第10話 #急募 この状況の抜け出し方
俺が色葉のパンツを持っている事がバレてから数秒後、無抵抗のまま色葉に耳を捕まれた。
「イダだだだだ!」
「痛みなんて知らないわ! こっち来なさい!」
そうして、色葉に耳を引っ張られながら空き教室へと向かうのであった。
変に力が加わった状態のまま、空き教室へ向かっていく。
階段を上り、そして……
『カチカチッ』
色葉がスイッチを付け、空き教室の明かりを付ける。
色葉は指を離し、俺の耳を解放した後——
「そこ。座りなさい」
色葉は机を指差す。
「は、はい……」
そう、気の抜けた返事をしてから、色葉が指定した席に座った。
俺が席に座ると、続いて色葉も向かい合った机に座り、ポケットの中からパンツを取り出した。
「これが貴方のリュックから出てきました。これは、どういう事ですか?」
「昨日、家に帰ったらリュックの中に入ってた。だから返そうかと思いまして……」
色葉は大きくため息を吐き、ジロリとこちらを睨んで来た。
「そんなあからさまな嘘、バレないとでも思ったのかしら」
「いや、嘘じゃないって!」
「証拠は?」
「……無いけど」
「なら貴方じゃない」
「いや、それは違う!」
「ならなんで貴方のリュックの中に私のパンツが入ってたのかしら」
「だから、入ってただけなんだって!」
「まだその嘘引きずるの? もう飽きたわ」
「いや、本当なんだよ!」
「分かった。もし仮に昼顔のリュックに誰かが入れたとする。なら、誰がパンツを入れたのかしら。昼顔を憎んでいる人。貶めたい人。かしら」
「身に覚えが無いけどさ」
「でしょうね。だから私のパンツを盗んだのは昼顔、貴方しか居ないのよ」
そんな色葉に嫌気が刺した俺は『バンッ』と、机を叩く。
「だからなんだよ!!」
そう、狼煙を上げて
「俺は違うって言ってるだろ!」
と、強めの口調で反論する。
「色葉は俺のリュックの中にパンツが入ってて変だと感じてる、怒っている。だけど」
ここで1つ大きく息を吸い、
「俺だってわっかんねぇよ! なんで色葉のパンツが入ってるんだよ!」
大きな声でそう言い、数秒経ってからまたもう一言。
「学校の支度をしていたらリュックの中に入ってて、返そうと思ってジップロックに入れて持って来たらこれよ! パンツを盗むなんで何処の変態だよ! なんで耳を引っ張られなきゃ行けねぇんだよ、色葉はいつまで自分が偉いと思ってるんだよ!」
「違う、それは」
「じゃあなんだよ! 大人の余裕って奴か? イキってんじゃねーよ!」
ここまで散々思っている事をぶちまけた訳だが、ここで俺も俺とで言っている事が可笑しい事に気づく。
「はっ。——……ん、少し言い過ぎたかもしれない」
そうやって反省をする俺の姿を見て、色葉が1つ
「そこ、1つ訂正良いかしら」
と、右手を上げながら言う。さっきまで怒ってた人に向けてそう言えるのは色葉もかなりの変人だと思う。
そんな様子の色葉に苦笑を1つ挟み——
「……どうぞ」
「『少し』じゃなくて、『かなり』ね。そこら辺の語彙力、もう少し頑張ったら?」
「そこら辺は『もう少し』じゃなくて『かなり』頑張らないとな」
その様子を見た色葉はたちまち笑い出した。
「あはっ、はははっ」
そんな色葉の笑いに釣られて、いつの間にか俺は笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます