第5話『二重人格……じゃないよな』
僕は驚いていた────生徒会長の変わりように。
「はい、妹さん────綾芽さんが相談に来られて」
「先生たちからも信頼されてる会長さんなら、力になってくれるかなって。先生たちには話しづらい内容だったので……あ、いじめとかでは無いですよ!」
生徒会室を三人で出たタイミングで偶然通りがかった先生に見つかり、事情聴取を受けている現状。おそらく、生徒会室を私物化していたんじゃないかと疑われているんだろう────……いや、先程の綾芽の言葉を思い返せば、考えづらいか。
先生たちからも信頼されている────ならこれは、ただの使用報告。
見つけてしまった以上聞いておかないといけない、だから、疑ってないし、正当な理由があるんだろうけど、こうして事情聴取をしないといけない。
ただの作業。
それほど信頼されている生徒会長。きっと、先程までの姿しか知らない僕だったら、その信頼を疑っていただろうが……今は違う。
「生徒会長として相談を受けた以上、私の持つ権限を使い、外部に漏れないようにするのは、私物化に該当しないと思います───……が、しかし、誤解を招くような行動だったことは認めます。先に、顧問の長谷川先生に伝えておくべきでした。ごめんなさい」
凛とした────頼りがいのある、生徒会長らしい、生徒会長の姿がそこにはあった。
結果、僕も謝り、始めから決まっていた結末として、僕たちは解放され、先生はその場を去って行った。
「会って間もないのにこんなこと言うのは間違ってるんでしょうけど、正直見直しました。ちゃんと、生徒会長らしいところあるんですね」
「こ、光栄です!」
「光栄って……」
「会長さん、どっちかっていうとあっちが素だからね。お兄ちゃんがよく見ていたはずの生徒会長さん」
「ああ……確かに、さっきの姿とか、話し方は、見覚えも聞き覚えもある気がしたよ」
「気が、じゃなくてあるんだよ」
呆れ顔の綾芽と、「私が悪いんです」と、僕をフォローしてくれる生徒会長と共に下駄箱に向かう。
「今日はありがとうございました」
僕は生徒会長に頭を下げると、慌て始める生徒会長。
「わ、私は何も……」
「話を聞いてくれて、協力をしてくれるって言ってくれただけで、僕は気持ちが楽になりましたよ。だから、ありがとうございます」
「……勿体ない言葉です」
俯いて固まってしまった会長を、やれやれと綾芽が引っ張って連れ出して、それで、今日は解散。
「二重人格……じゃないよな。てか、なんで綾芽は生徒会長とあんなに仲が良いってか、親しげなんだ?」
悩んでも解決する疑問じゃない。
家に帰ったら直接本人に聞いてみよう。
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