第8話 真っ黒な大人


首つり大人は苦しそうにもがいていた。まるで死にたくないみたいだった。


でも、もう一人の大人は力いっぱい下に引いていた。それだけじゃなく、ヤナギの枝がおれないように、上を向いて丁度良い力にしているように見えた。


首つり大人はもがかなくなった。手がだらんとして、全体の力がぬけた。


もう一人の大人が手を放した。


首つり大人はビュンッ!ブンッブンッブンッ!て感じではねて、たてにゆれた。


足はもうおりたたまれていなかった。力がぬけて、クツ下の足がぬかるんだ地面にふれていた。ネクタイが左右にゆれていた。たぶんクツ下もネクタイも赤かったと思う。まだうす暗かったから、たしかじゃないけど、目立った。


もう一人の大人は全身真っ黒の服を着ていておなかが出ていた。そいつは首つり大人のリュックサックをあさっていた。リュックサックの上におかれていたのは多分い書だと思うんだけど、それはぬかるんだ地面に落とされていた。


真っ黒な大人は、スマホでリュックサックの中身を照らした。


その時、真っ黒な大人の顔が見えた。

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