第12話 次の目的地
一行は2日ほどかけてスリジク王国の王都であるスーリに到着した。
メリッサ・リゲル・ウバシュはスーリの
エルマー・グレッグ・ペルセウスは
ヘランは、南大陸にあるほぼ全ての国が加入している短期仕事などの紹介所のようなところだ。
街の困りごとや街道警備、国からの魔獣討伐など様々な仕事をここで受けることができる。また、魔石などの魔獣からの採集物や山や森にしか繁殖しない植物などの買取や販売も行っている。
エルマーがスーリのヘランに寄ったのは、魔石や魔獣から回収した素材などを売却し、ついでにグレッグとペルセウスの冒険者登録を行うためだった。登録料さえ払えば誰でも冒険者として活動できる。
「ええと、お名前はペルセウスさんですね。魔族ですか・・って、魔族なんですか!?」
受付した係の女がペルセウスを二度見した。
「へぇ。魔族って初めて見ました。見た目は人と変わらないんですね。それに背が高くてカッコいいし・・。」
「早くしろ。」
ペルセウスはおしゃべりし出した係員を睨むように見下ろすと係員は萎縮したように話すのをやめ、登録作業を行なった。
「お、お待たせしたした。初心者登録証となります。ヘランの依頼を5回達成すると新たに初級冒険者証が発行されます。それとクラフトを登録する場合は検定の申し込みが別途必要となります。ここでは上級までほとんどのクラフト検定を受けることができます。」
係員は若干震えながら事務的に説明するとペルセウスに初心者登録証を渡した。
「クラフトっていうのは専門性の高い特技や魔法を使えることを示すものです。クラフトが限定されている依頼もあるので、検定をとっておくと便利なのですが、まあ今の所急いで取ることもないかもしれません。」
付き添っていたエルマーが説明した。
グレッグも登録を終えると、エルマー達は
しばらく待たされた後、全部で12万ギリーを提示された。
「12万ギリー!?」
(確か上級冒険者の年収がそのくらいだと聞いたことがある。それをたった1日で稼いだのか・・)
グレッグが驚いている。
「アンデッド系の魔石は魔道具などへの利用もできるので割といい値段で買い取ってくれます。」
エルマーが言った。
「ああ、魔石を3年分ため込んだ甲斐がありました。」
エルマーはわざと大きな声を出した。
「僕たちが持ち込む魔石などは他の冒険者からすると破格なことが多いので、目立たないようにしないといけないんです。」
(あ、さっき俺が大きい声で驚いたせいか・・・また失敗だ。気をつけよう。)
グレッグはすみません、と小さい声でエルマーに謝った。
麻袋に入った金貨を受け取った後、エルマーは依頼受付所の方に行き、掲示板をチェックする。そこには大きな張り紙が掲示されていた。
『ヴァッセ領への立ち入り停止、付近の街道警戒すべし、アンデッドモンスターの襲撃』
ヴァッセ領はスリジク王国の最東端の地域で、スーリから3日ほど馬車で進む距離に位置する田舎街だ。
張り紙を見たエルマーが依頼受付に話を聞きに行った。
「ヴァッセ領について何か依頼は出していないのですか。」
「ヴァッセ領からもスリジクからも今のところ依頼は出ていないんだ。」
依頼受付所の男が答えた。
「そうなんですね。」
「ああ、あまり詳しいことはわからんが、ヴァッセ領の騎士団が対応しているらしい。役所からヴァッセ領へ移動禁止と避難指示が出てるんで、ヘランの方でも冒険者に警告してるんだよ。それに国からは別の優先依頼も出てるんでね。」
受付の男からはそれ以上詳しい話は聞けなかった。
ヘランを出ると、たまたまヴァッセ帰りだという冒険者達が大きな声で話していた。アンデッドがヴァッセ領の北の砦付近にたくさん現れ、領界門を守る兵士たちとの攻防が続いていたらしい。現れた魔獣は高ランクがほとんどで、徐々にその数が増えているようだった。
エルマー達は幌馬車に戻った。
エルマーは自室に入ると日記を取り出した。
『スリジク緩衝地帯に接する辺境の城付近でスタンピードが起こり街が壊滅』
(これのことだな。)
エルマーは日記に綴った前世の記憶を辿る。
このイベントの目的はヴァッセ領北の砦から、スリジク王国とバルキア帝国の緩衝地帯となっている森に入ったところにある古代遺跡だ。そこでは黒の書と覇者の剣、遠隔のピアスが手に入る。
(覇者の剣は今の段階では使えない代物だったが・・いや、待てよ。覇者の剣ってペルセウスなら装備できるかもしれない。それに遠隔のピアスがここでどういう使い方ができるかも楽しみだ。早くヘランに依頼出ないかな・・。)
ゲームではヴァッセ領は魔獣により街が侵略され街全体が魔獣の巣となり、スリジク王国兵達がヴァッセ領の調査に向かうための護衛の依頼がヘランに出されるという流れだった。
(依頼の前に確かヴァッセ領から避難してきた商人と話すことができたな。)
いろいろと思い出してから先ほどヘランで聞いた内容を日記に書き込む。
(今はまだ兵士たちが戦っているって言ってたな・・・。この後に壊滅するってことは、街の人たちは・・・)
エルマーはハッとする。
急いで日記を閉じると、ヴァッセ領にすぐに向かうことにした。
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