第4話 灼けた棒で血止め

 そのとき、ホルツは、どうしたら血を止めることができるかと必死に考えました。もちろん、お医者さんに行けば、縫ってくれるでしょうが、お金がありません。

 ホルツは、意を決したように、村の南に住んでいる鍛冶屋のシュミットのところに走っていきました。

 鍛冶屋のシュミットが仕事をしているかどうかは、遠くからわかります。カマや蹄鉄を打つツチの音が、今日も朝早くから聞こえていました。

 ホルツが急いで走って来たのを見て、

「どうした、何かあったのか」

と声をかけました。次に、ホルツの右手が血で、真っ赤になっているのを見て

「どこで、けがをした」

と聞きました。鍛冶屋の仕事は、火を扱うので怪我をすることが多かったのです。傷薬をもって来ようと立ち上がろうとします。

 ホルツは、それを止めて、

「間違って右手の親指を切ってしまったんだ。血を止めるために、その真っ赤に灼けた鉄の棒を、ここに当ててくれないか。それで、血を止めるんだ」

と言いました。

 驚いたシュミットは、

「ものすごく痛いぞ、医者にいったらどうだ」

と言ってくれましたが、ホルツは、

「いや、医者に行く金がないんだ。早くしてくれ」

と痛みをこらえて、お願いします。

 その気持ちを理解したシュミットは、

「我慢しろよ」

と言って、真っ赤に灼けた鉄棒を炉から引き抜き、

「いいか、目をつぶれ」

と言って、傷口に当てました。

 ホルツは、目をつぶりました。じっと肉の焼ける臭いがして、我慢ができないほどの痛みです。

 目を開けると、血は止まっていました。

「よく、気絶しなかったな。これで、傷口を巻いておけ」

そう言って、シュミットは白いハンカチをくれました。

 ホルツは、そのハンカチで傷を隠して、家に帰ることにしました。切られた痛みと火傷の痛みが重なって、気を失いそうです。

 しかし、ここで気を失ってはいられません。ホルツが、切られたなみだ指を家に持っていけば、お母さんが驚いて、かえって心配になります。

 帰る途中、ホルツは、どこに埋めるのがいいかと考えていました。ちょうど、小川を渡っているときです。この小川の岸辺なら、春や夏には、花が咲くだろうと思い、小さな穴を掘りました。そこに、指をおさめて、その上に土をかけると、待っていたヨハナが花をつんできて、こんもりとした土の上に置いてくれました。

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