第28話 俺と生徒会長 後編
病院からの帰り道、俺と鷹井先輩は土手を歩いていた。
まもなく日が沈む時間で、太陽がなけなしの力で空を橙色に染めている。
鷹井先輩が俺を病院に連れていった理由が分かった。
俺の検査をすることによって、俺と白鳥先輩、2人の病気をほぼ確定させたんだ。
……まさか変態病だなんて名称がついているなんて思わなかったけど。
「鷹井先輩、ありがとうございました」
俺は隣で竹刀を肩に当てながら歩く鷹井先輩に感謝の言葉を口にする。
てっきり、「そんなことはない」とか「こちらこそありがとう」とか、そんな返事が返ってくると思っていたけど、鷹井先輩は暗い顔で口を開いた。
「……それで、君はこれからどうするのだ?」
「え?」
なにを言っているのか咄嗟に頭が回らなかった。
「検査結果を聞いて、君はどうしたいと思ったのだ? ……白鳥響子は十中八九病気で、君を引き寄せている。しかも運の悪いことに君の性癖にピッタリときたものだ。君は、それでいいのか……?」
そこまで言われて理解できた。
胸の奥につっかえていたモヤモヤ感。俺は本当に心の底から白鳥さんを好きだと言えるのか、という疑問。それが検査によって互いの病気が要因で引き寄せられているに過ぎないことが分かった。
俺の病気のことはいい。もとよりそう思い込んでいたから変化はない。まあ、父の遺伝でなったことにはビックリだし、今後も家族仲が改善されることはないんだろうなって分かったことは少し悲しいけど。
ただ、白鳥さんの変態病は……なんというかおぞましさを感じる。
俺はこの病気をいいものだとは思っていない。俺が煩わしさを感じるということもあるけど、なによりこの病気のせいで引き寄せられる女の子たちが不憫でならない。
けど白鳥さんはこの病気を利用して傀儡を増やしてすべてを手中に収めようとしている気がする。
事実、ゲームセンターで見た彼女はそう見えたし、俺が手を繋いでからは学校の生徒の様子もおかしかった。そしてそれを抑えようともしていなかった。
――そりゃあ、だめだよな。
同じ病気を持つ者同士、気が合うかもと思ったけど、病気に対する考え方が正反対だ。
俺はもっと、まともな恋愛をしたい。
「鷹井先輩。決めましたよ、どうするか」
俺は立ち止まって鷹井先輩を真正面から見据えた。
鷹井先輩の顔半分が、橙色に照らされている。
「……言ってみろ」
「白鳥先輩から離れる。……身も心も綺麗さっぱり。それで俺の変態病が治るわけじゃないけど、少なくとも前には進めると思うんです。先輩のおかげで気付けました」
俺は鷹井先輩に感謝の意を込めて笑顔で言った。
鷹井先輩の顔色が橙色から紅色へと変わっていった。
む、急に体調を崩したのか?
「えと、具合悪そうですね、鷹井先輩」
「あ、ああ、そりゃあもちろん、大丈夫だ。なにも変なことなんて考えていないぞ!」
ビシビシとしないでアスファルトを叩く。
……おっかないって。
「だがどうする? 明日は終業式だ。そこからは夏休みに入ってしまうが――」
「当然、夏休み前に決着つけますよ。そして夏休み中に恋愛を大いに楽しみます!」
鷹井先輩の疑問をサムズアップで返した。
善は急げ。
夏休み前にすべてを終わらせてやる。
――明日は、決戦だ。
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