてもホルツの手の届くものではありませんでした。
ホルツは、幼かった頃、ヨハナと遊んだ森の中の秘密の場所を思い出しました。そこは、森の中にぽっかりとあいた場所で、北側の木々が、冬の寒い風を防ぎ、南側の沼のほとりには、いつでも季節の草花がさいていました。
あそこならと、ホルツは考えて久しぶりに森にでかけました。幸い、そこは、誰にも知られることなく、ひっそりとしていました。
クリスマスローズ、パンジー、サイネリア、ダイヤモンドリリーそのほかの花も咲き乱れています。入用な数だけをとるので、許してくださいとホルツは、森の精に祈りました。
婚礼の朝、ホルツは、花嫁ヨハナに、野の花で飾ったベールを贈りました。教会に現れたヨハナの頭には、ホルツが、つくった花飾りがのっています。
「きれいな花嫁さんだ」
「ホルツは幸せものだ」
と村人が、口々に祝福してくれました。
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