第21話
玄関の扉を開ける。リビングに続く廊下に一人倒れている。カジュアルな服装を身に着けていた。顔を見るが見知らぬ男だった。後ろの首の辺りにあざがあり、呼吸をしている。鑑定をしてみた。
『男、20歳、犯罪歴なし』
外で戦った見張り役と異なり、実行犯と思われる青年は幼く見えた。忍び足でリビングに入っていく。部屋の隅に人影があり、そっと近づいてみる。呼吸を止めるように、息遣いでさえ聞こえなかった。
『隠密7を取得しました』
機械音がしたが今は無視する。遠巻きに鑑定を使用する。ほぼ聞こえない程度の声でも発動した。
『女、20歳、犯罪歴なし』
女だった。すっと前に現れると、美雨さんと目があった。
「あ、あ、怖かった」
美雨さんは涙目で俺に抱きついてきた。いつもだったら邪なことを思い浮かべるだろうが、俺は彼女の肩を擦った。
「ここで待っていられる?」
「はい」
彼女は小声で言う。美雨さんは涙を拭う。
「お兄ちゃんが戦ってるんです」
「尚樹君が?」
「はい」
廊下に倒れていた男が相手か。
「警察には連絡した?」
「します」
気が動転して警察まで意識が回らなかったのだろう。俺は長谷部尚樹を探すことにした。リビングを出ようとしたとき、美雨さんの声がした。
「たぶん、裏にいます」
美雨さんと顔を合わせる。彼女は立ち上がると、窓の外を指さした。
「あの刀が」
「刀ってこの前、尚樹が見せてくれたやつ?」
「はい、きっとそこにいます」
「そこって」
刀は裏にある倉庫に眠っていたとか言っていたな。カーテンの奥に誰かいる気がし、自分のスキルを思い出した。小声で索敵と呟く。
美雨さん、廊下の男。
2階に1人いた。
車に押し込んでおいた見張り役は範囲外だった。
カーテンの奥に3人いるが、1人は長谷部尚樹であってくれ。俺はカーテンを少し開き、隙間から外の様子を覗いた。
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