第25話 坂上


「君はもしかして何かカン違いしてないか?」


「え?」



 もう林田さんが何を言ってほしいのか分からなかった。



「ボクはね、君のためを思っておこってあげてるんだよ?君はね、そんなことじゃ将来やっていけないよ?そうだろ?」


「はい」


「じゃあ、感謝しなきゃ」


「はい、ありがとうございます」



 林田さんはちょっと満足げにうなずいた。


 こっちだ!こっちの方向だ!



「最近の親はだらしないからね。こうやっておこってあげられる大人は少ないんだよ。めんどうなことになるのがいやなんだよ。でも、本当の大人は子供をみちびいてやらないと。それが大人の責任だ。そう思うだろ?」


「はい、そう思います」


「うそつけ」


「え?」


「言われて反応してるだけだろ?自分からあやまりに来なかった時点でお前はダメなんだよ。お前みたいにずるい子供はてってい的にしつけてやらないとな。ほら、秘密基地に入れ」



 改造してやる、と言って、林田さんはおれを穴に引きずりこもうとした。


 さっきは穴に入りたいと思ったけど、今は全然入りたくなかった。


 怖い。はっきりとそう思った。



「あの」



 その時、横から声が聞こえた。


 そこにいたのは、友達の坂上だった。

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