第9話 こっちを向いた


真っ黒な大人は、前におれと友達をどなってきたおじさんだった。少し笑っていた。


おれはその時、声を出したり、息の音が聞こえたり、動いた音が聞こえたら殺されると思っていたから、少しも動かなかった。


よく映画とかでこういう時にさけんじゃったりするやつはバカだと思っていたから、そうしていた。


アセが出て、カが寄って来ても、少しも動かなかった。


真っ黒な大人があのおじさんだと分かった時も、おどろいたけど声を出したりしなかった。


はやく、どっかに行って欲しかった。


あのおじさんは、何者なんだ?と思った。


最初にどなられた時は、なんとなくトトロの森の管理人さんだと思っていた。

えらそうだし。


だけど、トトロの森に管理人さんなんかいるのか?と思った。


聞いたことがなかった。


なんかトトロの森って、地元の自然を残したい人たちががんばって残す活動をしているものだった気がする。


それに、管理人なんているのか?


この真っ黒なおじさんは、何者なんだ?


その時だった。


ブゥ~ンビロビロビロビロ!と大きな音が手に持ったビニールぶくろからしてしまった。


中で、多分メスカブトが飛んだんだと思う。クワガタはあまり飛ばないからそう思った。


おじさんは、こっちを向いた。


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